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領主のお仕事
戴冠式
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厳かに、式典は始まった。
式典に参加しているのはレイリアだけ。双子はこの後のパーティーに少しばかり参加して終わりだ。
壮麗な音楽が生演奏される中を、王太子殿下がゆっくりと前へ進まれ、陛下の元に跪く。
陛下は式典用の豪華な冠を己の頭から取り、王太子殿下の頭上へと乗せる。
その瞬間、王太子殿下が王陛下となり、王は前王陛下になられ、ゆっくりと段を降りて立礼のまま壇上を見上げる。
新しく王となった彼―― アルベルト陛下が立ち上がり、演説を始め――
それが終わると、皆一斉に拍手をし、王は一度場を去る。
後程街でパレードなどして民にもその姿をお披露目し、今夜は夜会が開かれる。
私達はパレードの間に着替えて夜会に出る支度をする。
双子にお姉ちゃんのエスコートをさせて、私はレイフレッドのエスコートで会場入りした。
「やぁ、これはカーライル辺境伯。今日はお子さまもご一緒で?」
「ええ、上の子達だけですけれど」
「ははは、幼子には夜会などつまらぬものですからなぁ……」
甘いものなど摘まみながら、子供達は大人の挨拶を黙って聞き、必要に応じて挨拶を返しているけれど、しばらくするうちに疲れてきたらしく機嫌が悪くなってくる。
「そろそろ戻りましょうか?」
「うん……そうする」
一度子どもを連れて部屋に戻り、寝かしつけてからまた会場へ戻る。
「お疲れ様」
すると、ディアナに声をかけられた。
「だけど、今日は良い機会だったわ。ウチではこんな大きな夜会なんてまず無いもの」
「そういう割には貴女、随分と夜会慣れしてない?」
「そりゃ、よその夜会にはちょくちょく出掛けているからね。色々お付き合いはあるから」
だけど、仕事で行くには子供達なんかとても連れては行けない。
「だから、子供達含めて招待してくれて助かったわ」
「なら、良かったわ。無理を言ったかもしれないと思って……」
「それは大丈夫よ。ウチの子、そんなにヤワじゃないから。なんせ私と彼の子だもの」
「相変わらず仲良いわね」
「ふふふ、ありがとう」
その後何人か、学校時代の知り合いと挨拶し合い、夜会は終わった。
部屋に戻れば、子供達はもう夢の中で。
風呂上がりのレイフレッドにいつものように吸血させていた。
――そんな時。
近いと言えば近い。けど、少し離れた場所で突如爆発音が響いた。
と、同時に地震のようにグラグラと建物が揺れた。
何事かと窓の外を見るが……暗くてよく見えない。
が、夜目の利くレイフレッドは違ったらしい。
「……黒い煙が上がっています。――ただの火の不始末による火災ならまだ良いのですが」
火はまだ遠い。慌てて避難しなければならない段階ではないけれど。
「取り敢えず子供達を起こして着替えさせましょう」
私達は即座に行動を始めたのだった。
式典に参加しているのはレイリアだけ。双子はこの後のパーティーに少しばかり参加して終わりだ。
壮麗な音楽が生演奏される中を、王太子殿下がゆっくりと前へ進まれ、陛下の元に跪く。
陛下は式典用の豪華な冠を己の頭から取り、王太子殿下の頭上へと乗せる。
その瞬間、王太子殿下が王陛下となり、王は前王陛下になられ、ゆっくりと段を降りて立礼のまま壇上を見上げる。
新しく王となった彼―― アルベルト陛下が立ち上がり、演説を始め――
それが終わると、皆一斉に拍手をし、王は一度場を去る。
後程街でパレードなどして民にもその姿をお披露目し、今夜は夜会が開かれる。
私達はパレードの間に着替えて夜会に出る支度をする。
双子にお姉ちゃんのエスコートをさせて、私はレイフレッドのエスコートで会場入りした。
「やぁ、これはカーライル辺境伯。今日はお子さまもご一緒で?」
「ええ、上の子達だけですけれど」
「ははは、幼子には夜会などつまらぬものですからなぁ……」
甘いものなど摘まみながら、子供達は大人の挨拶を黙って聞き、必要に応じて挨拶を返しているけれど、しばらくするうちに疲れてきたらしく機嫌が悪くなってくる。
「そろそろ戻りましょうか?」
「うん……そうする」
一度子どもを連れて部屋に戻り、寝かしつけてからまた会場へ戻る。
「お疲れ様」
すると、ディアナに声をかけられた。
「だけど、今日は良い機会だったわ。ウチではこんな大きな夜会なんてまず無いもの」
「そういう割には貴女、随分と夜会慣れしてない?」
「そりゃ、よその夜会にはちょくちょく出掛けているからね。色々お付き合いはあるから」
だけど、仕事で行くには子供達なんかとても連れては行けない。
「だから、子供達含めて招待してくれて助かったわ」
「なら、良かったわ。無理を言ったかもしれないと思って……」
「それは大丈夫よ。ウチの子、そんなにヤワじゃないから。なんせ私と彼の子だもの」
「相変わらず仲良いわね」
「ふふふ、ありがとう」
その後何人か、学校時代の知り合いと挨拶し合い、夜会は終わった。
部屋に戻れば、子供達はもう夢の中で。
風呂上がりのレイフレッドにいつものように吸血させていた。
――そんな時。
近いと言えば近い。けど、少し離れた場所で突如爆発音が響いた。
と、同時に地震のようにグラグラと建物が揺れた。
何事かと窓の外を見るが……暗くてよく見えない。
が、夜目の利くレイフレッドは違ったらしい。
「……黒い煙が上がっています。――ただの火の不始末による火災ならまだ良いのですが」
火はまだ遠い。慌てて避難しなければならない段階ではないけれど。
「取り敢えず子供達を起こして着替えさせましょう」
私達は即座に行動を始めたのだった。
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