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新たな旅立ち

7-2 進むべき道

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    「で。メンバーが揃ったところで……。何処に向かいますか?」
    いつかの様に、パーティー登録を終えた後で食事処にやって来た。
    「何処へ……と言うよりは、今後何を目指すか、ですね」
    「へぇー?    俺は金さえ稼げれば良いんだけどねぇ?    儲け話っていやぁ、山越えた先のファーヒルムじゃ最近話題のダンジョンがあるって聞いたぜ?」
    「ダンジョン、ですか……?」
    「まあっ、それは面白そうですわ!」
    「そうそう。ダンジョンにも色々あるけどさ、そこが話題になってる理由ってのがさ、スーパーレアアイテムがごく稀にでも手に入るって噂があるからなんだとさ」
    「スーパーレアアイテム……?    魔剣とか?」
    「いいや。レア度は同じでも、人によったらもっと、いくら金を積んでも惜しくないっつー貴族が居るくらいの代物さ」
   「……まさか、ギフトスコア!?」
   「せーえかーい♪」
   「まさか……望みの職が手に入ると言う、お伽噺レベルのレアアイテムが!」
    「これは狙っていかなければ!」
    「んじゃ決まりだな!」
    「では、旅の準備をして――明後日には出発しましょう」
    「おう」
    レンは今滞在中の宿を引き払うと言って、当日門で合流する事にして。
    「私達も片付けませんとね」
    冬の間から今までお世話になった借家。三ヶ月も住めばあちこちに私物が置きっぱなしになってたりするからね。
    それぞれ自分の物は自分で片付けることにして、私も一人台所に増えた調理器具を空間に放り込んでいく。
    イマルが居なくなってからも、ここでの食事当番は私の仕事だった。
    ケントもマリーも美味しいと言ってくれるのに。ふとすると、いつも彼が座っていた席に目をやってしまう。
    厳しいことばっかり言うけど、彼の褒め言葉が励みにもなっていたから。
    片付けが進むごとに、本当にそこに彼が居た痕跡が消えていくようで。
    ……もう彼の私物はとっくに引き上げられているのに。
    でも、それでも今ここに居るのは――。
    「……ヒカル」
    不意に背後から声を掛けられ飛び上がる。
   「ああ、ごめん突然声かけて驚かせて……」
   「ううん、私がちょっと考え事してただけだから」
    「ねぇ、ヒカル。やっぱり君は――イマルの事好きだったんじゃないの?」
    ケントに、直球の問いをぶつけられ。
    「それ、私も聞いておきたいですわね!」
    それを聞き付けたらしいマリーが飛んで来た。
    「……分かりません」
    けど、今の私に返せる答えはそれだけだ。
    「この世界に突然連れてこられて、まだ右も左も分からない様な時に出会った、すごく頼りになる人で。だから、刷り込みの雛みたいに信頼してました」
    でも、それだけでは説明不足なのも分かっていたから、一つ一つ説明を重ねていく。
    「物凄く厳しいけど、でも一つ一つ丁寧に教えてくれて、出来たら褒めてくれて。特に最初の頃は足手まといどころじゃないくらい酷かったのに、見捨てず面倒を見てくれて。この世界で生きられる力を身に付けさせてくれて……」
    指折り数えると片手の指じゃ到底足りないのに。
    「彼は、何も言わずに姿をくらます事だってできたのに、わざわざ正体をバラしてまで私に選択肢をくれました」
    安易に楽な選択肢を選ぶのを、イマル鬼教官が許すだろうか……?
    「それに。私には勇者パーティーにざまぁしてやるって言う目標もあるんです。それにはまだまだ、何もかもが全然足りません」
    だから。
    「こんな駆け出しじゃなくて、もっと胸張って賢者を名乗れるようになってから考えたいと思います」
    イマルは、選べと言ったから。
    いつか、その道を選んで進んだ先でまた会える気はしてるんだよね。
    「……そっか。――悔しいけどアイツのが結局上手なのか」 
    「では、私達の次なる目標は、銀の剣を正真正銘の一流パーティーにする事ですわね!」
    「……そう、ですね。うん。頑張りましょう!」
    そして。借家をギルドに返した私達は、イマルの最後の置き土産せんべつのマイ馬車に乗り込み、町を後にしたのだった。
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