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第一章

ジャンクな香りは最強です!

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 時は、昼前。

 ランチタイムを前に、私達は馬車を屋台へと展開していく。

 車輪に車止めを噛ませ、四隅の足を立てて車をしっかり固定。四方の壁を下ろして足回りを目隠しし、「お好み焼き」とこの世界と文字で書いた簡易の看板を貼り、椅子を並べてテント屋根を伸ばす。

 キッチンは鉄板をメインに展開していく。

 鉄板の手前に具材のボウルと、調味料、脂を並べ、準備は完了。

 「準備は良い?」
 「ああ、いつでも行けるぜ」

 「それじゃ……」
 「ああ、初の営業開始だ!」

 「いらっしゃいませ~、お好み焼きいかがっスか~!」

 ロイスが声を上げるけど。
 今日のメニューなら、どんなに声を張り上げるより効果的な客寄せ戦略は。

 ――ジュウウウウ……

 まずは鉄板に油を敷くと、早速いい音を響かせる。

 金属のコテを二つ使ってサッサと油を伸ばし、生地を鉄板に落とす。
 一つ、二つ、三つ、四つ。
 広がった生地を綺麗な円に整え、五分待つ間にもう四つ分の生地を鉄板に落とし、形を整え。

 先に置いた生地をひっくり返し、更に五分。
 その間に更にもう四つ。
 十二の生地で鉄板の上が満員御礼となる。

 先の二列をひっくり返す。

 さあ、最初の一列、ここからが勝負。

 五分待って。
 お好みソースをたっぷり焼き上がった生地に塗りたくれば。
 たちまち香ばしく、食欲をそそる香りが辺りを漂い始める。

 時間を置かず、青のりと鰹節をかけると、潮の香りがソースの香りを更に引き立てる。

 最後のダメ押しにマヨネーズをかけて。

 この香りを嗅いで、全く興味を示さず屋台を通り過ぎれる人はまず居るまい……
 ぱらぱらと人通りの多くなって来た時間帯、ふと足を止めて行く人も増えてきた。

 そこをロイスが寄って行って……

 「一口、味見していかれません? 味見は無料ですよ!」

 美味しそうな匂いがしていても、未知の食べ物にお金を出すのは少し躊躇われるかもしれない。
 そう思ったからこその、日本のスーパーでお馴染み、一口試食作戦を取り入れてみた。

 お好みソースにマヨネーズと言う中毒性のある味を、青のりが引き締める。
 一口食べてしまったら、ついついもっと食べたくなる、それがジャンクフード。

 ほら、残りの八枚も焼き上がった。簡易の使い捨ての皿に焼き上がったお好み焼きを盛り付ける。
 ……贅沢を言えば、紅生姜も欲しかったんだけど。
 手に入らなかったからなぁ。

 え、何でお好み焼きソースが手に入るのに紅生姜が手に入らないかって?

 それは、私のスキルに理由がある。

 私のスキル、それは――

 「調味料生成」

 どんな調味料でも無限に、原料無しに好きなだけ出せる。
 これこそが、私達が屋台飯で行商へと旅立つ事にした最大の理由、なんだ。
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