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領主一族のお仕事

フリードのお仕事

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    双子の弟、フリード。
    彼もまた剣と魔法を使うけれど、兄のイアン同様に義兄や姉には劣る。……だけど執務能力でも兄に若干負ける。
     決して不出来ではないけれど、何となく中途半端な立ち位置に居るのがフリードだった。
    だから、彼は街造りに注力する事にした。
    道を作り、水路を作り、鉄道を作り、防壁を作る。そしてそれを管理し必要に応じて補修する。
    また流通と通信についての管理も行う部署を立ち上げた。……が、責任者には事務所り能力の高い人物を据えて、自分は現場監督に就任した。
   「ふふふ、これならイアンみたく現場に出たいのに出られなくて事務処理に追われるなんて事にはならねぇだろ」
    と得意気に言う。
    そして、実際幾つもの現場を見て回るのに駆け回っていた。
   「ん?    俺のパートナー?    とっくに決まってるよ。両家の顔合わせ的なのをいつやるかってアイツの両親と話し合ってる最中でさ」
    そんな中で彼はあっけらかんと言った。
    「ちょ、その前に彼女をちゃんと紹介なさい!」
    慌てて会わせて貰ったのは、獣人族の女の子だった。……ハーフではあるけど、ゴリラの獣人の女の子だった。
    ゴリラみたいな女の子、ではなく、ゴリラのハーフ獣人の女の子である。筋骨粒々で立派な体格をしておられる。顔もちょっと強面だ。
     私達は種族に対する偏見はほぼ無い。
     ……だけど、これにはレイフレッドも表情を取り繕っては居るが動揺しているのが分かる。私もクラスメイトとして紹介されたならニコニコと何も思わずお迎えしただろうけれど、息子の嫁候補となると少し表情が引きつるのを自覚した。
    何せ背丈も横幅もフリードよりも大きいのだ。
    だけどフリードはニコニコして言う。
   「彼女は土方の職人さん達とも仲が良くて、すごく気が利くんだ。俺と一緒に現場を走り回ってくれて、その体力も気力もある。俺が背中を預けられるのは彼女しかいないからさ」
    ……うわぁお。息子にのろけられたぞ。
   「分かった。兄弟の順は逆になるけど……まああんた達は双子だしね。イアンにはカレンには負けないよう頑張って貰うとして……。取り敢えず貴女の親御さんにお許しを得て、式を挙げましょう」
   「はい、よろしくお願い致します!」
    おや、ちゃんと礼儀正しい良い娘さんじゃん? 
    ――だろ?
    得意気にドヤ顔する息子の額を指パッチンで弾いて私達は席を立った。
    後に会った彼女のご両親も良い方だったし、これなら大丈夫だろう。
    そして、フリードは一日がかりで式を挙げ、それからの大半の時を城の外で彼女と過ごす様になった。
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