179 / 192
勇者Side - Spin off - ④
δ-1 断罪の後で
しおりを挟む
何で。何で何で何で!
どうして私ばかりが罪人の様に裁かれて、こんな風に軟禁なんてされてるの!?
……分からない。――分かりたくない。
だけど、そんな甘えた事を言っている暇は無かった。
数日の後には馬車に乗せられて、まずはダクーラへと連れて行かれ、そこでこの世界の事やこの世界の常識の勉強をさせられる。
聖女召喚がこの世界で禁忌扱いされる理由とか。
魔族の事とか、ヘルナイト以外の国の事とか。
……ヘルナイト王国で聞いていたのとは随分と違う内容も多かったけど、お陰でいつだったか船に乗って隣国へ渡ろうとした時に入国拒否された理由は理解できた。
魔族が敵でもなんでもないこと。……中には魔族の国と仲の悪い国もあるけど、それだって別の魔族の国とは仲良くしてたりする事。
……ヘルナイト王国で得てきた知識がどれだけ片寄ったものかが知れた。ヘルナイト王国が世界から嫌われている事実も同時に知り、私やあの子は基本的には同情されていた事も知った。
――ある程度の勉強を済ませたら、今度はダンジョン村で〝冒険者〟としての訓練が始まる。
勇者パーティー以外と初めて組んで入ったダンジョンで、私は片手の指の数に満たないの階数でギブアップする事になった。これまで「聖女だから」を理由にやらされなかった事までやらされながら歩いた悪路。
移動の大半を馬車に頼っていた私はすぐにバテた。
「聖女とはいえ、自衛くらいは出来る様になって下さい」
とばかりに武器をいくつか渡され、好きな武器を選べと言われて。取り敢えず剣を選んだ私にさっそく稽古が始まる。
切り傷やあざが見る間に増えていく。
何で! 何で誰も守ってくれないの!
……けど、真っ当に冒険者をやっていると、だんだん自分達が何をしてきたのかが分かってくる。
花形の依頼ばかり独占し、派手に活躍して名を上げた勇者パーティーが、冒険者に嫌われない訳がない。
無論、並みの冒険者では相手にならないバケモノも中には居たけど、大半はある程度ベテランの冒険者が頑張れば何とかなるレベルの依頼を根こそぎ片付けてきた。
一方で、あの娘の居た銀の剣とやらは常時依頼をメインにしつつ常識的な範囲での活動をしていた。
だから反感を抱かれなかった。
その采配を教えたのはあのイマルという男なんだろうけど、……私はそういう情報から遠ざけられていたから。だから私は悪くない、……そう思うのに。
ソーセージをかじりながら、私の見張り役の男が 呆れた目を向けてくる。
「……比べるな、とは言われてるけど。お嬢はもっと積極的に自分の足りないモノを補おうと必死だったのにな」
ぽつりとこぼした言葉が耳に障る。……イライラする。
――今日はもう疲れたし寝よう。
私はコテージに戻り、ベッドに入る。
「ここも、俺らが使ってたのよりグレードかなり高いのにな。……分かってねーのな、あの姉さん」
肩を竦めた男の言葉は聞こえる事なく夜闇に消えていった。
どうして私ばかりが罪人の様に裁かれて、こんな風に軟禁なんてされてるの!?
……分からない。――分かりたくない。
だけど、そんな甘えた事を言っている暇は無かった。
数日の後には馬車に乗せられて、まずはダクーラへと連れて行かれ、そこでこの世界の事やこの世界の常識の勉強をさせられる。
聖女召喚がこの世界で禁忌扱いされる理由とか。
魔族の事とか、ヘルナイト以外の国の事とか。
……ヘルナイト王国で聞いていたのとは随分と違う内容も多かったけど、お陰でいつだったか船に乗って隣国へ渡ろうとした時に入国拒否された理由は理解できた。
魔族が敵でもなんでもないこと。……中には魔族の国と仲の悪い国もあるけど、それだって別の魔族の国とは仲良くしてたりする事。
……ヘルナイト王国で得てきた知識がどれだけ片寄ったものかが知れた。ヘルナイト王国が世界から嫌われている事実も同時に知り、私やあの子は基本的には同情されていた事も知った。
――ある程度の勉強を済ませたら、今度はダンジョン村で〝冒険者〟としての訓練が始まる。
勇者パーティー以外と初めて組んで入ったダンジョンで、私は片手の指の数に満たないの階数でギブアップする事になった。これまで「聖女だから」を理由にやらされなかった事までやらされながら歩いた悪路。
移動の大半を馬車に頼っていた私はすぐにバテた。
「聖女とはいえ、自衛くらいは出来る様になって下さい」
とばかりに武器をいくつか渡され、好きな武器を選べと言われて。取り敢えず剣を選んだ私にさっそく稽古が始まる。
切り傷やあざが見る間に増えていく。
何で! 何で誰も守ってくれないの!
……けど、真っ当に冒険者をやっていると、だんだん自分達が何をしてきたのかが分かってくる。
花形の依頼ばかり独占し、派手に活躍して名を上げた勇者パーティーが、冒険者に嫌われない訳がない。
無論、並みの冒険者では相手にならないバケモノも中には居たけど、大半はある程度ベテランの冒険者が頑張れば何とかなるレベルの依頼を根こそぎ片付けてきた。
一方で、あの娘の居た銀の剣とやらは常時依頼をメインにしつつ常識的な範囲での活動をしていた。
だから反感を抱かれなかった。
その采配を教えたのはあのイマルという男なんだろうけど、……私はそういう情報から遠ざけられていたから。だから私は悪くない、……そう思うのに。
ソーセージをかじりながら、私の見張り役の男が 呆れた目を向けてくる。
「……比べるな、とは言われてるけど。お嬢はもっと積極的に自分の足りないモノを補おうと必死だったのにな」
ぽつりとこぼした言葉が耳に障る。……イライラする。
――今日はもう疲れたし寝よう。
私はコテージに戻り、ベッドに入る。
「ここも、俺らが使ってたのよりグレードかなり高いのにな。……分かってねーのな、あの姉さん」
肩を竦めた男の言葉は聞こえる事なく夜闇に消えていった。
0
お気に入りに追加
3,164
あなたにおすすめの小説
ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。
彩世幻夜
ファンタジー
「働きもせずぐうたら三昧なんてつまんないわ!」
お嬢様はご不満の様です。
海に面した豊かな国。その港から船で一泊二日の距離にある少々大きな離島を領地に持つとある伯爵家。
名前こそ辺境伯だが、両親も現当主の祖父母夫妻も王都から戻って来ない。
使用人と領民しか居ない田舎の島ですくすく育った精霊姫に、『玉の輿』と羨まれる様な縁談が持ち込まれるが……。
王道中の王道の俺様王子様と地元民のイケメンと。そして隠された王子と。
乙女ゲームのヒロインとして生まれながら、その役を拒否するお嬢様が選ぶのは果たして誰だ?
※5/4完結しました。
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる