上 下
67 / 125
第二章

やっぱり中華は美味しい。

しおりを挟む
 まず一つ。お箸でつまんで。
 醤油に酢を垂らしたタレにとぷんと浸けて、ぱくりと頬張る……前に息を吹きかけ少し冷まして――

 「うっま、この餃子大当たりだわ」

 羽がパリッと、噛んだ瞬間中から肉汁が溢れてタレの味と相まって、どうにも白飯が欲しくなるけど。
 「……ちょっと、我慢しないと」

 今日はラーメンを頼んだので。
 ラーメン✕白飯という、炭水化物✕炭水化物という悪魔の誘惑には屈しないのだ、私は……。

 しかし、ついつい箸は次の餃子に伸びる。
 ああ、美味しい……、幸せ……

 「あい、お待ち! ラーメンだよ」
 「はい、わたしです!」
 「熱いから気をつけて食べな」
 「ありがとうございます」

 それは。まさに昔ながらの中華そば、という雰囲気の醤油ラーメン。

 乗ってる具材はチャーシューに煮卵、ノリとほうれん草。
 ……日本にいた頃には超こってり系のラーメンが好きで、家系の系列店によく足を運んだものだけど。

 あの濃いスープとは全く似ていない、澄んだ茶色いスープを、まずはレンゲですくって一口。

 「わぁ、すごいあっさり」

 家系好きとしてはちょいと物足りない気もしなくもないが、なにせこの世界に生まれて初めてのラーメン。
 その感動が、スープの味をより引き立てる。
 実に美味しい。

 「お待ち、餡かけ焼きそばと中華丼だよ」
 お、レストとミルフィの分も来たね。

 「ほう、美味いな。……しかしシャリーは麺を食べるのが上手いな? どうやっているんだ、それは」

 あ、やっぱり。レストは麺を啜るスキルをお持ちでないらしい。
 麺を箸で手繰るように食べている。
 ……ちょっと食べづらそう。

 けど、味は良かったようで。
 口に入れてしまえば後は味わうだけと言わんばかりに咀嚼し、普段以上に口数が減った。

 ミルフィちゃんも、レンゲでご飯をすくう。
 「おいしー!」

 「くぅ、餃子は美味いがやっぱ飯がほしいぜ……」
 「はは、遅くなって悪いね、お待ちどう、炒飯だよ」
 「おおっ、ありがとうございます! いただきます!」

 こちらもレンゲを手に取り、ネギや卵と共に米を口いっぱいに頬張る。
 「う、美味い。何だろうこの味、醤油? 塩? だけじゃないのは分かるけど、これっていう候補が浮かばねぇ」

 「ちょっと味見して良い?」
 「……ならそっちもちょっとよこせ」

 「あー、これオイスターソースかな。あと鶏がら出汁。あとは具材のチャーシューがいい仕事してるわね。卵の塩加減もいいし、見事に米はパラッパラ。美味しいわ、これ」

 たかがチャーハン、されどチャーハン。
 ベースはシンプルな料理ながらアレンジは数多く存在する。
 作るのは簡単だけど、本当に美味しいチャーハンを作るのはなかなか難しいのに。

 「この店、大正解だったわね」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢、前世の記憶を駆使してダイエットする~自立しようと思っているのに気がついたら溺愛されてました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢エヴァンジェリンは、その直後に前世の記憶を思い出す。 かつてダイエットオタクだった記憶を頼りに伯爵領でダイエット。 ついでに魔法を極めて自立しちゃいます! 師匠の変人魔導師とケンカしたりイチャイチャしたりしながらのスローライフの筈がいろんなゴタゴタに巻き込まれたり。 痩せたからってよりを戻そうとする元婚約者から逃げるために偽装婚約してみたり。 波乱万丈な転生ライフです。 エブリスタにも掲載しています。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

追放ですか?それは残念です。最後までワインを作りたかったのですが。 ~新たな地でやり直します~

アールグレイ
ファンタジー
ワイン作りの統括責任者として、城内で勤めていたイラリアだったが、突然のクビ宣告を受けた。この恵まれた大地があれば、誰にでも出来る簡単な仕事だと酷評を受けてしまう。城を追われることになった彼女は、寂寞の思いを胸に新たな旅立ちを決意した。そんな彼女の後任は、まさかのクーラ。美貌だけでこの地位まで上り詰めた、ワイン作りの素人だ。 誰にでも出来る簡単な作業だと高を括っていたが、実のところ、イラリアは自らの研究成果を駆使して、とんでもない作業を行っていたのだ。 彼女が居なくなったことで、国は多大なる損害を被ることになりそうだ。 これは、お酒の神様に愛された女性と、彼女を取り巻く人物の群像劇。

処理中です...