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第二章

赤いけど。

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 いよいよこの旅も佳境に入り、次とその次が終われば王都はもうすぐそこ。

 そんな私達がたどり着いたその“次”の港は。
 「川の漁港ね」

 日本の川のように水が澄んではいないけれど、川幅はまだそれなりにあるここには、中型ボートの釣り船が多く浮かんでいる。
 そう、このクルーザーが大きく見える程度には。

 「やっぱりマスが多いわね」

 サケ、サーモン、トラウトサーモン、ニジマス……その他諸々多々種類のあるマス科の魚。
 私は専門家じゃないんで詳しくはないけれど。

 取り敢えず身が赤くて脂の乗った美味しい魚。
 それが多く水揚げされている。

 他は淡白な川魚ばかり。

 となれば――

 「やっぱりメインで使うべきはマスか」
 そしてマス子のイクラ。
 やっぱりキラキラ輝く赤い海の宝石にはついつい目が惹きつけられるのよね。
 前世でも見るとついついよだれが、ね……?

 だけど大抵素敵なお値段のせいで泣く泣く後ろ髪惹かれつつ諦める、そんな経験がよくあった。

 しかし、マスが主に水揚げされる漁港とあって、ここでは割と安価に手に入る。
 無論マス本体はそれ以上に安く手に入る。

 「となれば、今回はアレでいくか」

 ここのところメニュー決めに困る事が多かったが、今回は実にすんなり案が出た。

 「てか、これだけマス推しだとねー。マスオさんもびっくりだと思うわ。つかマス以外の選択肢がほぼ無いし」

 何とか青菜だけは確保して、塩漬けにしておく。

 「彩りと食感の為にもね、端役とはいえ侮れないんだよ」
 そして、マスのアラでしっかり出汁をとり。

 米とほぐし身と青菜と一緒に釜に入れ、氷を入れてかまどにon。

 そういや前世で某人気アイドルグループのメンバーが一般から変わり種レシピを募集する企画やってたっけ。
 ……これは多分スタンダードな方だよね?

 炊きあがったらかき混ぜて、上にサーモンの刺し身といくらをトッピングすれば……

 「マスの親子釜飯~!」

 出汁の利いたご飯にマスのほぐし身のピンクと青菜の緑。
 その上のキラキラ宝石箱的な輝きを魅せるいくらとサーモンの刺し身。

 何より出汁の香りが食欲をそそるはず。

 「ちなみにマスってこんな赤いけど、実は白身魚だって知ってた?」

 ちょっとドヤ顔でトリビア呟いてみる。

 「へー」
 ……あ。こいつらマトモに聞いてないな。

 「これうまいな。飯もうまいが、このいくら、前にも食べたけどやっぱり旨いや」
 「そうだな、味や食感が少々異なるが……」
 「うん、ちょっと粒が小さめなんだよね。でもその分量があるから……」

 大粒のをちょっと、より小粒でも沢山食べれる方が私的にはお得感があるけど、この辺は個人の価値観次第だからなー

 「しかし、このメニューの肝はこのご飯ですよね? いくらはあくまでトッピングの一つ。この味なら十分イケますよ」

 ジーク君のお墨付きも貰ったし。
 今回のメニューは決まった。
 さぁ、営業開始だ!
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