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急転直下の激震
6-6 苦労人イマルの思惑は
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求愛と、生殖。
アレかな、良く聞く吸血鬼に咬まれると吸血鬼になっちゃうってあの……。
「――違うからな」
そっぽを向いていたイマルが強い口調で否定する。……私何も言ってないけど。
「ああ、前侯爵は変態野郎だったが、血ぃ吸われただけじゃヴァンパイアにはならねぇぜ」
……私が想像したのとは違うようだけど、やっぱり侯爵は変態だったのか。――イマルも思い出したくないアレコレあるんだろう。うん、ここはそっとしとくのが良さそうだ。
「まあ、そんな訳でだ。領地は持たねぇが、イマルはウチの侯爵だ。いつまでも遊ばせとく訳にもいかねぇのよ」
……それは、そうだろう。侯爵様ご本人じゃあねぇ。
「けどなぁ……。この野郎、聖女なんか連れ帰って来やがってからに……」
困ったように言うくせに、何故かニヤニヤ笑う魔王様。
「異世界から召喚された上、召喚主のヘルナイト王国に捨てられた、この世界の常識に疎い聖女。ンなもん目の前に連れて来られちゃワシも無視は出来ん。何らかの対応はしなきゃならん。――だから連れてきたんだろう?」
――え。
「流石にワシも異世界へ帰す術は知らんがな。望むなら国籍をやることも、庇護を与える事も出来る。――無論、お前がそれを受け入れるならと但し書きはつくが」
え、つまり。
きっと知られたくなかっただろう事を私にバラしてまでここへ私を連れて来たのは。
「いっそイマルの嫁に来るか? いい加減妻を迎えて子を作れといくら言っても聞かんのだよこやつは……」
「魔王陛下、戯れ言ばかり言うならその口、ニールに命じて凍らせて開かなくしてやりましょうか」
「おい、ワシを脅すなよ」
「陛下の悪ふざけが過ぎるからですよ」
「へいへい、まあ今すぐの返事なんざ無理だろうからよ、ゆっくり考えといてくれや、嬢ちゃん。お前もそろそろ下がれ、イマル」
「……御意」
まだ言い足りない感たっぷりに了承し、イマルは私を連れて部屋を出る。
「――お疲れ様です。お料理、お部屋に運ばせますね」
「ああ」
「そっか……。ここ、魔王の城なんだ」
ため息と共にこぼれる今更感溢れる台詞。
「私、何か選択間違ってたら、勇者パーティーとしてラスボス戦のために乗り込んでいたかもしれない場所なんですね……」
「……最初から途中で抜けるつもりだったとはいえ一応勇者パーティーの一員だった俺の前でそれを言うのか……?」
「はは、途中で抜けて、最後に魔王陛下の腹心とかいって敵役で再登場予定の人が何を……」
RPGじゃよく居るテンプレ裏切りキャラ。……なんて裏切りキャラに向かない人だろう。
「魔物使いになったのは、この国に来てからなんですね」
「……もっと言えばヴァンパイアになってからだな」
「『死角なし』なんて呼ばれ出したのは?」
「内偵のためにあの国で冒険者として活動を始めてからだ」
「え。じゃあ私達よりかはともかく冒険者経験は多くない……?」
「いや、正式に叙爵されるまでの教育期間中にこの国で冒険者として活動していた。従魔達の殆どはその頃にテイムした」
……凄い人だってのは分かってたけど。本当に凄い人だったんだ。それも苦労人。
彼の背が、これまで以上に頼もしく見えるのは……何でなんだろうね?
アレかな、良く聞く吸血鬼に咬まれると吸血鬼になっちゃうってあの……。
「――違うからな」
そっぽを向いていたイマルが強い口調で否定する。……私何も言ってないけど。
「ああ、前侯爵は変態野郎だったが、血ぃ吸われただけじゃヴァンパイアにはならねぇぜ」
……私が想像したのとは違うようだけど、やっぱり侯爵は変態だったのか。――イマルも思い出したくないアレコレあるんだろう。うん、ここはそっとしとくのが良さそうだ。
「まあ、そんな訳でだ。領地は持たねぇが、イマルはウチの侯爵だ。いつまでも遊ばせとく訳にもいかねぇのよ」
……それは、そうだろう。侯爵様ご本人じゃあねぇ。
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困ったように言うくせに、何故かニヤニヤ笑う魔王様。
「異世界から召喚された上、召喚主のヘルナイト王国に捨てられた、この世界の常識に疎い聖女。ンなもん目の前に連れて来られちゃワシも無視は出来ん。何らかの対応はしなきゃならん。――だから連れてきたんだろう?」
――え。
「流石にワシも異世界へ帰す術は知らんがな。望むなら国籍をやることも、庇護を与える事も出来る。――無論、お前がそれを受け入れるならと但し書きはつくが」
え、つまり。
きっと知られたくなかっただろう事を私にバラしてまでここへ私を連れて来たのは。
「いっそイマルの嫁に来るか? いい加減妻を迎えて子を作れといくら言っても聞かんのだよこやつは……」
「魔王陛下、戯れ言ばかり言うならその口、ニールに命じて凍らせて開かなくしてやりましょうか」
「おい、ワシを脅すなよ」
「陛下の悪ふざけが過ぎるからですよ」
「へいへい、まあ今すぐの返事なんざ無理だろうからよ、ゆっくり考えといてくれや、嬢ちゃん。お前もそろそろ下がれ、イマル」
「……御意」
まだ言い足りない感たっぷりに了承し、イマルは私を連れて部屋を出る。
「――お疲れ様です。お料理、お部屋に運ばせますね」
「ああ」
「そっか……。ここ、魔王の城なんだ」
ため息と共にこぼれる今更感溢れる台詞。
「私、何か選択間違ってたら、勇者パーティーとしてラスボス戦のために乗り込んでいたかもしれない場所なんですね……」
「……最初から途中で抜けるつもりだったとはいえ一応勇者パーティーの一員だった俺の前でそれを言うのか……?」
「はは、途中で抜けて、最後に魔王陛下の腹心とかいって敵役で再登場予定の人が何を……」
RPGじゃよく居るテンプレ裏切りキャラ。……なんて裏切りキャラに向かない人だろう。
「魔物使いになったのは、この国に来てからなんですね」
「……もっと言えばヴァンパイアになってからだな」
「『死角なし』なんて呼ばれ出したのは?」
「内偵のためにあの国で冒険者として活動を始めてからだ」
「え。じゃあ私達よりかはともかく冒険者経験は多くない……?」
「いや、正式に叙爵されるまでの教育期間中にこの国で冒険者として活動していた。従魔達の殆どはその頃にテイムした」
……凄い人だってのは分かってたけど。本当に凄い人だったんだ。それも苦労人。
彼の背が、これまで以上に頼もしく見えるのは……何でなんだろうね?
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