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魔族の国
10-11 胸焼けする程の
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……騒がしかった王が強制排除され、再びイマルと二人きりのシチュエーションに戻る。
王の前で色々言っちゃった後だからねー、……うん。確実にランチ前より気まずい。
「……行くぞ」
けど、イマルは淡々と次の目的地へ向かって歩き出す。
連れてこられたのは劇場。
テント張りのサーカス団みたいのじゃなく、劇団所有の建物に大ホール・中ホール・小ホールと規模の違う舞台と部屋のあるタイプの劇場だ。
建物の前にはまるで映画のポスターみたく、今公演中の演目が貼り出されている。
今やっているのは大ホールで一番人気の恋愛もの、中ホールで剣舞が売りのアクションもの、小ホールでは子供向けの着ぐるみショー。
「……どちらが見たい?」
流石に子供向けの着ぐるみショーを見るイマルなんてシュールなもの、見たくないないから。……そしてさっきの今で恋愛ものを見るのも気まずい。
そんな消去法でアクション劇を選び、チケットを買ってホールに入る。
中はスクリーンを舞台に変えただけの映画館のようだった。
あくまで庶民的な劇場のようで、二階席や貴賓席の類いはない。いや、もしかして大ホールにはあるのかな?
中には売店で菓子やつまみを買って食べてるひとも居るけど、私達はたった今ご飯食べたばっかりだからね。ドリンクだけ買って指定の席に着く。
――劇は海賊と海軍の船長同士がまるで武田信玄と上杉謙信みたいなライバル関係にあって、まあアツい男同士のプライドをかけて戦い……といった内容だった。
うん。剣舞は見応えあったし、魔法のある世界の演出は素晴らしかったよ。けど話は……体育会系のニイさんや腐女子あるいは貴腐人様には需要ありそうだったけど……。私はそっちの気は無いのよ……。うう、豪華ランチを食べた後なのもあって胸焼けしそうだったよ。
そんな私を、そこそこ満足したらしいイマルが笑って見下ろす。
「何だ、お気に召さなかったか?」
「いや、面白くなかった訳じゃないけど……ちょっとあのノリには付き合いきれないと言うか……」
「そうか? あれは劇だから少し大袈裟だが、陛下の周りは皆あんなのばかりだぞ?」
……この国の上層部は皆体育会系の脳筋なのか。うへぁ。
「だからこそ貴族達の繊細な腹芸が理解できず下手に踊らされずに済むとも言う」
けど、イマルはそんな体育会系な陛下とも、腹芸が上手くないとやってけない貴族達ともやっていかなきゃならない。
「その……お疲れ様です」
「――本当に俺と契る気なら、お前も他人事じゃ無いはずだがな」
イマルは呆れた目を向けてくる。
「あー。でも、この世界に来てしまった時点で、私はどっちみち苦労する事は決まってたんですから。その苦労の方向性を選べるだけマシと思わなきゃやってけませんて」
「――ならば、俺ももう手加減はしてやらんからそのつもりで覚悟しておけ」
……あれ。何か私間違った?
ついそう思いたくなるくらい、イマルが満面の笑みを浮かべた。
さっきこの笑みを浮かべたイマルに強制退場させられた王様の姿が脳裏に浮かぶ。
町の向こうに見える城、今頃あそこで王様は仕事の山に埋もれているハズ……。
果たして私はどうなっちゃうんでしょう……?
王の前で色々言っちゃった後だからねー、……うん。確実にランチ前より気まずい。
「……行くぞ」
けど、イマルは淡々と次の目的地へ向かって歩き出す。
連れてこられたのは劇場。
テント張りのサーカス団みたいのじゃなく、劇団所有の建物に大ホール・中ホール・小ホールと規模の違う舞台と部屋のあるタイプの劇場だ。
建物の前にはまるで映画のポスターみたく、今公演中の演目が貼り出されている。
今やっているのは大ホールで一番人気の恋愛もの、中ホールで剣舞が売りのアクションもの、小ホールでは子供向けの着ぐるみショー。
「……どちらが見たい?」
流石に子供向けの着ぐるみショーを見るイマルなんてシュールなもの、見たくないないから。……そしてさっきの今で恋愛ものを見るのも気まずい。
そんな消去法でアクション劇を選び、チケットを買ってホールに入る。
中はスクリーンを舞台に変えただけの映画館のようだった。
あくまで庶民的な劇場のようで、二階席や貴賓席の類いはない。いや、もしかして大ホールにはあるのかな?
中には売店で菓子やつまみを買って食べてるひとも居るけど、私達はたった今ご飯食べたばっかりだからね。ドリンクだけ買って指定の席に着く。
――劇は海賊と海軍の船長同士がまるで武田信玄と上杉謙信みたいなライバル関係にあって、まあアツい男同士のプライドをかけて戦い……といった内容だった。
うん。剣舞は見応えあったし、魔法のある世界の演出は素晴らしかったよ。けど話は……体育会系のニイさんや腐女子あるいは貴腐人様には需要ありそうだったけど……。私はそっちの気は無いのよ……。うう、豪華ランチを食べた後なのもあって胸焼けしそうだったよ。
そんな私を、そこそこ満足したらしいイマルが笑って見下ろす。
「何だ、お気に召さなかったか?」
「いや、面白くなかった訳じゃないけど……ちょっとあのノリには付き合いきれないと言うか……」
「そうか? あれは劇だから少し大袈裟だが、陛下の周りは皆あんなのばかりだぞ?」
……この国の上層部は皆体育会系の脳筋なのか。うへぁ。
「だからこそ貴族達の繊細な腹芸が理解できず下手に踊らされずに済むとも言う」
けど、イマルはそんな体育会系な陛下とも、腹芸が上手くないとやってけない貴族達ともやっていかなきゃならない。
「その……お疲れ様です」
「――本当に俺と契る気なら、お前も他人事じゃ無いはずだがな」
イマルは呆れた目を向けてくる。
「あー。でも、この世界に来てしまった時点で、私はどっちみち苦労する事は決まってたんですから。その苦労の方向性を選べるだけマシと思わなきゃやってけませんて」
「――ならば、俺ももう手加減はしてやらんからそのつもりで覚悟しておけ」
……あれ。何か私間違った?
ついそう思いたくなるくらい、イマルが満面の笑みを浮かべた。
さっきこの笑みを浮かべたイマルに強制退場させられた王様の姿が脳裏に浮かぶ。
町の向こうに見える城、今頃あそこで王様は仕事の山に埋もれているハズ……。
果たして私はどうなっちゃうんでしょう……?
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