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第二章

工場街です。

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 「う……、けほけほ、まさかこの世界に来て東京より空気の良くない街があるとは……」

 そこは、もくもくと煙を吐き出す煙突が、ざっと見ただけでも両手の指に余る本数突き立った、そんな街。
 港に止まる船は、ここに材料を運び入れる船か、完成品を運び出す貨物船が大半だ。

 川の周辺には工場が密集し、川から少し離れた丘の斜面に工場で働く面々が住まう家が並ぶ、そんな街。

 「いや、東京には排ガス規定とかあったからなぁ……」

 それでも、鉱山街ではなく、建ち並ぶ工場も食料品の加工を主として稼働する工場が5割を締め、残りは海外へ輸出する品々や日用品の工場なんだそうで。
 煙はともかく、排水汚染などの心配はなさそう。

 「ちなみに、ここで一番多く作られている食べ物がコレだ」

 それは。
 にんにくやオリーブオイルの他に塩、コショウ、唐辛子などの調味料に漬けこまれた瓶詰め。
 すなわち。

 「アヒージョ、ですか?」

 それは洋酒との相性の良い、酒の友。

 「はい。漬けられる食材は様々ですが、これは外国でも人気が高く、輸出品としても扱われる主力商品なのです」

 つまり、できればそれで何か作って欲しいと……?

 けど、アヒージョのアレンジレシピなんて、オイル系スパゲティくらいしか浮かばない。
 うーん、どうしたものか……

 あ、シーフードにきのこに……結構種類あるのか。
 なら数種類メニュー揃えればいける?
 うーん、でもなー……

 「一応他の加工品も見て回ろう」

 他……、ツナ缶にサバ缶、ピクルス……あ、鮭フレーク発見。あれご飯のお供に最高なのよ。……自腹で一個買っていこう。後でオヤツにおにぎり作ろ。ついでにツナ缶でツナマヨも。

 しかし……、個人的に使いたい食材は見つかるけど、肝心の食材としてはどれもピンと来ないなぁ。

 そうこうするうちに街に鐘の音が響いた。
 「あれは、終業を知らせる鐘です。この街では午後5時以降も営業稼働をする工場を認めていませんから」
 その言葉通り、仕事の片付けを始める人々。それが終われば作業着を着替えて皆帰途につく。
 中には奥さんや夫と連れ立って帰る姿もある。

 「あ、そうか……。これまでの商業港や軍港とは違って、ここはよそから来る人もいるけど大半はここの住人だし、船で来るのもいつもの業者さんがほとんどなんだ……」

 つまり、オシャレな料理より、普段遣いの出来るものが良い。

 「なら、パスタでも良いか」

 これまで見てきた加工品を使えば色々なパスタが作れる。

 「定番パスタとご当地パスタ。それぞれメニューを揃えればイケるかな……?」
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