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第二章

カニたっぷり天津炒飯

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 天津飯。
 それは、いわば中華風オムライスの様なお料理だけど。

 ご飯は白飯でもチャーハンでも良く。
 あんかけもあんだけでも、具材を入れても美味しい。

 勿論食材同士の相性や、味の加減といった調整は必要だけど、なかなかアレンジしがいのあるメニューである。

 「今回カニが手に入ったし。やっぱり目玉はカニ尽くし天津飯よね」

 カニレタスチャーハンに、かに玉乗っけて、餡にもカニの風味とほぐし身を加えて。
 ああ、考えるだけでヨダレ出そう……。

 まずはカニを熱湯で茹でる。
 あ、出汁の出た茹で汁は後で使うから捨てるなよ、ロイス。

 ……さて、茹で上がったここからがちょっと面倒な作業になる。
 「さぁ、蟹の身を取り出すわよ」
 硬い甲羅を割って、中身を掻き出す。

 これ、ほじくりながら食べると無言になる。
 けど美味しいから黙々とほじくっちゃう。

 でも、今回は店に出す料理に使うので、延々とほじくるばかり。

 「うへぇ、もう飽きた……」
 ロイスは早々にうんざりし始めた。

 ……が。
 「何かこれおもしろーい」
 蟹の足から身を掻き出すのが何気に気に入ったらしいミルフィちゃんが、思わぬポテンシャルを発揮した。
 おぉ、ロイスより優秀作品じゃないですか。

 「ミルフィちゃん、今夜の夕飯はご褒美にデザート一品ご馳走するよ」
 「わーい、やったぁ!」
 うん、可愛い。

 面倒な作業が終われば、次はひたすらネギを刻み、レタスを刻み。

 ちなみにあんは、シンプルなものとカニ、具沢山のはエビとキノコとタケノコ。

 卵は随時、大量に割っては溶く作業が待っている。

 「ロイス、ガンバ♪」
 「……ちくしょう、俺、いつもこんな役回りなんだけど」
 「ん、ロイスが何か思いついたなら私は従うよ。けど、毎回メニュー決めるの私じゃん。で、主に調理するのも私。この配役は必然だと思うけど?」
 「くぅ、何でほぼ初見の食材で料理できるんだ……」

 う、すこーし罪悪感があるなぁ、流石に。
 調味料チートはロイスも当然知ってるけど、流石に前世の記憶によるチートは話してないから。

 でも。
 「ほらほら、開店時間も迫ってるんだから、今は考えるより手を動かす!」
 「分かってるよ……」

 これまでと何より違う点は、馬車キッチンの対面に椅子を並べたこと。

 「じゃあ、開店前にまずは味見の賄いをどうぞ。メニューはどれにする?」
 「俺、具沢山ので」
 「かにー!」
 「では俺はシンプルなのを貰おうか」

 注文通りに出すと。

 「おお、飯屋で食べたチャーハンも美味かった……、いや、チャーハンだけならやっぱ飯屋のヤツのが美味い。けど、このふわふわトロトロの卵とあんを一緒に食べるとこんなにも美味くなるのか」

 ふふふ、旨味の相乗効果を甘く見るでない、……ってね。

 「それじゃ、今日の営業を始めるよ。準備は良い?」
 「「「おー!」」」
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