100 / 125
第二章
港も色々、店も色々、人々はもっと色々
しおりを挟む
「おーう、安いよ安いよ!」
「ああ? これで安いだと? あっちの港じゃ同じ魚が一カゴに5匹入って同じ値段だったぞ? こりゃ4匹しか入ってねぇじゃねぇか」
「ああん? けっ、質より量をお求めなら向こうの港で買ったら良いじゃねえか。けどな、こっちは脂のノリは向こうとは段違いだ、同じ量同じ値段で売っちまったらこっちは大損だぜ!」
「けっ、脂のノリなんざ捌いてみるまで分からんだろ、ぼったくりじゃねぇのか?」
「おぅ、テメェやるかぁ?」
「そっちこそ、返り討ちにされても文句はねぇだろうなぁ?」
船から降りて少し歩いた魚市場。
個々は基本この近くの漁港で捕れた魚と、川の上流から船便で運ばれてきた魚を主に商っている様だけど……、
まず耳に飛び込んできたのが、こんな喧嘩腰のやりとりで。
少し進むと穀物や野菜を始めとした食品市場、その奥が小物や雑貨、更に行くと貴金属を扱う店もあったが、以前訪れた商業港の様な高級店はほぼ見当たらず、庶民的なお店が多い代わりか、客層も荒っぽい人間が多そうな街だった。
「……それはそうと。米が妙に高くて、小麦がやけに安いのには訳があるの?」
「その……、この土地が麦より米の方がよく育つ土地柄なのですが……」
ルイーゼさんは言いにくそうにしながら答えてくれる。
「逆に、あちらの土地は麦がよく穫れ、逆に稲作には向かぬ土地なので、互いに米と麦を融通し合っているのですが……」
その取引に、例の伯爵同士のライバル関係が大いに影響してしまっている為のこの価格なんだそうで。
「相手により高く売りつけ、逆に相手から安く仕入れる、それが商人ですよね?」
いやまぁ、そうなんだけどさ。
「……なので、川の対岸では逆の値付けがされているかと」
うぅん、値付けは一応ギリギリ許容範囲なんだけど。
「何か面倒くさい事になりそうだから、今回米も麦も使いたくないなぁ……。あ、もしかして野菜もそう? いくつか微妙な値段の野菜があるけど……」
「……おそらくは」
わー、すごーく面倒くさい。
「あ、でも果物はそんなに値段変わらないね?」
「それは……、果物は一部除いて生のままではあまり長期保存出来ないもので。近場から仕入れられる物ばかりですので。……流石に川の対岸というだけではそう大きく環境は変わりませんので、穫れる果実も似たりよったりなので……」
ふむ、なら今回は食事メニューでなく、この果物を使ったスイーツを作るか?
けど、この港の雰囲気にあんまりオシャレなスイーツは似合わなそうだ。
「さぁて、どんなスイーツを作るかなぁ……?」
「ああ? これで安いだと? あっちの港じゃ同じ魚が一カゴに5匹入って同じ値段だったぞ? こりゃ4匹しか入ってねぇじゃねぇか」
「ああん? けっ、質より量をお求めなら向こうの港で買ったら良いじゃねえか。けどな、こっちは脂のノリは向こうとは段違いだ、同じ量同じ値段で売っちまったらこっちは大損だぜ!」
「けっ、脂のノリなんざ捌いてみるまで分からんだろ、ぼったくりじゃねぇのか?」
「おぅ、テメェやるかぁ?」
「そっちこそ、返り討ちにされても文句はねぇだろうなぁ?」
船から降りて少し歩いた魚市場。
個々は基本この近くの漁港で捕れた魚と、川の上流から船便で運ばれてきた魚を主に商っている様だけど……、
まず耳に飛び込んできたのが、こんな喧嘩腰のやりとりで。
少し進むと穀物や野菜を始めとした食品市場、その奥が小物や雑貨、更に行くと貴金属を扱う店もあったが、以前訪れた商業港の様な高級店はほぼ見当たらず、庶民的なお店が多い代わりか、客層も荒っぽい人間が多そうな街だった。
「……それはそうと。米が妙に高くて、小麦がやけに安いのには訳があるの?」
「その……、この土地が麦より米の方がよく育つ土地柄なのですが……」
ルイーゼさんは言いにくそうにしながら答えてくれる。
「逆に、あちらの土地は麦がよく穫れ、逆に稲作には向かぬ土地なので、互いに米と麦を融通し合っているのですが……」
その取引に、例の伯爵同士のライバル関係が大いに影響してしまっている為のこの価格なんだそうで。
「相手により高く売りつけ、逆に相手から安く仕入れる、それが商人ですよね?」
いやまぁ、そうなんだけどさ。
「……なので、川の対岸では逆の値付けがされているかと」
うぅん、値付けは一応ギリギリ許容範囲なんだけど。
「何か面倒くさい事になりそうだから、今回米も麦も使いたくないなぁ……。あ、もしかして野菜もそう? いくつか微妙な値段の野菜があるけど……」
「……おそらくは」
わー、すごーく面倒くさい。
「あ、でも果物はそんなに値段変わらないね?」
「それは……、果物は一部除いて生のままではあまり長期保存出来ないもので。近場から仕入れられる物ばかりですので。……流石に川の対岸というだけではそう大きく環境は変わりませんので、穫れる果実も似たりよったりなので……」
ふむ、なら今回は食事メニューでなく、この果物を使ったスイーツを作るか?
けど、この港の雰囲気にあんまりオシャレなスイーツは似合わなそうだ。
「さぁて、どんなスイーツを作るかなぁ……?」
29
お気に入りに追加
932
あなたにおすすめの小説
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
離婚したので冒険者に復帰しようと思います。
黒蜜きな粉
ファンタジー
元冒険者のアラサー女のライラが、離婚をして冒険者に復帰する話。
ライラはかつてはそれなりに高い評価を受けていた冒険者。
というのも、この世界ではレアな能力である精霊術を扱える精霊術師なのだ。
そんなものだから復職なんて余裕だと自信満々に思っていたら、休職期間が長すぎて冒険者登録試験を受けなおし。
周囲から過去の人、BBA扱いの前途多難なライラの新生活が始まる。
2022/10/31
第15回ファンタジー小説大賞、奨励賞をいただきました。
応援ありがとうございました!
聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!
幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23 女性向けホットランキング1位
2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位 ありがとうございます。
「うわ~ 私を捨てないでー!」
声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・
でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので
「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」
くらいにしか聞こえていないのね?
と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~
誰か拾って~
私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。
将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。
塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。
私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・
↑ここ冒頭
けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・
そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。
「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。
だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。
この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。
果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか?
さあ! 物語が始まります。
公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜
月
ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。
けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。
ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。
大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。
子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。
素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。
それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。
夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。
ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。
自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。
フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。
夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。
新たに出会う、友人たち。
再会した、大切な人。
そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。
フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。
★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。
※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。
※一話あたり二千文字前後となります。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる