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第一章
無くても困るがあり過ぎてもやっぱり困るもの
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この街の食材市場は、これ迄の露店マーケットの様な物ではなく、食材のみを扱うスーパーマーケットの様な場所だった。
肉のコーナー、魚のコーナー、青果のコーナー。
他にも茶葉のコーナーやスパイスのコーナーも、それぞれ専門の店員が対応している。
これまで食材の種類があまり豊富でない町ばかり巡って旅して来た私達の目には色とりどりのあらゆる食材が目に入り、文字通り目移りしてしまう。
肉は、鶏肉、豚肉、牛肉の他にジビエ肉、そして異世界らしく魔物の肉まで並んでいる。
魚はやはり鮮魚は殆ど無く、数少ないそれはそれ一匹で宝石付きのアクセサリーが買えそうな値段が付いている。
が、干物なんかの加工品は牛肉と同じ位の値段。
それらを見た後だと、新鮮な野菜の値段が随分安く見えるから不思議だ。
高い訳じゃないけど、決してお安くはないのに。
特に甘い果物には物によっては魚の干物より高い値段が付いている。
「すげーな、ここまで色々と揃ってるって、俺達の街の祭りの日にも見た事ねぇや!」
まぁ、値段を見なければね。
これだけあらゆる食材が揃う様は見ていて何となく楽しくなって来る気持ちは分からんでもない。
――あくまでも値札を見なければ、な。
勿論ここまで悪くない売上を叩き出しているので予算には少々余裕はあるけど、あくまでそれは駆け出しの平均レベルから見ればの話。
あんまり欲張って予算使い込んで、またこないだのうどんみたく失敗したらあっという間にヤバくなる。
そうなると買える食材も決まってくる……、そう思ったんだけど、値段で候補を絞っても尚、買えそうな食材は豊富にある。
食材が限られていれば自然と作れるメニューも絞られるのだが。
「……何を作れば良いかしらね」
これだけ選択肢が多いとなかなか決めかねた。
ぐるぐると市場の中を何度も巡る内、とある店にふと目が行った。
「……ん、まて、アレは……まさか……」
それは穀物を売る店。
目立つ場所に多く積まれているのは大半小麦だし、あわやひえなんかも少しばかり積んである。
その中の一つ。
白く輝く艶のある、前世では見慣れた――しかしこの世界では未だ一度も出会ったことの無い……
「ロイス!」
「へ!? うおっ、何だよぉ!」
それが目に入った瞬間、私の視界から他の雑多な食材は全て消え去る。
隣にいたロイスの腕を掴み、その店の前まで強制連行する。
「おじさん、それ! その袋の中身、よく見せてくれない!?」
そして勢いよく店員のおじさんに頼み込んだ。
「お、おお⁉ ……あ、これか? いや、そんな鼻息荒くせんでも見せてやるさ。むしろ買ってくれるなら大幅値引きしてやってもいいぜ。何せ珍しいからと仕入れたがちっとも売れやしねぇんでな」
何と。見るにこれはやっぱり……日本人のソウルフード。
「米……、ようやく見つけたわ……ふふふふふ」
隣でロイスがドン引きしているのも目に入らない位、その瞬間のシャリーは米に魅入られていた。
肉のコーナー、魚のコーナー、青果のコーナー。
他にも茶葉のコーナーやスパイスのコーナーも、それぞれ専門の店員が対応している。
これまで食材の種類があまり豊富でない町ばかり巡って旅して来た私達の目には色とりどりのあらゆる食材が目に入り、文字通り目移りしてしまう。
肉は、鶏肉、豚肉、牛肉の他にジビエ肉、そして異世界らしく魔物の肉まで並んでいる。
魚はやはり鮮魚は殆ど無く、数少ないそれはそれ一匹で宝石付きのアクセサリーが買えそうな値段が付いている。
が、干物なんかの加工品は牛肉と同じ位の値段。
それらを見た後だと、新鮮な野菜の値段が随分安く見えるから不思議だ。
高い訳じゃないけど、決してお安くはないのに。
特に甘い果物には物によっては魚の干物より高い値段が付いている。
「すげーな、ここまで色々と揃ってるって、俺達の街の祭りの日にも見た事ねぇや!」
まぁ、値段を見なければね。
これだけあらゆる食材が揃う様は見ていて何となく楽しくなって来る気持ちは分からんでもない。
――あくまでも値札を見なければ、な。
勿論ここまで悪くない売上を叩き出しているので予算には少々余裕はあるけど、あくまでそれは駆け出しの平均レベルから見ればの話。
あんまり欲張って予算使い込んで、またこないだのうどんみたく失敗したらあっという間にヤバくなる。
そうなると買える食材も決まってくる……、そう思ったんだけど、値段で候補を絞っても尚、買えそうな食材は豊富にある。
食材が限られていれば自然と作れるメニューも絞られるのだが。
「……何を作れば良いかしらね」
これだけ選択肢が多いとなかなか決めかねた。
ぐるぐると市場の中を何度も巡る内、とある店にふと目が行った。
「……ん、まて、アレは……まさか……」
それは穀物を売る店。
目立つ場所に多く積まれているのは大半小麦だし、あわやひえなんかも少しばかり積んである。
その中の一つ。
白く輝く艶のある、前世では見慣れた――しかしこの世界では未だ一度も出会ったことの無い……
「ロイス!」
「へ!? うおっ、何だよぉ!」
それが目に入った瞬間、私の視界から他の雑多な食材は全て消え去る。
隣にいたロイスの腕を掴み、その店の前まで強制連行する。
「おじさん、それ! その袋の中身、よく見せてくれない!?」
そして勢いよく店員のおじさんに頼み込んだ。
「お、おお⁉ ……あ、これか? いや、そんな鼻息荒くせんでも見せてやるさ。むしろ買ってくれるなら大幅値引きしてやってもいいぜ。何せ珍しいからと仕入れたがちっとも売れやしねぇんでな」
何と。見るにこれはやっぱり……日本人のソウルフード。
「米……、ようやく見つけたわ……ふふふふふ」
隣でロイスがドン引きしているのも目に入らない位、その瞬間のシャリーは米に魅入られていた。
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