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国王のお仕事

昔話

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    「……レイ、そろそろ行こうか?」
    昼の鐘の音が途切れ、静かになった頃に私はレイフレッドを促し、シリカが言っていた食堂へと二人で顔を出した。
    ……以前両陛下と食事をした貴賓用の食堂ではなく、かといって下級兵士用の大食堂でもなく。仕官用の食堂に、文官7、武官1、その他2位の割合でヒトが居た。
    私達の入室に気付いた彼等は揃って目を丸くした。
   「おお、アンタらがロイドとエリーの息子とその嫁か!」
    「へえ、よく見るとエリーの面影があるなぁ」
    そして一気に騒がしくなった。
    「嫁さんも……人間にしちゃ美人じゃんか」
     ……ああ、うん、吸血鬼って人間より美形率が半端なく高いからな。その言い分も分からんではないが、面と向かって言ってくれるなよ?
    私は少しばかり不満に思った。……が。
    「ぶっ、あはははは!」
    突然部屋に爆笑が広がった。何かと思えば……
   「あはっ、あはははは、見た目はロイドとは似ても似つかねぇと思ってたが……、その表情、ロイドそっくりだわ!    流石ロイドの息子、愛妻家なんだなぁ」
    レイフレッドがもろに表情に出して不機嫌になったらしく、その顔を見た彼らが笑っているのだ。
   「俺達が嫁さんをからかうと、アイツはいつもそんな表情して俺らに釘刺してたよなぁ、あーあ、懐かしいぜ」
    それから暫く世間話を交わす。
   「いや、ロイドはなぁ。奴の爺さんとは違って穏健派だったからなぁ。……あの爺さんも、そう悪い奴って訳じゃなかったんだぜ、少なくともロイドが死んじまうまでは」
   「ああ。頑固一徹で厳しいヒトではあったし、伝統とかを大事にしたがるヒトでもあったけどな……」
   「今回の件はもちろん爺さんの言い分が滅茶苦茶だったんだけどよ、あの人も息子を失った悲しみと、当主のプレッシャー的なモンに押し潰されちまったのかもな」
    食事も済み、食後のお茶を楽しむ頃にはしんみりとした雰囲気が部屋を満たしていた。
    「レイフレッド、お前はしっかり嫁さん守って寿命尽きるまで生きろよな」
   「ははっ、頼むぜ嫁さん!」
    私、これでも最近女王になったのだけど。
    この部屋では終始レイフレッドの妻として扱われ続けた。
    「――おっと、そろそろ時間だな。仕事に戻らにゃだわ」
   「うぉ、マジか。やべっ、上に起こられるわ。んじゃな、レイフレッド」
   「いつでも来いや。時間が合えばまたいつでも話してやるからよ」
    と、食堂に集っていた面子がドヤドヤと部屋の外へ出て仕事に戻っていく。
    「……はい。今日はありがとうございました」
    レイフレッドの表情は、少しだけ和らいでいた。
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