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ざまぁの前哨戦

11-7 対価は

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    「――ヒカル殿、でしたかな。いかが致しました?」
    「はい、私に発言のお許しを下さいませんか?」
    私を指した議長はその是非を問うように上を見上げ、宰相――果ては王を見上げた。
    「……無論だ。そなたこそがこの議題における一番の当事者なのだからな。言いたい事の一つや二つあって当然であろう。しかし、我が国の国益を損ねるような発言をすれば我らはそなたを拘束し罰せねばならん。それを踏まえて発言をするが良い」
    「はい。――ありがとうございます」
    王の許可に深く頭を下げ、マナー通りに礼を述べ。
    ちら、とマリーに援護射撃を要請しつつ、会場をぐるりと見渡し、口を開いた。
     「先程申し上げました通り、私はヘルナイト王国に召喚されてきた異世界人です。私が生まれた世界で、特に不自由もなく暮らしていたところを、突然予告も意思確認もなく拐われる様にしてこの世界に呼び出されたのです」
    先日も先程もさらりと流していた「召喚された」事実を詳しく述べ。
    「ですが、私と共にもう一人、私と同じ年頃の女の子が一緒に召喚されました」
    そのもう一人と言うのが今ヘルナイト王国で勇者パーティーと言われる一行と同行している聖女だとも。
    「この世界は、私が元居た世界とは文明レベルも常識も違います。……不思議な事に言語について不自由することはありませんでしたが、当然言葉も文字も私が元居た世界とは違う。何もかも違う、何も分からない世界に一人放り出された私を、あの人達はもう忘れ去っているかもしれない」
    あの日。たまたま声をかけたケントが良い人だったから良かったようなものの。ケントに出会うまでのあの、今から思えば短い、けれどあの最中の心細い時間に感じたあの感覚は――もう二度と味わいたくない。
    そんな思いをさせた連中に、思い知らせてやりたいと思うのは当然ではないだろうか? 
    「――私は。あの後でイマル〝様〟の好意で鑑定を受けさせて貰い、私もまた聖女であり、賢者の職能を持つことを知り、今日まで賢者の能力を活かして冒険者として食べてきました。……この願いが、国益という観点から見れば個人的な我が儘になりかねないことも承知で、だからこそ私自身を対価としても、蚊帳の外に放り出さないで欲しいのです」
    私は必死に訴える。
    ひたすら冷静に、論理的になれと自分に言い聞かせないと、必死になりすぎて感情的に訴えかけるばかりになっては良くないと自制しながら言葉を紡ぐのはとても大変で苦しかった。
    ……正直マリーの援護射撃がなければいつ暴走しててもおかしくなかったと思ってる。
    「――まだ、その件に関しては我が国での草案作りにとどまる案件だ。正式には外交会議で決まる事故な。そちら、その会議への同行を許すから、そこで改めてその願いを各国代表に訴えかけると良い。……その件で我らが求める対価は一つ」
    王が、愉快そうに笑みを浮かべ。
    予想通りの条件を提示した。
    「イマル候と婚姻し、我が国に仕えよ」
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