9 / 65
第二章 異種族パーティー
肆話 魔族パーティーと
しおりを挟む
基本の読み書きは可能。その事実は私を少しだけ不安から救ってくれた。
だけど、これで一つ目の質問は使ってしまったから今日はあと一つだけ。さぁ何を聞くべきか?
……ああ、そういえば。
「さっき名字がどうとか、緋川兄妹が良い処の人とか言っていたけど、この世界ってもしかして身分制度とかある? 私さっきからそこまで丁寧に話し方はしてないんだけど、街に着いた途端に不敬罪とかで捕まったりとかしない?」
「……確かにこの世界には王と貴族がいて、貴族にも家格という差があります。……が、少なくとも私達は皆、その家や身分を捨てた身です。そう固くならなくても大丈夫ですよ。ただ……この辺りの田舎町ならまだしも都市に出るなら気を付けた方がいいですね。詳しくは追々お話ししますよ」
にこりと優菜ちゃんに微笑まれた。……可愛い。
「……簡単に言うと、だ。この世界には人間と、人間とは少し違う生き物が居る。見て分かりやすいのは蒼月だが……それを総じて魔族と呼ぶ。この世界は魔族の王候貴族が人間を治めている。私も優菜も蒼月も、そういう家の生まれではあるが、既に家は出ている」
……現代の日本に制度としての身分はないけれど、金持ちと貧乏人の間には確かに格差はあって。だから、何か事情がありそうだと気づいた私はそれについてはあえて追求はしなかった。
だけど、つまり見た目分かりやすいのは蒼月さんだけじゃなく、皆人外だと。……あの魔物を倒した時に見せたアレらはそういう事なんだろう。
「では、今日の分の質問は終わりだ。……寝るぞ」
火の始末をしてしまうと、小屋はあっという間に闇に閉ざされた。そして数分もすると、すうすうと規則正しい寝息が四人分聞こえてくる。
枕代わりの鞄に布団なしの木板の床にかけるものもなく。
疲れてはいたからうとうととはするけれど、あっという間に体が痛くなり、とてもではないが熟睡には程遠い。何も見えない闇の中で、手に入れたばかりの情報がぐるぐると回り続ける。
今後どうなるのか。自分はどうしたいのか。
未だ明確な選択肢の無い今は考えても仕方ないと理解していても不安は募る。あまりにも異世界に来たのが突然すぎて、また突然戻るんじゃないかって気もするんだけど、いざ戻ったところで、あの落雷の直後に戻れるならまだしも、そうでないならどうしたら良いのか。もしも居場所が無くなっていたら……?
「私……帰りたいのかな?」
正直元の世界に戻っても生活に苦労するのは変わらない。……文明の利器分は楽だろうけど。
私は私がとうしたいのか分からないまま夜を明かした。
だけど、これで一つ目の質問は使ってしまったから今日はあと一つだけ。さぁ何を聞くべきか?
……ああ、そういえば。
「さっき名字がどうとか、緋川兄妹が良い処の人とか言っていたけど、この世界ってもしかして身分制度とかある? 私さっきからそこまで丁寧に話し方はしてないんだけど、街に着いた途端に不敬罪とかで捕まったりとかしない?」
「……確かにこの世界には王と貴族がいて、貴族にも家格という差があります。……が、少なくとも私達は皆、その家や身分を捨てた身です。そう固くならなくても大丈夫ですよ。ただ……この辺りの田舎町ならまだしも都市に出るなら気を付けた方がいいですね。詳しくは追々お話ししますよ」
にこりと優菜ちゃんに微笑まれた。……可愛い。
「……簡単に言うと、だ。この世界には人間と、人間とは少し違う生き物が居る。見て分かりやすいのは蒼月だが……それを総じて魔族と呼ぶ。この世界は魔族の王候貴族が人間を治めている。私も優菜も蒼月も、そういう家の生まれではあるが、既に家は出ている」
……現代の日本に制度としての身分はないけれど、金持ちと貧乏人の間には確かに格差はあって。だから、何か事情がありそうだと気づいた私はそれについてはあえて追求はしなかった。
だけど、つまり見た目分かりやすいのは蒼月さんだけじゃなく、皆人外だと。……あの魔物を倒した時に見せたアレらはそういう事なんだろう。
「では、今日の分の質問は終わりだ。……寝るぞ」
火の始末をしてしまうと、小屋はあっという間に闇に閉ざされた。そして数分もすると、すうすうと規則正しい寝息が四人分聞こえてくる。
枕代わりの鞄に布団なしの木板の床にかけるものもなく。
疲れてはいたからうとうととはするけれど、あっという間に体が痛くなり、とてもではないが熟睡には程遠い。何も見えない闇の中で、手に入れたばかりの情報がぐるぐると回り続ける。
今後どうなるのか。自分はどうしたいのか。
未だ明確な選択肢の無い今は考えても仕方ないと理解していても不安は募る。あまりにも異世界に来たのが突然すぎて、また突然戻るんじゃないかって気もするんだけど、いざ戻ったところで、あの落雷の直後に戻れるならまだしも、そうでないならどうしたら良いのか。もしも居場所が無くなっていたら……?
「私……帰りたいのかな?」
正直元の世界に戻っても生活に苦労するのは変わらない。……文明の利器分は楽だろうけど。
私は私がとうしたいのか分からないまま夜を明かした。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
和と妖怪と異世界転移
れーずん
ファンタジー
花宮美月の幼馴染みである和泉桜子は、一年前に行方不明になっていた。
彼女の帰りを今も待ち続けている美月。
そんなとき、神社の前で狐の耳を生やした不思議な少女に出会う。
セーラー服を身にまとった少女は美月に意味深な忠告をすると、鳥居の向こうへ消えていった。
少女を追って鳥居をくぐった美月だったが、気が付くとそこは深い森の奥であり、おまけに奇妙な怪物達も現れて――。
【追記】
後日、紅希と葵の過去話を書きたいなと思っておりますので、もし興味ある方いらっしゃったらまた覗いてやってくれると嬉しいです。
もふもふ好きの異世界召喚士
海月 結城
ファンタジー
猫や犬。もふもふの獣が好きな17歳の少年。そんな彼が猫が轢かれそうになった所を身を呈して助けたが、助けた彼が轢かれて死んでしまった。そして、目が醒めるとそこは何もない真っ白な空間だった。
楽しくなった日常で〈私はのんびり出来たらそれでいい!〉
ミューシャル
ファンタジー
退屈な日常が一変、車に轢かれたと思ったらゲームの世界に。
生産や、料理、戦い、いろいろ楽しいことをのんびりしたい女の子の話。
………の予定。
見切り発車故にどこに向かっているのかよく分からなくなります。
気まぐれ更新。(忘れてる訳じゃないんです)
気が向いた時に書きます。
語彙不足です。
たまに訳わかんないこと言い出すかもです。
こんなんでも許せる人向けです。
R15は保険です。
語彙力崩壊中です
お手柔らかにお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる