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冒険者ランクを上げましょう

3-8 努力と葛藤

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    この世界で町から町への移動は馬車が基本で、宿場町と宿場町の距離は馬車で一日の距離がデフォ。
   貴族は馬車、商人や裕福な農家は荷馬車、庶民は乗り合いの辻馬車を使う。
   冒険者は自前か、ギルドの有料レンタルの馬車を使う。
   宿場町とは本当に馬車移動する人間と馬を休ませるための町で、リゾート地ではない。
    まあ裏路地のいかがわしい店なんかはあるみたいだけど、日本の各地個性豊かな道の駅みたいなレジャーは期待しちゃいけない。
    この辺の宿に連泊する者はほぼ居ない。
    ……だから。町から町へ徒歩で移動した上三日も連泊するなんてレアケースで。
    例えるなら、東京から福岡まで飛行機なら空港での手続きやら待機時間込みでも数時間、新幹線でも半日程度で移動出来るのに、わざわざ二泊三日かけてまでフェリーでの移動を選ぶようなもの。
    ……東京から福岡までぶっ通しで車運転する事考えたらまあ車ごと運んでくれるフェリーは便利だけど。
    で。なんでこんなつまんない事並べ立ててるか、って言うとね……。
    鬼教官様のスパルタっぷりに順応しつつある自分におののいて思わず現実逃避したくなったからさ!
    私達は王都から離れ、国境近くの町へ続く道をひたすら辿り、歩き続けている。
    途中の宿場町では奇異の目を向けられながら三泊して、地獄の合宿稽古とカンヅメスタディのコンボ技を決められ昇天寸前になったところでご褒美の美味しいご飯ともふもふ従魔とのふれあいで癒される。
    この見事な飴と鞭の使い分けで、あれからまだ一月くらいなのに、少なくとも歩くだけならだいぶ疲れにくくなってきている。
    ……人って、その気になれば何とかなるもんなんだなぁと他人事のように思う。
    血や魔物の肉片が宙を舞うのにも慣れた。
    「慣れ始めが一番危ないんだ、調子に乗るなよ」
    ……イマルさんには誉められるより諌められたけどさ。
    でも、そろそろ戦いもしないのに証明部位を下手っぴいに切り取るだけの簡単なお仕事で、実際に戦う他三人と同じ額の個人報酬を貰うのが心苦しくなっている。
    「……マリー、そろそろヒカルに実践練習させるべきじゃないか?」
    これまで魔法理論を机の上で文字情報を追うのをメインに学んできたけど。
    うん、早い話が起こしたい現象のイメージと組み込む要素とタイミング、そして詠唱が上手く噛み合わないと魔法にならないから、イメトレと要素の勉強、詠唱の仕方をひたすら座学で詰め込まれてた。
    「魔法を使うのに必要なのは体力ではなく魔力だからな。賢者様にいつまでも体ばかり鍛えさせても仕方ない。町中でぶっぱなして失敗すれば目も当てられないから、野宿する夜にメニューを追加しよう」
    ……、あれ?    魔法を使えるのは楽しみだけど……これ、またスケジュールがしんどくなったんじゃ――
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