屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜

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第二章

世界を超えても映えは大事でした。

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 「――つまり、お話をまとめるとこう言う事ですか?」

 ケルト氏が持ちかけてきた取引と言うのは……
 「我が商会が扱う品を、割引価格でお安くお譲り致しますので、その品で、今回のパエリアの様な映えるパフォーマンスをお願いしたいのです!」
 ……との事。

 「えーと、私達はあくまで飯屋、それもかなり小規模な飲食店ですよ? 決して大道芸人の類いじゃありませんよ?」

 いやまぁ、某うどんチェーンの営業戦略とか、某ハンバーグ&ステーキ系ファミレスチェーンの経営者の特集なんかで、飲食店でも客の興味を惹き付けるパフォーマンスが有効な事は承知していた。

 けどそれは、料理の味が伴ってこそ。

 例え現実には不可能そうな、某中華料理人アニメの様なパフォーマンスをしたとして。
 無論人目は引くだろうけど、美味しいと言う口コミより、不味いとか汚いとか接客態度が悪いとか、マイナスイメージな噂のが往々にして広まりやすいもの。
 客商売で客にそっぽを向かれてはお終いだろう。

 「ええ、ですが味の点では心配する必要がない。“前の港”での営業の噂も調べましたから、そこは確信しております。
 それにパフォーマンスというのも、なにも芸人の様に目立つ事をしろと言うより、調理の様子を見せて欲しいのです。
 この店のような形態ではなく、貴女方の屋台営業なら、それは容易でございましょう?
 無論、先日のパエリアの様に、より分かりやすいものであればより良いのは確かではございますが……」

 当たり前だけど、この世界にはテレビもラジオもない。
 印刷技術はかろうじてあるものの、前世の記憶にあるものと比べるまでもないお粗末さ。
 そんな中での店の宣伝戦略は色々と工夫が必要なんだろう。

 ケルト氏にとって、これはその為の投資の内の一つなんだろう。

 先の伯爵の無茶振り依頼に対応して頂いた恩もある。
 上手くいかなかった場合の責任を負わせられるとすれば引き受けるのにも慎重になるが、そうでないなら……

 「分かりました。本当に上手くいくかは分かりませんが、可能な限り協力させていただきます」

 どっちにせよ伯爵と契約を交わした以上、営業は絶対。
 そこに更に補助の投資があると言うのは、私達の様な、零細商人には有り難すぎる話なのだから。

 こうして話がまとまり、デザートのところてんをいただきながら、私達は商談を終え、軽い雑談を楽しみつつ。
 「……そうか、ここ、寒天もあるのか。後で仕入れておこうかな」

 等と頭の隅で考えていた。
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