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国王のお仕事
船旅の始まり
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「ああ、ようやく乗れた……」
――朝早くに整理券を配り始めたのに、私達が連絡船に乗れたのはお昼どころかお茶をいただいた後だった。
連絡船の中は、以前マルクニアを旅した時に乗った船よりかなり綺麗だった。正直本船に乗らなくてもこのままで良い気がしてくるくらいに。
だけどまぁ……そうもいかず。数分で本船に到着した。連絡船と本船の間に橋が渡され、それを伝って本船に乗り込む。
……それにしても。
「港で見ても大きな船だと思ったけれど、こうして間近に見るとますます大きいわね」
このゼロ距離からじゃ船体のごく一部しか見えない。船の横っ腹に開いた戸を潜ると、そこはまるで……
「……これ、ただでさえでかい船なのに、更に空間拡張魔法を使っているわね」
神々の像がお出迎えしてくれるエントランスホールは、港の広場より広そうな勢いだった。
ホールには今の船で来た国の要人達がそれぞれに集って固まっていた。
そして、私達が入室すると後ろの戸がゆっくりと閉まり橋が連絡船へと戻されていく。
同時にホールの扉が開き、フロントが見えた。
「――ではまずお部屋にご案内させていただきます」
そこには 国の数と同じ人数の使用人が頭を下げて待っていた。
扉を潜ると、天窓のある高い天井が特徴的なフロントホールがあり、それぞれの案内人が、別々のエレベーターへと客人を導いた。
……そう。エレベーターだ。
ちなみに我が商会はリクスミー大陸ではかなりのシェアを誇るようになったけれど、他大陸とはいっさいの取引を行っていない。
あちこちキラキラしているのは金?
だけど、嫌みなくただ美しい装飾としてある様は実に芸術的で。
「……これをカレンあたりが見たら歯噛みして悔しがりそうですね」
「そうね。カレンの前にまず私が悔しくてたまらないんだもの」
――そして、エレベーターを降りると。
「え、何、何で乗り物の中で乗り物に乗るの?」
そこには遊園地のゴーカートの豪華版みたいな小さな――でもここにいる全員が乗れる位には大きい車が鎮座していた。
……ゴーカートとはいえ自動車だ。
あれ? エルシー神国ってこんな技術国なの?
色々考えながら車に乗り込み、案内人の運転で廊下を進む。
廊下はこのゴーカートがすれ違ってもまだもう一台分くらいの余裕がある程に広い。
廊下の片側の壁はオーシャンビューの窓とテラス。反対側の壁の所々に扉がある。
車で数分走っただろうか、ようやく一つの扉の前で車は止まった。
「こちらが貴殿方のお部屋になります」
案内人が、頭を下げつつ扉の鍵を開けた。
「さあ、どうぞ――」
――朝早くに整理券を配り始めたのに、私達が連絡船に乗れたのはお昼どころかお茶をいただいた後だった。
連絡船の中は、以前マルクニアを旅した時に乗った船よりかなり綺麗だった。正直本船に乗らなくてもこのままで良い気がしてくるくらいに。
だけどまぁ……そうもいかず。数分で本船に到着した。連絡船と本船の間に橋が渡され、それを伝って本船に乗り込む。
……それにしても。
「港で見ても大きな船だと思ったけれど、こうして間近に見るとますます大きいわね」
このゼロ距離からじゃ船体のごく一部しか見えない。船の横っ腹に開いた戸を潜ると、そこはまるで……
「……これ、ただでさえでかい船なのに、更に空間拡張魔法を使っているわね」
神々の像がお出迎えしてくれるエントランスホールは、港の広場より広そうな勢いだった。
ホールには今の船で来た国の要人達がそれぞれに集って固まっていた。
そして、私達が入室すると後ろの戸がゆっくりと閉まり橋が連絡船へと戻されていく。
同時にホールの扉が開き、フロントが見えた。
「――ではまずお部屋にご案内させていただきます」
そこには 国の数と同じ人数の使用人が頭を下げて待っていた。
扉を潜ると、天窓のある高い天井が特徴的なフロントホールがあり、それぞれの案内人が、別々のエレベーターへと客人を導いた。
……そう。エレベーターだ。
ちなみに我が商会はリクスミー大陸ではかなりのシェアを誇るようになったけれど、他大陸とはいっさいの取引を行っていない。
あちこちキラキラしているのは金?
だけど、嫌みなくただ美しい装飾としてある様は実に芸術的で。
「……これをカレンあたりが見たら歯噛みして悔しがりそうですね」
「そうね。カレンの前にまず私が悔しくてたまらないんだもの」
――そして、エレベーターを降りると。
「え、何、何で乗り物の中で乗り物に乗るの?」
そこには遊園地のゴーカートの豪華版みたいな小さな――でもここにいる全員が乗れる位には大きい車が鎮座していた。
……ゴーカートとはいえ自動車だ。
あれ? エルシー神国ってこんな技術国なの?
色々考えながら車に乗り込み、案内人の運転で廊下を進む。
廊下はこのゴーカートがすれ違ってもまだもう一台分くらいの余裕がある程に広い。
廊下の片側の壁はオーシャンビューの窓とテラス。反対側の壁の所々に扉がある。
車で数分走っただろうか、ようやく一つの扉の前で車は止まった。
「こちらが貴殿方のお部屋になります」
案内人が、頭を下げつつ扉の鍵を開けた。
「さあ、どうぞ――」
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