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ざまぁのその後
16-4 王命
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あの後。早速会議にかけた私の案は思ったよりもあっさり通ったそうで。
どちらにいくかはまだ入札の結果待ちとはいえ、これは私の初めての聖女のお仕事がほぼ決定した様なものだ。
その為、その前に婚姻を済ませておくべきという意見も出て、正式に式の日取りが決定したのはその会議からそう日も経たない頃の事だった。
そして。
「式の日取りが正式に決定したなら、流石にもうこれ以上先延ばしには出来まい。イマル、これは王として命じる。彼女を正式に同族へ迎え入れろ」
と、イマルに王命が下された。
……まさか、ちょっとお仕事改革するだけのつもりがここまで一気に話が大きくなってコロコロとどんどん進んじゃうとか思ってなくて、私、実はかなり焦ってます。内心冷や汗びっしょりです。
式は二月後。――今が雨季真っ最中だから、一番寒い季節の式になる。
でもまあ、その後一月は休暇を貰えるらしい。……ハイ、文字通りの蜜月デスヨ! ……ワーカーホリック気味なイマルが何処までそのつもりでいるかは知らないけど。
そして新年明けたらいよいよ私の正式な聖女デビューの日が待ってる。
「それで……その……、取り敢えず私はまず何をすれば宜しいので?」
イマルに王命が下された以上、私もその覚悟をしなくちゃいけない。
まあ、もう世界を越えてるんだから人間やめるくらい今さらよねー、とも思うんだけどさ。地球じゃ性別を変える手術はあっても人間という種族をやめる方法なんて無かったし、そんな発想も必要も無くて。
せいぜいオンラインゲームのキャラで疑似体験するのが関の山、で。
自分という存在以外の全てを地球に置いてこの世界に来た私にとって、私というアイデンティティーを形成するそれを塗り替えるのは、自分で思っていたより怖いことだったみたいで……。
格好悪く声が震えそうになった。
「……そう難しいことはない。何度かに分けて魔法薬を飲めばいい」
「魔法薬?」
「――ああ。……既に一度、お前はそれを飲んでいる」
「は? い、いつの間に……!?」
「覚えているか? ヘルナイト王国を出る前の森でお前、風邪引いて熱出しただろう」
「ええ、まあ……。あの時はご迷惑をおかけしまして……。後でケントに聞きました。風邪薬を調達して来てくれたのがイマルだって……」
「ああ、あの時飲ませたのがそれだ」
「ええ!? 風邪薬じゃなかったの? どうして……。っていうかそれじゃ私は……!」
「……一度飲んだ位じゃ効果は出ないしあれはかなり埋めて飲ませたしな。……吸血鬼は人間より丈夫だ。その種族の力を分け与える魔法薬だ。風邪くらいすぐ治る」
熱があった間のことはうろ覚えだけど、その後のあの朝の光景は覚えている。
……本番済ませた今でこそあの衝撃も緩和されたけど、あの瞬間は本当にびっくりしたんだもの、忘れようがない。
「あれは薄めたものだが、原液を飲めば流石に何もなく――とはいかないはずだ」
言われて、初めて求愛された直後のイマルを思い出す。
……やはり亜種とはいえ異種族同士の婚姻は簡単にはいかないらしいです。
どちらにいくかはまだ入札の結果待ちとはいえ、これは私の初めての聖女のお仕事がほぼ決定した様なものだ。
その為、その前に婚姻を済ませておくべきという意見も出て、正式に式の日取りが決定したのはその会議からそう日も経たない頃の事だった。
そして。
「式の日取りが正式に決定したなら、流石にもうこれ以上先延ばしには出来まい。イマル、これは王として命じる。彼女を正式に同族へ迎え入れろ」
と、イマルに王命が下された。
……まさか、ちょっとお仕事改革するだけのつもりがここまで一気に話が大きくなってコロコロとどんどん進んじゃうとか思ってなくて、私、実はかなり焦ってます。内心冷や汗びっしょりです。
式は二月後。――今が雨季真っ最中だから、一番寒い季節の式になる。
でもまあ、その後一月は休暇を貰えるらしい。……ハイ、文字通りの蜜月デスヨ! ……ワーカーホリック気味なイマルが何処までそのつもりでいるかは知らないけど。
そして新年明けたらいよいよ私の正式な聖女デビューの日が待ってる。
「それで……その……、取り敢えず私はまず何をすれば宜しいので?」
イマルに王命が下された以上、私もその覚悟をしなくちゃいけない。
まあ、もう世界を越えてるんだから人間やめるくらい今さらよねー、とも思うんだけどさ。地球じゃ性別を変える手術はあっても人間という種族をやめる方法なんて無かったし、そんな発想も必要も無くて。
せいぜいオンラインゲームのキャラで疑似体験するのが関の山、で。
自分という存在以外の全てを地球に置いてこの世界に来た私にとって、私というアイデンティティーを形成するそれを塗り替えるのは、自分で思っていたより怖いことだったみたいで……。
格好悪く声が震えそうになった。
「……そう難しいことはない。何度かに分けて魔法薬を飲めばいい」
「魔法薬?」
「――ああ。……既に一度、お前はそれを飲んでいる」
「は? い、いつの間に……!?」
「覚えているか? ヘルナイト王国を出る前の森でお前、風邪引いて熱出しただろう」
「ええ、まあ……。あの時はご迷惑をおかけしまして……。後でケントに聞きました。風邪薬を調達して来てくれたのがイマルだって……」
「ああ、あの時飲ませたのがそれだ」
「ええ!? 風邪薬じゃなかったの? どうして……。っていうかそれじゃ私は……!」
「……一度飲んだ位じゃ効果は出ないしあれはかなり埋めて飲ませたしな。……吸血鬼は人間より丈夫だ。その種族の力を分け与える魔法薬だ。風邪くらいすぐ治る」
熱があった間のことはうろ覚えだけど、その後のあの朝の光景は覚えている。
……本番済ませた今でこそあの衝撃も緩和されたけど、あの瞬間は本当にびっくりしたんだもの、忘れようがない。
「あれは薄めたものだが、原液を飲めば流石に何もなく――とはいかないはずだ」
言われて、初めて求愛された直後のイマルを思い出す。
……やはり亜種とはいえ異種族同士の婚姻は簡単にはいかないらしいです。
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