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ダンジョン村で

8-5 罠

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    スタートからどの位経ったんだろう。
    ――ここはフィールドと違って太陽の位置や周囲の明るさで時間を計れないから、時間の経過が分かりにくい。
  「そこ、気を付けろ。――罠だ」
    先頭を歩くケントを止め、レンが拾った石ころを投げると――。
    「あー、うん、罠……だね」
    漫画でイタズラにでも使われそうな、縄で足を引っ掻けて木の枝に逆さ吊りにされる罠だ。
   「アホ、それで終わりならダンジョン攻略の難易度は大幅に下がるぜ」
    レンは油断なく戦闘体勢をとる。
   「ほーら来なすった」
    シャッと目にも止まらぬ早さで何かが目の前を横切った。
    ストン、とナイフがその影に刺さり、勢いのまま近くの木に張り付けにされ動かなくなったのはごく小さな手のひらサイズのコウモリだ。
    「そいつは小さいがすばしっこいし、毒持ちだ。弱い毒で即死の心配はないが、すぐに大群で群がってくるから油断してるとあっという間に致死量越える毒を喰らってダンジョンの餌にされっぞ」
    耳障りな高い音が何重にも重なりワッと迫り来る。
    ここまでに出て来て私達が倒してきた魔物はどれもこれも小動物ばかりで、雑魚扱いされる魔物ばかりだったけど、それもこう集団で来られると面倒なんだよね。
    「……罠にかかってろくに動けなくなったとこに集団で毒攻撃か。単純な罠だけどイヤな罠だな」
    「こんなの全然序の口だろ。えげつない罠の例を上げてったらキリないぜ」
    ケントは剣を振り、レンは暗器で捌き、マリーはシールドバッシュと槍斧の一閃で凌ぐ。
    「アイスストーム!」
     彼らのサポートも兼ねようと、私は大量のひょうを群れに叩きつけた。
    翼を冷やし氷の礫で重くして、スピードを封じる。
    「ナイスサポートですわ、ヒカル!    ――では食らいなさい、ウィンドカッター!」
    そこをマリーが放った無数の風の刃が舞い、群れは散り散りになる。
    大幅に数を減らしたコウモリの残党をケントとレンが潰せば―― 
    「……よっし、一先ず終了だな」
    「ああ。……それじゃあレン、改めて聞いて良いか?」
    「何を――って、罠の見分け方だっけ?    いいぜ。っつってもこんな浅い――っつーかそもまだ一階層のこんなちゃちい罠なら簡単に見分けられるぜ。そら、そこの木の根本見てみろ。その木の根本だけやけに下草の丈があるだろ?    ああいうあからさまに周囲と違います~ってとこには大抵罠があるから近づくなって事だ。けど、この先進むとああいう分かりやすい罠をフェイクで置いて、それを避けて通るルートに本命のヤバい罠が……ってなパターンもあるから気を付けろよ」
    言われてから魔物以外にも周囲の景色に目を配ると……。
    「随分罠が多くありませんこと?」
    「いやいや、あんな分かりやすい罠は罠のうちに入らんでしょ。本職おれ必要ないレベルの罠だし」
    ……ダンジョン。楽しいけどやっぱり一筋縄じゃいかない予感がします。
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