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学びを求めて

9-7 イマルに会うために

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    イマルに会いに行く事を決めたは良いけれど、かの国までここからだと寄り道せず急いで行ったとしても一月、いつも通り依頼を受けながらの旅なら二月くらいはかかる。
    マリーもケントも当初の予定通り冬期の間はこの街での学びの予定をすでに組んでいるから、もうしばらくはこの街で過ごす必要があった。
    せっかくなので、この広大な図書館にある、物語の本や、気になった魔術書や動植物の図鑑などを読み漁りつつ、ランチやティータイムには外に出て美味しいと評判のお店でグルメを楽しんだりする日々を過ごしていた。
    あの日うっかり遭遇しかけた勇者ご一行とはあれから遭遇する事もなく。
    勿論あの日の件はその日の内にマリーやケントにも話したけど、二人もこれまで遭遇してはいないみたいだ。
    ただ、私が説明した外見の特徴から、ケントがあの日のお付きが彼の幼馴染みの可能性が高いとは言っていた。
    それと、もう一つ。
   「ねぇ、マリー。貴族や王族と会うのに困らない程度の礼儀作法を教えてくれないかしら」
    この間の件は、イマルの独断で不意打ちでの訪問だったから許されたのだろうけど、正面から訪問するなら無視するわけにはいかないだろう。
   「――あのイマルが貴族と聞いた時には驚きましたけれど、一国の国主に謁見するなら、確かにある程度出来るのが当たり前ですものね。分かりましたわ、お受けしましょう」
    うん、実はその手の教室もこの国にはあったけれど。貴族にも通じるレベルのそれを教える学校の学費は相当高く、その上通う生徒も基本位は既に出来て当然という……私には敷居の高すぎる物で。
    マリーがお友達で居てくれる事に改めて感謝したよ……。
    それが例えイマル並の鬼コーチと化したとしても。
     あれぇ、でも魔術の座学を教わってるときはここまでスパルタじゃなかったのに……!
    「――淑女教育というのはこういったものですの。教師によって多少差異はあっても個人差のレベルですわ」
    き、貴族のお嬢様も楽じゃないんだね……。
    そうしてそれぞれ思い思いの学びを得て迎えた雨期。
    私達はダクーラを後にし、一路アルソレスへ向けての旅に出た。
   「……正直これまで勉強が何の役に立つのか良く分かってませんでしたけど、ちょっと教養をかじっただけでもこんなに世界の見方が変わるんですね」
    そんな中、ケントがしみじみ呟いた。
    「――ええ。私は貴族として必要な教養は身に付けたつもりでいましたけれど、今回改めて外からあの国を学んでみて、その驕りに気付けましたの。私、これまであの国で貴族と名乗っていたことがこんなにも恥ずかしく思う日が来るとは思ってもみませんでしたわ……」
    だからこそ、と。二人は決意を改めて口にした。
   「思う存分〝ざまぁ〟してやる為にも。しっかりイマルを本当の意味で味方に付けなければなりません」
   「うん。俺たちの敵は魔王陛下じゃない。どうしようもない愚王を倒して民を救う。今度はイマルに面倒見てもらうんじゃなく、イマルと対等に戦いたい」
   「うん。そのためにも、マナーレッスン頑張らないとね」
    「……う、が、ガンバリマス」
    女性のマリーでは紳士の振舞いについては基本しか教えられないようだけど、田舎育ちのケントはその基本を覚えるにもなかなか苦労しているらしい。
    顔をひきつらせたケントをマリーと二人でいじりながら、私達は馬車の旅を続けていた。
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