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お約束が果たされる時

12-10 男は髪が命(笑)

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    「蒼夢」
    ぷにょん、とみのむしの頭の上に乗ったスライムの蒼夢。
    「――溶かせ」
    そして、一言命じると――
    「なっ、痛……何を!」
     スライムの溶解液がとろとろとジェルのように伯爵の頭髪に絡みじわじわと溶かしていく。一部頭皮にもダメージがいってるらしくてこれが地味に痛そうだけど、でもそれよりも事態を把握した後の伯爵の絶望の表情は……凄まじかった。
    「か、髪が……!」
    「お前にとって髪と爵位ならどちらが大事だ?    今爵位を譲るなら髪を溶かすのをすぐに止めてやろう。だがあくまで爵位を大事に守るなら、頭皮ごと溶かして二度と髪の生えない頭にしてやる」 
    「うわ……イマル……えげつない事言いながらその笑顔……。イマルらしいけど怖……!」
    ケントは自分の頭を守るように両手で抱えながら頬をひきつらせる。
    「や、止めろ!    分かった、爵位は譲る、譲るから今すぐ止めてくれ!」
    ……そうか。伯爵にとっては命<爵位<髪なのか……。それってどうなの……?    いや、そんな奴だからマリーにダメンズあてがったりしたのか。
    「では、この書類に血判を。それで一先ず私が仮当主になれますわ。騒動が一段落したら正式に届け出て新たにバルト伯爵を立ち上げますわ」
    「じゃあ次は謁見の間ですか。こいつらは……」
    「ここはこのまま、蒼夢に見張らせよう。……逃げようとしたら……速攻で蒼夢にお前らの頭をスキンヘッドにしてやるからな」
    目の前で伯爵の無様な姿を見ていたおっさん達はこぞってブンブンと頭を縦に振った。
    私達は勇者パーティーのみ連れてマリーの先導に従いまた城の中を駆ける。
    先程の議会場の扉より大きくより豪奢な扉を、これもまたイマルが蹴り砕いた。
    そこは。
    私が――私達がこの世界で最初に目にした光景そのままに。ただそこに集う者達の表情だけがあの時とは逆の感情をあらわにこちらを見ていた。
    だけど……。
   「ねぇ、マリー。あの正面の椅子が玉座で、王様が居るはずの席だよね?    ……今は空っぽだけど。あの時一番目立つ場所に居た人の顔はほんの一瞬の事とはいえ流石に忘れようがなかったんだけど。……見る限りこの中には居ない……よね?」
    「ええ、居ませんわね。宰相と元帥の姿も見えません。ここに居るのは魔術師や神官と……各職の長官ですわね」
    「神官に魔術師……って事は――」
    「ええ。王や宰相が決めた異世界召喚の為の禁忌の術を実際に使って貴女方を召喚した実行犯は彼らですわ」
    「……なら。黒幕は黒幕でまた別に〆るけど、あの人達にはここに居る皆言いたい事があるんだもんね。――だから。こいつらは私の獲物でいいよね?」
    さあ、ざまぁ第二弾といきましょうかね?
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