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領主のお仕事

死闘

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    「氷槍!」
    「……くっ、」
    「ほう、この数を剣一つで全て弾くのかい。成る程、確かに君は強い様だね」
    カイルを背に背負いながら、レイフレッドは奮戦していた。
    上着を裂いて作った紐でカイルの体をきっちり自分の体にくくりつけて固定し、文字通り自分の体を盾にして彼を守っている。
    ――この男、アンリ同様に全属性の魔法を操る。
    体術の類いは不得意のようだが、剣一つで彼の魔法に対抗するにはかなり厳しい戦いを強いられていた。
    「……俺を庇わなければもっと動けるだろ?    何してんだよ!」
    「阿呆、自分で動けない子を庇わなかったらお前、死ぬぞ?」
    「……それは分かってるさ、けど、こんな気違い相手じゃ甘いこと言ってらんねぇだろ!」
    「馬鹿、親が子を守るのは当たり前だ!    俺がお前を見捨てて助かっても後でアンリに殺されるだろ!」
    レイフレッドは目の前の男に斬りかかろうとするが、今度は炎の矢に狙われそれを阻まれた。
    「ちっ、」
    「ふふふ、そう簡単には攻めさせないよ」
    氷の槍と違って剣で跳ね返せない炎はひたすら避けるしかない。動きを止められ、そこを特大の炎に打たれ―― 
    「おい!」
    カイルの叫びが響いた。

    その一方で。
   「……何で矢が刺さらないのよ」
    至近距離からで外す筈の無い矢は確かに奴の肩に当たったはずが、まるで硬い鎧に弾かれたように地に落ちた。
    その様に、ビルは上機嫌で笑う。
   「あははは、奴の魔法の腕はやはり流石だな。いけ好かない奴だが、利用価値はある」
    利用されているのが自分の方だとも気付けない間抜けが何かほざいているけど、それはもうどうでもいい。
    とにかく、攻撃によるダメージが通らない。
    近づいてきたビルの腕を取って投げ飛ばす。
    ――重たくて体が悲鳴をあげたが、投げ飛ばす事自体は可能であった。
   「ぐうっ!」
    腰を石の床にしこたまぶつけて痛がるビル。
    ……だけどこれはそう何度もは繰り出せない。体が壊れてしまう。
    奴が呻いている間に少しでも距離を稼がなければ。
    いつかの砦の様に、指定されたエリアを抜ければ魔法も使えるはず。……そのエリアの広さも不明だけど、動かない訳にはいかなかった。
    またしても地下であるらしい石造りの冷たい室内を駆ける。
   「……まずは階段を見つけないと」
    ここは砦の地下牢と違ってそれなりに広いらしく、一見しただけでは階段の位置は分からなかった。
   「くそっ、待て!」
    ……もう復活してきたのか?    もっとゆっくり休んでれば良いものを。まだ、魔法は使えない。
    ……さて、次はどうしよう?
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