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元平民の悪役令嬢、世界を救う

決戦前夜

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    「……最終決戦の前夜にパーティーメンバーと交流、か。これもある意味ゲーム的お約束だよね」
   馬車に繋いだ空間から空間の屋敷へ戻り、一時の休息を得た私はお茶を楽しみながらつい頭に過った感想を口に出していた。
    一緒にお茶を楽しんでいたレイフレッドがこちらに視線を向ける。
   「それは、君やカイルが前世とやらで楽しんでいたゲームの事?」
   「いやいや、アレは色々詰め込みすぎていたとはいえ、それでもメインは乙女ゲームのハズだったからね?    じゃなくて、RPG系ゲームのお約束的な?」
    大抵ラスボス戦というのはなかなか困難なものだからね。つーか簡単に倒せたらゲーム的には面白くないし。
    けど、それはプレイヤーの感想であり、それがゲームである以上は仮に負けてパーティーが全滅したとしても、最後のセーブポイントまで戻って再挑戦すればいいだけだ。……仮にデスペナルティが課せられたとしても取り返せば良いんだし。
    でも、現実に生きるパーティーメンバーとしてはそんな事情など知るよしもなく、決死の覚悟で臨む戦いなのだ。
    うっかり「この戦いが終わったら○○するんだ……」等と口にしておかしなフラグを立てないように、後悔しないように、パーティーメンバーとの交流をする。
   「明日の為にも……今日は遠慮無く血を吸って良いよ」
    空になったカップを片して彼をベッドに誘い、部屋着の襟元をはだけて首筋を晒す。
    「そういえば、ここでのも久しぶりだったな。いつ以来だっけ?    近頃は完全に二人きりになるのにも苦労してるからなぁ。……こんな貴重な機会、次はいつあるか分かんないし。本当に遠慮しないから」
    「……望むところよ」
    宣言通り、首筋に牙が刺さると同時に快楽の波に飲まれる。
    かつて身体がまだ幼かった頃はこの感覚に溺れるばかりで苦しくもあったけれど、今は――
    「あっ……!」
    胸と下腹部に触れる熱が、もどかしさを祓う。
    だけど快楽はより大きくなって押し寄せてきて、びしょ濡れの下腹部にレイフレッドがするりと入ってくる。
    夫婦になって以来、これはそんなに珍しいパターンでは無くなったけど、今日のは本当に遠慮無くがっつかれていて、これでもかと快楽に翻弄される。
    ……これから討伐しに行く邪王に同情する気持ちはあるけど、私はこの幸福を守るために戦う。
    神様の見た未来のなかではレイフレッドが辿るかもしれなかった運命を背負わされてしまった邪王。
    せめて、可能な限り苦しませること無く葬送おくれたら良い。
     そう願って、私達は眠りについたのだった。
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