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ダンジョン村で

8-11 別れ

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    「あの香り成分を調べた結果、一度には極僅かずつながら、継続的に体力を奪う成分が確認できました」
    それは強大な敵に対し事前準備として高位の冒険者や各国の軍が使用するものとしては比較的メジャーな毒薬で、その材料の大半は常時依頼として多くの冒険者ギルドの掲示板に張り出されている。
    ――けれど、そのメジャーな毒薬には普通匂いは無い。
    「……勘、だな」
    どうして空気に毒が含まれている可能性に気づいたのかとレンに尋ねればそんな答えが返って来た。
    「そもそも職能としての暗殺者職は毒の扱いに関する能力がある。それに加えて場数を踏んで貯めた経験値もあった。だから、詳しい事は分からんでもなんかヤバいな、ってカンだけは働いたんだよ」
    彼は旅支度を整えながら短すぎた返答に補足を加えた。
    「……でも、本当に良かったの?」
    私達があの竜から得たアイテムは間違いなく幻の激レアアイテムだった。
    だから、私達は当初の予定通りそれをレンに渡そうとしたんだけど……。
    「アホウ、竜を倒したのはお前らだろうが。たまたまとはいえ一緒に居なくて戦闘に一切貢献してないヤツがそんな貴重なアイテム一人でがめたら刃傷沙汰が起きるぞ、普通は」
    呆れた顔で突き返されてしまい、私達は二つ目が得られた場合にと予定していた通り、ケントに盗賊職をゲットして貰った。
    「……スコアが確かにあるのは分かったけど、さすがに飛竜相手じゃ分が悪いな」
    せっかくのダンジョン攻略。私達はもう少しここで腕を磨くつもりだったんだけど……。
    「あんたらは自前で斥候職を得られたし、俺も金になる情報は得た。……ああ、あんたらの個人情報は売らんから心配すんなって」
    彼は最後までソーセージとエールにこだわって、最後の食事も飲み屋で騒いで――。その翌日にはもう他のパーティに加わり、街を出ていった。
    「私達はこれからどうする?」
    「スコアで職と能力は得たけど、それだけじゃ道具を手にしただけなのと変わらない。どんなに良い剣を持っても使い手の技量が伴わなければ宝の持ち腐れだし、技量を得るには訓練しないと」
    「それに、まだ上層を少し歩いただけなんですのよ?    私はもう少しダンジョン攻略を楽しみたいですわ!」
    「そうだね。それに確実にスコアが得られるとなれば、欲しい職能は私もあるから。もちょっと頑張ろうか」
    こうして私達はまた改めて三人でダンジョンに挑み、夏期が過ぎ雨期に入るまでかけてお金と経験値を稼ぎ、四つのスコアを手に入れた。
    ケントは暗殺者の職能を手に入れ、前衛、中衛、斥候職を兼ねられる器用な剣士に成長し。
    マリーは魔剣士の職能を手に入れた。
     ――魔剣士とは魔法を武器や防具に纏わせて戦う剣士で、簡単な回復術を使う事の出来る、賢者に勝るとも劣らない希少なエリート職。魔術については賢者に大きく劣るのだけど、賢者に圧倒的に足りない物理的な攻撃力と防御力といった前衛能力に長ける。
    マリーはこれを自分の槍斧と盾で応用して使いこなし、防御では無敵の盾職となり、物理的なパワーバトルの通じない相手でも、魔法を纏わせた槍斧で切り伏せる、イマルとはまた別の意味で死角無しと呼ばれるまでになった。
    そして私は――
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