上 下
150 / 192
ざまぁの対価

15-6 一時休止

しおりを挟む
    「え、残る……?」
    夜会の翌日。
    ……朝、起きるに起きれなかった私はランチを共にしながらケントの台詞に驚いた。
    マリーが残るのは分かっていた。元伯爵から爵位をからね。これから立て直さなきゃいけない国を抱えて忙しくなるはずの彼女は生き生きとしていたから、ちょっと寂しいけど一生会えないわけじゃないからね。快く送り出すつもりだったんだけど……。
   「その……、な、情けない事に逆プロポーズを受けまして……」
    真っ赤になって俯くケントがぼそぼそと理由を口にした。
    あー、そっか。マリーが押しきったか。最初からもう尻に敷かれちゃってるのね、ケントは……。
    「おほほほほ、どちらの式が先になるかしらね?」
    俯くケントとは対照的に高笑いをするマリーは心なしか色々と艶々してる。そう、イマルも……。
    これは……まさか……
    「夕べ、夜会の後でマリーが部屋に来て、酒なんかのませるから……!    夜会の間緊張しっぱなしで、部屋に戻って疲れて油断してたから酔っぱらって……。うう、最低です……。責任とらないと……」
    いや、それは確実にマリーが確信犯なだけでしょう。夜に男の部屋を訪ねてお酒飲ませて酔っぱらわせて……って。合意なしに襲われても、女の私でも流石に自業自得としか思えないもの。あーあ、ケントってば真面目だからなぁ……。
    「まさかマリーも、とはね……」
    「うふふ、だってあなた達を見てたら私も……ってつい思ってしまったんですもの」
    「なっ、だからこの間のは誤解だって……!」
    「あら、私も……とかこの間は……って……。ではもしかしなくともあなた達も昨夜は……」
    「……あ」
     し、しまった。やらかした。思いっきり自爆じゃん、私ってば……!
    「だが、本格的に奴らの後始末が済むまではお互い行き来は頻繁にあるだろうし、パーティーは一時休止程度で良いだろう」
    「……ですわね。一度離脱したイマルもこうして一時復帰してますしね。完全に解散してしまうのはやはり嫌ですもの。名前だけでも残しておきたいですわ」
   「ですね。伯爵なのはあくまでマリーで、俺は婿養子扱いになるそうで、直接政治に関わる事は当分なくて……。どちらかというと軍の方に関わる事になりそうですし、何かあったらいつでも声をかけて下さい」
   「ああ。……さっき一応黙らせては来たが、まだまだ聖女の件で余計な事を企む連中は沸くだろうから気を付けろよ」
    そう。朝起きれなかったのはあくまで私だけで、イマルは朝からどこかで暴れて来たらしいのだ。……詳しい事を教えてくれる気はなさそうなんだけど。
    ……そして。その翌日。私とイマルはマリーとケントをヘルナイト王国に残し、アルソレスに帰国した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ
ファンタジー
 オラルト伯爵家に生まれたレイは、水色の髪と瞳という非凡な容姿をしていた。あまりに両親に似ていないため両親は彼女を幼い頃から不気味だと虐待しつづける。  レイは考える事をやめた。辛いだけだから、苦しいだけだから。心を閉ざしてしまった。    十数年後。法官として勤めるエメリック公爵によって伯爵の罪は暴かれた。そして公爵はレイの並外れた才能を見抜き、言うのだった。 「私の娘になってください。」 と。  養女として迎えられたレイは家族のあたたかさを知り、貴族の世界で成長していく。 前題 公爵家の養子になりました~最強の氷魔法まで授かっていたようです~

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

処理中です...