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第二章 異種族パーティー

壱話 もしかして……?

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    遊園地なんて、中学の卒業旅行――勿論友達同士で行くようなのじゃなくて学年単位でいく学校行事の旅行――で行ったきりだけど。
    初めての遊園地で、当然乗り慣れているはずもない絶叫マシンに面白半分に乗せられたトラウマが甦る。
    叫びたいのに、声が喉に詰まったようで声が上手く出せない。
    エレベーターに乗った時のあのひゅっと腹に来る嫌な感じ、あれをもっと増幅させたような感覚。
    その高さは……多分三階より上の階から跳び降りた風にすら感じられて、ほんの数秒の事がやけに長く感じた。と、言うのに、だ。
    直後、私よりは頑丈で健康そうだけど、それでも体つきは普通の女の子に見える優菜と呼ばれた少女が躊躇いなく身軽に跳び降り、私たちのすぐ隣にスタッと静かに綺麗に着地して見せてくれて。
    「華乃、終わったぞ!」
     と良い笑顔でこちらへ歩いてくるガタイの良いお兄さんの頭には……獣耳、尻にはふさふさの尻尾があって。
    「おやおや、これだけ傷だらけじゃぁねぇ。血の匂いに惹かれてすぐ新手の魔物がやって来るよ。草治、優菜、どうする?」
    「……蒼月、この近くに人里は?」
    「町や村はねぇが、冬の間の狩りに使う山小屋があったはずだ。そこまでなら半刻もかからねぇと思うぜ?」
    「――怪我の治療はどうでもいいが、この娘には聞きたい事もある。一旦そこへ避難しよう」
    ……何だろう。私を無視して話が進んでいく。
   「ちょ、待って!    あの動物から助けてくれた事には感謝するけど、私、早く帰らなきゃ……門限が……!」
    「帰る?    そんな格好でこんな山奥からか?    馬鹿を言え。一番近い人里まで我々の足ですらまだ半日はかかるのに、その足の様子じゃいくらも行かない内に夜になって魔物に食われるのがオチだろう」
    ……キレイな顔したお兄さんに鼻で笑われた。
    けど、それより待て。このお兄さん今何と言った?
    人里まで半日以上かかる山奥って……。私が居たはずの神社からそんな山の奥まで来るには車でも数時間はかかるはず。学校帰りに寄ったのだから、あの時既に四時過ぎ位だったはず。
    ちょっと待って、今はいつだ?
    それにこのお兄さん、魔物とか中二臭いワードをぶっ込んでくれませんでした?
    若いけど、パッと見もう大人に見える顔立ちなのに。イケメンなだけに中二発言は痛い……が……。
    そろそろと背後に倒れる先程の猪モドキの死体に目をやる。
     本物の猪なんて、見た事ないけど、いくらなんでもこんなデカい猪は少なくとも日本には居ない……と、思う。あの異様な雰囲気も。魔物、と言われたら納得してしまいそうだし、蒼月と呼ばれたこの大男のコスプレも……。
    何だか嫌な予感がする。いや、もうこの状態なんだしそれはもうほぼ確信に近い。
   「まさか……異世界、なの?」
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