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第二章

ステーキ会食からの商談。

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 ジュウジュウパチパチと跳ねる脂を、事前に渡された紙エプロンで受け、服につくのを防ぎつつ。
 その音の発生源である、熱々の鉄板と、その上に盛り付けられた厚切りのお肉に目が釘付けになる男性陣。

 外国からの輸入品である、高級肉。その上では下の方から既に溶け始めているガーリックバターと、ガーリックチップが散らされ、その脇には彩りの付け合せ野菜が、赤や緑の色を添えている。
 添えられているのは、私もパエリアに使った赤いパプリカと、緑色の豆。……えんどう豆、っぽいかな。サヤから出されて豆だけだとグリーンピースっぽくもあるわね。

 その上から、給仕のイケメンがスプーンで掬ったステーキソースをかけると、一層音は賑やかになり、スパイスの香りが強く立ち上る。
 ……うん、これは食欲をそそる香りだ。

 ロイスなんかほら、もう待てをさせられてる犬みたい。
 あれはもうルイーゼさんの事なんか肉に支配された脳内の端に追いやられているに違いない。
 ……できれば今のうちに忠告したいところだけど。

 明らかに私達に話があって食事に誘ってくれたんだろうケルト氏の前でそんな話は出来ず。

 「どうぞ、お召し上がりになって下さい」
 「は、はい、いただきます!」

 良し、と許しを得たわんこロイスは早速肉にナイフを入れ、一切れ口に運ぶ。

 まず、一噛み。途端に目をひん剥き、すごい勢いで咀嚼を開始する。
 確実にいつもより長い咀嚼を終えると、名残惜しそうに飲み込んだ。

 ……ふむ。
 私もお行儀良くカトラリーを使いこなし、お肉を口に含む。
 まずはステーキソースのガーリックと玉ねぎの風味がガツンとくる。
 しかし、肉を噛み締め出てきた肉汁の脂の甘味がまろやかに中和しつつも、ブラックペッパーのきりりとした辛味がむしろ甘みをボヤけさせず引き立てる。
 何より、肉がとても柔らかい。

 これは、美味しい。
 そりゃあロイスは夢中になるだろうさ。

 「とても、美味しいです」
 「お褒めいただき光栄です。勿論食材や料理人にもこだわった店ですがね、この店は我が商会が出資している店なのですよ」
 と、ケルト氏は語る。

 「この、鉄板。我が商会で扱っている物でして。厨房の調理設備も全てウチの品を使っております」

 成程、前世で海外資本の某大型家具店みたいな事をしてるのね。

 「ですが、食器はともかく、調理道具に関しては、あまりお客様の目には触れません。……しかし、先日の貴女方の営業を見て、目から鱗が落ちる様でした!」

 ギラリとケルト氏の目が光る。

 「そこで、私と取引を致しませんか? ……と。そういうお話をさせていただきたいのですよ」
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