上 下
239 / 370
目指せ勝ち組!~君と歩む花道~

レイフレッドの本気

しおりを挟む
    「おかえりなさい、アンリ」
    私は初等部を、レイフレッドは上級学校を卒業し、私達はまず実家へと帰った。
   「ただいま帰りました、お父様、お母様」
    私は貴族らしくカーテシーで挨拶をする。
   「そして、ご報告があります」
   「子爵の事かね?」
   「それもありますが……」
   「――この度、無事子爵子息様との婚約破棄が成立致しました。つきましては、彼女を私に下さいませんか?」
    レイフレッドが、お父様の前に膝をついて頭を下げた。
    既に男爵位にある彼が、平民のお父様相手に頭を下げる必要なんかどこにもないのに、彼は従者だった時とはまた違う、貴族としての礼儀を保ち頭を下げている。
    彼は今、貴族として私が欲しいと父に願っているのだ。
    あー、ヤバイ。ものっ凄くドキドキしてくる。嬉しいのに、何か緊張しちゃって手に汗かいてくる。
    「ああ……うん。まぁそうじゃないかとは思っていたけどね」
    そんな彼にお父様は少し遠い目をして空笑いをし。
    逆にお母様は目を輝かせた。
    「まあ素敵!」……とばかりにウキウキワクワクし始める。その母の様子に父もがっくり肩を落として頷いた。
    「ただし結婚はアンリが上級学校を卒業してからだ。いいね?」
    「勿論、はじめからそのつもりでしたから」
    「まぁまぁまぁ!    それじゃあ今日は一緒にご飯を食べましょう!」
    と、そんな流れで私とレイフレッドは両親と弟とで夕飯の席に着いた。
    弟が必死にマナー通りに食べようとしているのを微笑ましく見守りながら、私とレイフレッドは当然の様に板についた貴族のマナーで食事を進める。
    お母様達は……平民としてなら見苦しくなく、下級貴族相手ならまぁ見逃してもらえるレベルのマナーだ。
   「それにしても。本当に成し遂げるとはな」
    お父様は少し寂しそうに言った。
    「私がもっと強くいられれば、お前ももう少し楽だっただろう」
    「お父様、この国の平民が貴族に声をあげるのはそう容易いことではありません。学校では少しばかり意識改革も出来ましたが、それはまだほんの一部に過ぎません」
    だから、安易に彼を責められない。
    「結果的に、私はこうして無事にレイフレッドと婚約出来たのですから、良しとしましょう」
    「……そうだな」
    お父様は苦笑し、レイフレッドの顔を眺めた。
    「君がこの屋敷に来た時分にはただの孤児だったのにな。今は男爵様で……娘の婚約者になるとは……」
    それについては私もあの日の幸運に感謝しきりである。あの日彼との出会いがなければこの結末は無かったんだから。
   「それは私の台詞ですよ、お嬢様。お嬢様にあの日出会っていなければ、私は今ごろ餓えてか……はたまた我慢が利かずに誰かの血を吸ったとかそんな理由で死んでいたか。運が悪ければ奴隷、運が良くても貧民街で日銭を稼ぐ日々だったでしょうから」
    うん。改めてあの日の幸運に、乾杯しよう。
    そして、改めてこれからの日々を行くんだ。
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!

アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。 「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」 王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。 背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。 受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ! そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた! すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!? ※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。 ※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。 ※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

Archaic Almanac 群雄流星群

しゅーげつ
ファンタジー
【Remarks】 人々の歴史を残したいと、漠然と心に秘めた思いを初めて人に打ち明けた――あの日、 私はまだ若く、様々な可能性に満ち溢れていた。 職を辞し各地を巡り、そして自身のルーツに辿り着き、河畔の草庵で羽筆を手に取るまでの幾年月、 数多の人と出会い、別れ、交わり、違えて、やがて祖国は無くなった。 人との関わりを極限まで減らし、多くの部下を扱う立場にありながら、 まるで小鳥のように流れていく積日を傍らから景色として眺めていた、 あの未熟でちっぽけだった私の後の人生を、 強く儚く淡く濃く、輝く星々は眩むほどに魅了し、決定付けた。 王国の興亡を、史書では無く物語として綴る決心をしたのは、 ひとえにその輝きが放つ熱に当てられたからだが、中心にこの人を置いた理由は今でも分からない。 その人は《リコ》といった。 旧王都フランシアの南に広がるレインフォール大森林の奥地で生を受けたという彼の人物は、 大瀑布から供給される清水、肥沃する大地と大樹の守護に抱かれ、 自然を朋輩に、動物たちを先達に幼少期を過ごしたという。 森の奥、名も無き湖に鎮座する石柱を――ただ見守る日々を。 全てを遡り縁を紐解くと、緩やかに死んでいく生を打ち破った、あの時に帰結するのだろう。 数多の群星が輝きを増し、命を燃やし、互いに心を削り合う、騒乱の時代が幕を開けた初夏。 だからこそ私は、この人を物語の冒頭に据えた。 リコ・ヴァレンティ、後のミッドランド初代皇帝、その人である。 【Notes】 異世界やゲーム物、転生でも転移でもありません。 クロスオーバーに挑戦し数多のキャラクターが活躍する そんなリアルファンタジーを目指しているので、あくまで現世の延長線上の物語です。 以前キャラ文芸として応募した物の続編更新ですが、ファンタジーカテゴリに変更してます。 ※更新は不定期ですが半年から1年の間に1章進むペースで書いてます。 ※5000文字で統一しています。およそ5ページです。 ※文字数を揃えていますので、表示は(小)を推奨します。 ※挿絵にAI画像を使い始めましたが、あくまでイメージ画像としてです。 -読み方- Archaic Almanac (アルカイクxアルマナク) ぐんゆうりゅうせいぐん

慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)

浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。 運命のまま彼女は命を落とす。 だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

【完結】貴方たちはお呼びではありませんわ。攻略いたしません!

宇水涼麻
ファンタジー
アンナリセルはあわてんぼうで死にそうになった。その時、前世を思い出した。 前世でプレーしたゲームに酷似した世界であると感じたアンナリセルは自分自身と推しキャラを守るため、攻略対象者と距離を置くことを願う。 そんな彼女の願いは叶うのか? 毎日朝方更新予定です。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...