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魔王対策

試運転

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    この領地の神館長とは長い付き合いになる。
    私達がこの領地を正式に賜った際に赴任してきた新人神官だった彼は人間だった。
    成人してから教会で三年教育を受け、その後研修を受けて一人前の神官として一人で仕事が出来る様になるまで十分年かかると言うことで、この領地に来たとき彼は既に三十代だった。あれから約二十数年。
    日本であればそろそろ赤いちゃんちゃんこを用意すべき歳の好好爺だ。
    子供達の鑑定式でもお世話になったし、話を通すこと自体は難しくはない。
    ――ただ、どこまでエルシーの本部に話が流れるかは分からない。そこはいち国主が口出し出来ない事と国際法にあるからだ。
    実験の日時の確保は簡単だけど、情報の隠匿に関しては完全自己責任制となる。
    だから当日は、細心の注意を払って魔道具を教会に運び入れた。
    勿論受信機は既に神界へ送り届けてある。
    粛々と神の像が飾られた舞台の真上の天井にそれをぶら下げる。
    「ほう、これは綺麗なものじゃのう」
     魔道具の外観をこの神官は気に入ったらしい。
     だけどこれは魔道具。その物を見て終わるだけの飾りではない。
     魔道具を稼働させると、オルゴール調で曲が流れ始め、さらに何もない中空からキラキラと光の粒が落ちてくる。
    「なんと!    これはまた神秘的な光景じゃ!」
     だけどあの娘が開発した魔道具がこの程度で終わるはずがない。
     プロジェクションマッピングの様に、祭壇に映像を写し出した。
     神話を模した絵本のようなアニメーションを、神官はいたく感激しながら眺めていた。
     ……そのどれもこれもが偽装用魔道具とも知らずに。 
   「これは素晴らしい魔道具です!    これが実用化された際には、他の教会に自慢してやりますよ!」
    とはしゃぐ程度には喜んでいたけれど。
   「今日はありがとうございました。すぐに片付けますので」
    「いえいえ、私も楽しませていただきましたよ」
     と、先に挨拶を済ませて神官たちを部屋から追い出した。
    そして、片付けを職人に任せ、私とカイル、そしてレイフレッドが祭壇に向かって祈りを捧げた。
    ――本命の魔道具の効果を、神々にジャッジして貰う為に。
    「よう、アンリ以外は久し振りだな」
    いつかの空間に、また属性神が降臨する。
    「アンリとは昨日会ったからのう」
    「あの受信機は間違いなく神界に、それも浄化効率が一番良いエリアにしっかり設置して守らせてるぜ!」
    「……それで、効果の程はいかがでしたか?」
    「今回は実験の時間が短かったからな。効率的な話はまだ分からないが、地上の邪気は間違いなく神界に届き、一時的にこの教会周辺の邪気の濃度は薄れている。成功か失敗かで言えば……成功だろうな」
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