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勇者Side - Spin off - ③
γ-1 役立たず?
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聖女の能力。
――使いこなすまでは苦労したけど、一度覚えちゃえば何て事ない。あんまり使いすぎると疲れるけど、それだけ。
……依頼を受けて魔物を倒しても良い顔されないけど、貧しい村で畑や田んぼに聖女の癒しを与えたときだけは、仏様でも拝むように有り難がられたから。
そういう村近辺にある依頼の大半は害獣駆除。日本だったら猟友会に頼むとか、お役所が罠仕掛けて終わる案件で、皆そういう依頼には最近手を出さなくなった。
代わりに大きな魔獣相手の依頼は片っ端から受けて回る。
……でも、全ての依頼を受けて回っていた頃よりも冒険者達の視線はもっと厳しくなった。
害獣駆除や採集依頼は途切れることなく張り出されるけど、大物魔物の退治依頼なんてそう沢山はないし、一度受けたらそうそう次は出てこない。
だから、当然の流れとして他国への遠征が決まったのは良い。
けど、隣国へ渡る船に乗るのに一悶着があった。いや、正確には乗った後に騒ぎが起きた。
一泊二日の船の旅。カリブの海賊にも劣るおんぼろ帆船で行く隣国ネフシールへの旅。……木舟だけど、気分は泥船に乗る狸。
個室なんて無くて、雑魚寝部屋しか無い船の中、まるで針のむしろに居るみたい。
でも、本当の修羅場は夜が明けてから。
「は? 降りらんねぇってどういうこった!」
「――君たち、勇者とか行って船に乗ったろう? 今噂になってるんだよ、君らのパーティーに聖女が居るって」
「ああ? それがどうして船を降りらんねぇ話になるんだ」
「……知らないのかい? 随分と昔に聖女召喚が禁術指定されたのを。パチもんでも問題あるけど、本物ならもっとヤバい。国が攻め滅ぼされても文句言えないよ? そんな厄介者を国に入れる訳にはいかないよ」
皆で散々文句言ったけど、結局下ろして貰えず元の港に返された。
「ねぇ、どういう事なの? どうして魔王を倒して皆を救う聖女が厄介者扱いされるの?」
「ふん、どうせ魔王を恐れて奴を倒す力を持つ我らに与したと思われたくないのであろう。哀れな奴等よ」
ああ、そうか。流石にまだ今すぐ魔王の城に乗り込んで勝てるだけの戦力があるかって言われたらまだ心許ない。
ひのきのぼうとぬののふくレベルはとうに越えたけど、まだラスボスには至れない。その時間差で魔王に報復されるのは怖いよね。
仕方なく陸路で行ける別の国へ行くことにして、私達はカルロの「ダクーラで魔術の知識を仕入れて手数を増やしたい」との要望から、学術国家らしいその国へ向かうことになった。
でも、旅の途中で聖女の力を使うことは禁止されちゃった……。
私、聖女として仕事しないとただの足手まといでしかないんだけど……。
「大丈夫ですよ。貴女をお守りする為に我らが居るのですから」
……皆そう言ってくれるし……いいのかなぁ。
私は少しだけ居候で居心地の悪い気分になりながら、でも何をして良いのかやっぱり分からなくて。
……料理くらいは、と思ったけどお菓子作りしかした事ないし、学校の調理実習だってコンロやオープン完備の調理室でしかした事ないし。
私、聖女なんだしいいんだよね?
――使いこなすまでは苦労したけど、一度覚えちゃえば何て事ない。あんまり使いすぎると疲れるけど、それだけ。
……依頼を受けて魔物を倒しても良い顔されないけど、貧しい村で畑や田んぼに聖女の癒しを与えたときだけは、仏様でも拝むように有り難がられたから。
そういう村近辺にある依頼の大半は害獣駆除。日本だったら猟友会に頼むとか、お役所が罠仕掛けて終わる案件で、皆そういう依頼には最近手を出さなくなった。
代わりに大きな魔獣相手の依頼は片っ端から受けて回る。
……でも、全ての依頼を受けて回っていた頃よりも冒険者達の視線はもっと厳しくなった。
害獣駆除や採集依頼は途切れることなく張り出されるけど、大物魔物の退治依頼なんてそう沢山はないし、一度受けたらそうそう次は出てこない。
だから、当然の流れとして他国への遠征が決まったのは良い。
けど、隣国へ渡る船に乗るのに一悶着があった。いや、正確には乗った後に騒ぎが起きた。
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個室なんて無くて、雑魚寝部屋しか無い船の中、まるで針のむしろに居るみたい。
でも、本当の修羅場は夜が明けてから。
「は? 降りらんねぇってどういうこった!」
「――君たち、勇者とか行って船に乗ったろう? 今噂になってるんだよ、君らのパーティーに聖女が居るって」
「ああ? それがどうして船を降りらんねぇ話になるんだ」
「……知らないのかい? 随分と昔に聖女召喚が禁術指定されたのを。パチもんでも問題あるけど、本物ならもっとヤバい。国が攻め滅ぼされても文句言えないよ? そんな厄介者を国に入れる訳にはいかないよ」
皆で散々文句言ったけど、結局下ろして貰えず元の港に返された。
「ねぇ、どういう事なの? どうして魔王を倒して皆を救う聖女が厄介者扱いされるの?」
「ふん、どうせ魔王を恐れて奴を倒す力を持つ我らに与したと思われたくないのであろう。哀れな奴等よ」
ああ、そうか。流石にまだ今すぐ魔王の城に乗り込んで勝てるだけの戦力があるかって言われたらまだ心許ない。
ひのきのぼうとぬののふくレベルはとうに越えたけど、まだラスボスには至れない。その時間差で魔王に報復されるのは怖いよね。
仕方なく陸路で行ける別の国へ行くことにして、私達はカルロの「ダクーラで魔術の知識を仕入れて手数を増やしたい」との要望から、学術国家らしいその国へ向かうことになった。
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……皆そう言ってくれるし……いいのかなぁ。
私は少しだけ居候で居心地の悪い気分になりながら、でも何をして良いのかやっぱり分からなくて。
……料理くらいは、と思ったけどお菓子作りしかした事ないし、学校の調理実習だってコンロやオープン完備の調理室でしかした事ないし。
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