41 / 125
第一章
移動販売、昼の部
しおりを挟む
昼近い時間、一度屋台を軽く片して飲食店街へと移動し、再び店を展開し、調理を始める。
すると早速仕事が一段落し、空きっ腹を抱えた労働者達が昼食を求めてぱらぱらと人が集まり始める。
……日本のオフィスと違って明確に何時何分から何時何分までと時間が決まっていない分、多少人はばらけるが、それだけ長い時間私達は稼げると言う事。
腹を空かせた男衆が、この肉を揚げるステキな匂いと音に惹かれないはずがない。
ついつい目が向く。
売っているのは揚げ物を串に刺した、正直男の小腹を満たすにも物足りない量の軽食。
だけど何とも美味そうな上に、だ。
「いらっしゃいませ~! 美味しいですよ~!」
呼び込みをしているウサ耳っ娘が、可愛い。
とくに娘や孫娘が居る年頃の男衆はその愛らしさにがっつり心を掴まれてしまい、ふらふらと屋台に引き寄せられてくる。
値段を見れば、酒一杯より安い。この程度の値段なら、もし不味くて失敗しても懐はそんなに痛まない。
そう考え、肉の多く刺さる串を注文し、手渡されたそれを早速パクつけば。
「美味い! 嘘だろ、この値段でこの味とか……」
「ソースの味が絶妙だな」
「なんだ、これ。葉っぱが挟まってるくせに塊肉を食うより美味いってどう言うことだよ!」
と、あっという間に人集りが出来る。
すると、昼食を食べ終わって店なら出てきた人々もまた、「何だ?」とばかりに寄ってくる。
既に昼食を腹に詰めていても、食べざかりの肉体労働者の胃は∞なようで、「串一本ならデザートみたいなモンだろ?」と列に並び、
「美味ぇ、何で俺は一本しか買わなかったんだ!もっと何本も買っときゃ良かった!」
と嘆く輩が出る始末。
腹にも懐にも余裕があるのに、時間の余裕が無くて泣く連中が続出した。
だから、
「夜は飲み屋街で店を出すんで、またよろしくお願いしますね?」
と声をかけたらとても素敵な笑顔で、
「分かった、夜には仲間を誘ってまた来るよ」
と言って去っていった。
当然売上は上々。
既に仕込み分のストックが切れかけ、慌てて追加のストックを作り足し、次の夜の部に向けて準備を進める。
「ねえ、やっぱりお留守番してないとダメ……?」
「うん。昼間は良い人でも、お酒飲んだら途端に暴れ者になる困った人なんかも居るからね。もしレストさんが居なければ、私達だけではそんな時間のそんな場所で店なんかやらないよ、いくら儲かる目算があってもね」
飲み屋が一軒だけなら、他にも屋台が出ているなら考えるけど、ここのは飲み屋だけで一区画の街を作ってるからね。
酔っぱらいも自然多くなるんだ。
「……分かった、お留守番してる」
少し不服そうにしつつも頷くミルフィの頭をかわりばんこに撫でて、私達は夜の部を乗り切る英気を養うのであった。
すると早速仕事が一段落し、空きっ腹を抱えた労働者達が昼食を求めてぱらぱらと人が集まり始める。
……日本のオフィスと違って明確に何時何分から何時何分までと時間が決まっていない分、多少人はばらけるが、それだけ長い時間私達は稼げると言う事。
腹を空かせた男衆が、この肉を揚げるステキな匂いと音に惹かれないはずがない。
ついつい目が向く。
売っているのは揚げ物を串に刺した、正直男の小腹を満たすにも物足りない量の軽食。
だけど何とも美味そうな上に、だ。
「いらっしゃいませ~! 美味しいですよ~!」
呼び込みをしているウサ耳っ娘が、可愛い。
とくに娘や孫娘が居る年頃の男衆はその愛らしさにがっつり心を掴まれてしまい、ふらふらと屋台に引き寄せられてくる。
値段を見れば、酒一杯より安い。この程度の値段なら、もし不味くて失敗しても懐はそんなに痛まない。
そう考え、肉の多く刺さる串を注文し、手渡されたそれを早速パクつけば。
「美味い! 嘘だろ、この値段でこの味とか……」
「ソースの味が絶妙だな」
「なんだ、これ。葉っぱが挟まってるくせに塊肉を食うより美味いってどう言うことだよ!」
と、あっという間に人集りが出来る。
すると、昼食を食べ終わって店なら出てきた人々もまた、「何だ?」とばかりに寄ってくる。
既に昼食を腹に詰めていても、食べざかりの肉体労働者の胃は∞なようで、「串一本ならデザートみたいなモンだろ?」と列に並び、
「美味ぇ、何で俺は一本しか買わなかったんだ!もっと何本も買っときゃ良かった!」
と嘆く輩が出る始末。
腹にも懐にも余裕があるのに、時間の余裕が無くて泣く連中が続出した。
だから、
「夜は飲み屋街で店を出すんで、またよろしくお願いしますね?」
と声をかけたらとても素敵な笑顔で、
「分かった、夜には仲間を誘ってまた来るよ」
と言って去っていった。
当然売上は上々。
既に仕込み分のストックが切れかけ、慌てて追加のストックを作り足し、次の夜の部に向けて準備を進める。
「ねえ、やっぱりお留守番してないとダメ……?」
「うん。昼間は良い人でも、お酒飲んだら途端に暴れ者になる困った人なんかも居るからね。もしレストさんが居なければ、私達だけではそんな時間のそんな場所で店なんかやらないよ、いくら儲かる目算があってもね」
飲み屋が一軒だけなら、他にも屋台が出ているなら考えるけど、ここのは飲み屋だけで一区画の街を作ってるからね。
酔っぱらいも自然多くなるんだ。
「……分かった、お留守番してる」
少し不服そうにしつつも頷くミルフィの頭をかわりばんこに撫でて、私達は夜の部を乗り切る英気を養うのであった。
113
お気に入りに追加
1,098
あなたにおすすめの小説
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる