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新たな旅立ち

7-3 基本は忠実に守りましょう。

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    「はー!?    マジかよ!?」
    「勿論マジですわ!」
    「この程度、イマルの鬼っぷりに比べたら遊んでるようなものよ!」
    「ええ、日頃の鍛練を怠っては強くなれませんからね!」
    それは、日が沈んで辺りが夜闇に染まった後の事。
    野宿の支度を済ませ、食事を終えて。後は寝るだけとなってからの日課だった事。
    指導役を担っていた彼はもう居ないけれど、私達は互いに競い合うように鍛練に励む。
    「いや、鍛練なんて町のギルドの訓練室で自主練すれば十分だろ?    それに移動中だってしょっちゅう寄り道しちゃ採集だの討伐だの……!」
    「確かに稼ぎとしてはもう効率的とは言えなくなってますが、この辺りの魔物や採集物の把握には役立ちます。それも全くの無報酬と言う訳ではないのですから、特に急がねばならない理由もないなら努力を怠りたくありません」
    「そうですね。お陰で僕らは最短でここまで強くなれたんですから」
    「私たちが目指すのはそこそこの冒険者ではなく超一流の冒険者ですわ!    千里の道も一歩からと申すではありませんか!」
    「うへぇ~、君たちストイック過ぎるでしょ~!」
    ……少々不真面目な新メンバーだけど、今は彼に抜けられては大変だ。
    「まあ、あくまでこれは自主練ですからね。最低限、連携の訓練にだけ参加してくれたら、後は好きにしてくれて構いませんよ」
    例のダンジョンで、噂のアイテムが手に入ったなら、絶対に斥候に有利な職を選びたいと思う。
    これは私達――旧メンバーの総意だ。
    今のところケントに覚えさせる案が有力だ。
    斥候が剣を使えないとかお話にならないから。
    ……私も頑張ってはいるけど、やっぱり職持ちには到底及ばず、防御できても倒しきれない。
    これでは一人で斥候なんか危なくて任せられない。
    だから次点でマリーが候補なんだけど……。
    「私、パワープレイには自信がありますけれど、身のこなしの軽さでは到底ケントに及びません。私の戦闘スタイルが斥候に向かない事は承知しておりますわ」
    と、ほぼケントに確定している。流石に「死角なし」なんて呼ばれてたイマルにはまだ及ばないけど、彼も小器用なんだよケントは。
    けどこれはレンを無視した話。
    だから、運良く二つ目をゲットできたら、という話になっている。
    この話を持って来たのはレンだからね。本当はこんな新参者いびりみたいな事もしたくはないんだけど。この先上手くやれるようになればいいんだけど。
    もしもの時の転ばぬ先の杖くらいは用意しておかないと不安になる位には、私達は斥候役の穴の大きさを実感してしまったから。
    私達は既に習慣と化した鍛練を日々続け、強化に励んでいた。
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