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第一章

平和って……

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 「平和……だね」
 「ああ。平和、だな」
 そっと呟く私にロイスもそっと同意の言葉を口にする。

 今、ローテーションの順番でクロエの手綱を握るのはレスト。
 ミルフィはそのお膝でお昼寝中。
 とても気持ち良さそうに眠っていて、その寝顔を見るレストもご機嫌は上々らしいが……

 「良い事っちゃ良い事なんだろうけど、護衛らしい仕事、今のところないよね……」

 街を出て数日の旅路で、今の所レストの仕事は私達と同じくローテーションでクロエの手綱を握る事だけ。
 2人体制から3人体制になったお陰で休憩時間は増えた。
 だけど本当にそれだけ。

 ……なんて、思っていた事もありましたね!

 「れ、レストせ、先生、お願いします!」
 「ああ、これが仕事なのだから当然だ。が、その妙な呼び方は何なんだ……」
 「その、ちょっと小ずるくてちょっと偉い人が雇う用心棒的な人を呼ぶ呼び方かナー」
 時代劇の悪代官なんて言ってもレストには通じないからなぁ。ついノリで言っちゃったけどちょっと失敗だったかも。

 ちなみに敵は子連れのイノシシ。
 ウリボーちゃんは可愛く見えないこともないけど、親は……アレはだめだ。可愛くないなんてレベルじゃ無く、下手すりゃ狐より危険な輩だ、あれは。

 それにウリボーちゃんももうだいぶ大きい。
 顔は可愛くてもサイズ的にはそろそろ可愛くなくなる、というか攻撃力的にはもう可愛くない。

 だけど、流石Cランク冒険者。
 あっさり親の首をはね飛ばし、子ども達の行きの根を抜かりなく止めていく。

 お陰でたっぷり猪肉が手に入った。
 これは味噌で漬けといて後で焼くか野菜と一緒に炒めよう、そうしよう。

 とはいえ漬けるのに一日は最低必要だからね。
 今夜の夕飯は何にするかなー、と考えていたら。

 「ねぇ、ロイス。平和ってなんだっけ?」
 「なんだろうな……」

 今度は野生の水牛の群れに遭遇。
 あの牛さんのミルクがあればモッツァレラチーズが作れそうだけど、水牛のお肉って食べられるのかしら?
 それにあの牛、角が妙に禍々しいと言うか……

 え、魔獣?
 ……そうですか。

 「アレの肉は煮ると固くなるが、ステーキにすると柔らかくてうまいらしいが、味に少し癖があって、うまいタレで食うと極上の旨さだが、合わないタレで食うと食べられない事は無いが、罰ゲーム受けてる気分になる不味さだそうだ」

 おぅふ。
 つまり上手く料理しろと?
 私はあくまで商人で、そんなちゃんとした料理人じゃないよって言ったのに!

 まぁ、お肉大量ゲット出来たのはラッキーと……言って良い……のかなぁ?
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