ローズガーデン

第一章

国境突破

　今日も今日とて、ポクポクと馬を駆けさせる。

　私はまだリングパーク王国内に居ます。
　王都からこちら……南の国境までは馬車を飛ばしても一月はかかりますからね。
　
　北の国境そのものまでも二週間はかかるのですが……、北の隣国軍事国家ガルシアとの堺には雪山の山脈が連なり、その周辺には鬱蒼とした森があるのです。

　隣国へと続く峠の道は一応ありますが、獣が出ますから、護衛が複数人は必須な道のりです。
　そんな中をあの騎士崩れの問題児が一人で行ける訳がありません。
　森の入り口付近に私を放置して帰るだけなら一週間もあれば往復出来るでしょうね。

　ちなみに南の隣国の隣国は海に面した貿易大国でもあり、漁業も盛ん。農業にも適した土地を持つ豊かな国。
　唯一鉱山の類が殆ど無くて、金属類は輸入品が大半を占めるというお国柄ですが、北の軍事国家と違って平和な国です。

　因みに隣国は鉱山大国で逆に農業資源に乏しく食料自給率が低い。
　幸い隣国が自給率200％越えの大国かつ金属資源に乏しいため持ちつ持たれつの関係が続いています。

　私が目指すのは隣国アルヘウムではなく更にそのお隣、シルフェスタです。が、まだ今はアルヘウムにすら到達していません。

　国境を越えるまでは宿は我慢。
　馬に無理をさせないレベルで先を急いでいます。
　飼い葉と水の補給が必要な時以外は街にも寄らずひた走り。

　「見えた！　国境の街カイサル！」

　北の軍事国家との国境線と異なり、貿易を行っているアルヘウムとの国境にはこうして街があり、街出入りする際は他の街より審査が厳重だ。

　その代わり町中では国境を気にする事なく商売が出来る。

　街の門の前に出来た長蛇の列の最後尾に馬車をつけ、一息吐いた。

　この街を出さえすれば、もう隣国だ。
　ここからは少しペースを落とし、行商をしながらの旅になる。

　ここまで三週間。急いだ甲斐あって一週間も節約出来た。

　あれが戻って一週間、捜索の手を伸ばし各町に寄って情報収集しながらだと、この街に到達するのにどれだけかかるだろう？

　こちら側の門の審査さえ通り抜ける事が出来れば。

　――果たして。

　「行商人か。荷は？　ふむ、茶葉や菓子か、特に問題無さそうだな。よし、通れ」

　よしっ、次はあっちの門だけど、こっちの門と違ってそんなに心配はしてない。
　入国審査さえ通れば問題はないはず。

　「ふむ、健康状態も問題無し、荷から輸入禁止のブツは無し、犯罪歴なし。よし、通れ」

　「ありがとうございます、お疲れ様です」
　「良い旅を」

　よおぉっし！
　リングパーク王国脱出成功！