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パーティー結成
1-1 巻き込まれ召喚されました。
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それは、ある日の何て事無い普通の朝の光景のはずだった。
ただ、いつものバスに乗っていた時の事。運良く始発のバスで座席の確保に成功し、ちょっとばかし自分の幸運を過信してしまったせいだろうか。
混雑した車内では前方の様子なんて見えなかったから、原因は分からないけど、とにかく運転手が急ブレーキをかけて。
私のすぐ横に立ってた他校の制服を着た女子高生が踏ん張り切れず私の方に倒れかかってきて。
――次の瞬間、私は――私達はバスの中どころか日本のどこかとも思えない豪奢な建物の中に居て。
「ようこそ、聖女よ!」
と、オーバーリアクションするオジサマらに取り囲まれ、連れていかれた。……とっても可愛い顔してた他校の女子高生だけ。
まあ何か色々失礼な事を言われたけど、要約するとつまり喪女は要らんと言われて革袋に入った数枚の硬貨だけ持たされて城の外に放り出されたよ。
かろうじて言葉は分かるけど、お金の価値も常識も分からない異世界の町に、たった一人で。
勿論こうなる前に掛け合った。
間違いで召喚したなら元の世界に帰してくれってね。
……まあテンプレ通りにムリって言われた挙げ句にこの仕打ち。
さてどうしてくれよう、ここから上手いことやってざまぁするのがセオリーだしな。
――この世界、冒険者ギルドってあるのかな?
……誰かに聞いてみるか。
「あの、すみません」
あんまりガタイの良い大人の男性に声をかけるのは私のチキンハートが躊躇したので、たまたま通りがかった線の細い少年をターゲットに選んだ。
「あの、この街に冒険者ギルドってありますか?」
別段特徴の無い紅茶色の髪にくりっとした同色の瞳。まだ高校生になりたて位のカワイイ系の少年はびっくりした顔で私を見ている。
「賢者、様……?」
思わず漏らしたような呟き。
「え?」
「だってステータスに……。――っ、て、あ! ご、ごめんなさい勝手に鑑定してしまって! わ、わざとじゃないんです、本当にごめんなさい!」
ペコペコ必死に謝ってくる少年を何とか宥めて冒険者ギルドへの案内をお願いするまで結構な時間と労力を必要としたけど、まあそれは良い。
「改めて、私の名前は聖光留。聖が名字で光留が名前よ」
「あ、お、俺はケントです。……ただの村人なので家名は持ちません」
と、互いに自己紹介を済ませて冒険者ギルドへようやく辿り着いた頃には空が茜色に染まり始めていた。
ただ、いつものバスに乗っていた時の事。運良く始発のバスで座席の確保に成功し、ちょっとばかし自分の幸運を過信してしまったせいだろうか。
混雑した車内では前方の様子なんて見えなかったから、原因は分からないけど、とにかく運転手が急ブレーキをかけて。
私のすぐ横に立ってた他校の制服を着た女子高生が踏ん張り切れず私の方に倒れかかってきて。
――次の瞬間、私は――私達はバスの中どころか日本のどこかとも思えない豪奢な建物の中に居て。
「ようこそ、聖女よ!」
と、オーバーリアクションするオジサマらに取り囲まれ、連れていかれた。……とっても可愛い顔してた他校の女子高生だけ。
まあ何か色々失礼な事を言われたけど、要約するとつまり喪女は要らんと言われて革袋に入った数枚の硬貨だけ持たされて城の外に放り出されたよ。
かろうじて言葉は分かるけど、お金の価値も常識も分からない異世界の町に、たった一人で。
勿論こうなる前に掛け合った。
間違いで召喚したなら元の世界に帰してくれってね。
……まあテンプレ通りにムリって言われた挙げ句にこの仕打ち。
さてどうしてくれよう、ここから上手いことやってざまぁするのがセオリーだしな。
――この世界、冒険者ギルドってあるのかな?
……誰かに聞いてみるか。
「あの、すみません」
あんまりガタイの良い大人の男性に声をかけるのは私のチキンハートが躊躇したので、たまたま通りがかった線の細い少年をターゲットに選んだ。
「あの、この街に冒険者ギルドってありますか?」
別段特徴の無い紅茶色の髪にくりっとした同色の瞳。まだ高校生になりたて位のカワイイ系の少年はびっくりした顔で私を見ている。
「賢者、様……?」
思わず漏らしたような呟き。
「え?」
「だってステータスに……。――っ、て、あ! ご、ごめんなさい勝手に鑑定してしまって! わ、わざとじゃないんです、本当にごめんなさい!」
ペコペコ必死に謝ってくる少年を何とか宥めて冒険者ギルドへの案内をお願いするまで結構な時間と労力を必要としたけど、まあそれは良い。
「改めて、私の名前は聖光留。聖が名字で光留が名前よ」
「あ、お、俺はケントです。……ただの村人なので家名は持ちません」
と、互いに自己紹介を済ませて冒険者ギルドへようやく辿り着いた頃には空が茜色に染まり始めていた。
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