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領主一族のお仕事

イアンとカレンの結婚式

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    カレンの結婚はこうして決まった。
    それを聞いて慌てたのがイアンである。
   「お願いします!    一生大事にしますから、娘さんを俺に下さい!」
    と、店表で土下座して、数発ぶん殴られてようやく結婚を許して貰ったイアン。
    ……その夜は嬉しさのあまりに城で飲み明かし、翌朝は二日酔いでヘロヘロだった事は家族のよしみで無かった事にされている。
    そんなわけで、イアンとカレンの結婚式は同時開催される事になった。
    今回は私達の時と同様に二日に分けて貴族と平民のパーティーを分ける次第となった。
    そして今回は二組同時に挙げるので、パーティーの規模としては私達の時より大きい。
    皇帝は来ないけれど、ユリウスだけでなくマティスも来た。……陛下は来たがったけど予定が合わずに断念したそうだ。
   「随分と羨ましがられてしまったよ」
   そして実家の面々も来た。
   ……お祖父様――子供達から見たら曾祖父――は、この数年で一気に衰えて車椅子生活になっていた。
    だけど頭はまだまだ元気で、ひ孫の門出に喜んでいた。
    私達と子供達は兄弟に見えるけれど、私と私の弟とは親子に見える程に歳が違って見えた。
    ……両親はまだ元気だけど、お祖父様を見送る日は近いかもしれない。
    式をして、パレードをして夜会――。 
    その基本の流れは変わらず、カイルを残して姉兄達は皆巣立って行った。
    仕事場こそ城や領地内だし、頻繁に行き来もあるけれど、彼らは自分達の家を持って独立した。
    夜の城が少しだけ静かになった、そんな頃……。

    「見~つけた」
    ニヤリと笑う一人の男が居た。
    ここはドルトムント王国の外れ。……王都の外れ、ではなく王国の外れにある領地の一つだ。
    その領都に建つ一件の家の地下で、その男は不気味に笑い続ける。
   「やっと見つけたよ、面白そうなネタ」
    机に本や資料の山を築きつつ、そこから抜粋した内容を纏めて、新たな資料を作り、製本していく。
   「これを見たら、ここの領主様はどう動くんだろうね……?」
    他に誰も居ない静かすぎる部屋で、男は楽しそうに作業に明け暮れる。
    まだ見ぬ勝利の日を求めて。……あの負けを帳消しにするような素晴らしい勝ちを得るべく。彼は進む。
   「よしっ、出来た!」
    さて、これをどうやって彼に見て貰おうか?
    勿論当たり前に持っていったところでポイされるのがオチだ。
    だから策を巡らす。
    ほの暗く光る瞳が、古城を見つめる。
    そこに住まう者を思い浮かべて。
   「さぁ、勝負を始めようか……?」
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