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第一章

Youは広島派? それとも大阪派?

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 「……無いな」
 「そうね……」

 国境の街まではまだ距離のある、旅路の途中で立ち寄った町の市場で、食材を見繕おうとロイスと二人端から端まで、まずは歩いてみたのだけれど。

 「小麦の出来は良いのよね……、小麦は」
 「他にあるのは……葉物野菜と、鶏の卵くらいか」

 「野菜の出来も悪くない……、いえむしろ良い方なのに、種類が極端に少ないわ……」

 キャベツと小麦、その小麦から加工した粉やパンは豊富なのに、肉の類は元々高いものとはいえそれでもこれはかなり良い値段がついていた。

 「小麦とキャベツ、それと卵に……ん、これは?」

 とある露天の店先に並んだピンク色。

 「それかい? それはこの近くの小川で捕れる川海老さね。けど、殻ばかりで食べるところも殆どないからせいぜい家畜の餌になるくらいさ。ニワトリに食べさせると良いって聞くがね」

 まるで桜エビの様な小さなエビがザルで量り売りにされている。

 小麦にキャベツ、そして桜エビ。
 それだけあれば、基本のアレは作れる。

 贅沢を言えば豚肉、もっと言えば海鮮とか色々と欲しいけど、無いものは仕方ない。
 専門店の味は出なくとも、ジャンクで食べごたえのあるアレなら。

 ……広島派の方にはゴメンナサイだけど。

 「決めた、お好み焼き屋台にしよっ!」

 そうと決まれば、お好み焼きのレシピは割と簡単だ。

 キャベツを刻み、小麦粉を水で溶いて卵と混ぜる。
 ついでに揚げ玉を作り、エビを軽く素揚げする。

 それを空気をたっぷり含ませ混ぜ合わせたら、熱した鉄板に投下し、まず5分、ひっくり返してまた5分、最後にもう一度ひっくり返してさらに5分。

 お好みソースを塗り塗り、最後に鰹節と青のり、マヨネーズをかけて。

 「ロイス、味見してみて」

 「お? おお? なんか……美味い? すごく美味いって訳じゃないんだけどついつい食べたくなるっつーか……。何より匂いがたまらん! 無性に腹が減って無視できない、憎らしいくらい恐ろしい食いモンだな、これ……」

 うんうん、ジャンクフードってそういうもんだよね。
 夜店の屋台なんて、買う気なかったはずでもついついつられて引き寄せられるよね?

 「それじゃ、屋台初出店はこれで決まりだね?」
 「ああ。……エールを売る店の側で店を出そう。これ、絶対に喉乾くだろ? 早速ギルドに出店許可証貰いに行こうぜ!」
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