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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~

面倒臭い男

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    「ビル様。貴方はご自分が何をなさったか覚えておられますか?」
    面倒臭いし、こんな奴に様付けの上に敬語使って話すのは非常に遺憾である。が、残念ながら退っ引きならない事情故に仕方なく相手をする。
     「貴方とアリス様が行方不明になったと引率の先生から通報を受けたギルドから指名で捜索依頼を受けたので仕事として迷子の回収に参った次第です」
    「なっ、迷子だと!?」
    「……アリス様はともかく、何故冒険者でもないビル様がダンジョンになど入ったのです?」
    「た、ただの洞窟だと思ったんだ!」
    「――仮にただの洞窟だとしても、この様な山奥では魔物や猛獣の巣穴という場合も多々ございます。研修で先生方から注意があったはずですが?」
    「し、知らん!    つ、疲れていたから休もうと思っただけだ!    だいたい貴族がどうしてこの様な山歩きをせねばならんのだ!」
    ……むしろ貴族だから、だろう。
   貴族は領地持ちも多いし、領軍を持つ家も少なくない。その指揮をする人が山を知らないのは……ねぇ?
   山近くに住む平民なら嫌でも生きるために学ばなくちゃいけないことだし、冒険者や旅する商人も勉強しない奴はだいたい死んでいく。
    けど、貴族がわざわざ自ら山に入るなんてしないだろうからこんな行事が恒例になったんじゃないの?
    ……いや、実際のとこは知らんけど。
   「そういう苦情は後で学校に言って下さい。とにかく、ここはダンジョンで、いつ魔物が出てもおかしくない場所です。早く出ましょう」
    ……もっと階層の多いダンジョンだとボス戦の後にワープポイントが出てきたりするのもあるんだけど、これだけお喋りしていてもそんなものは何処にも現れないからね。
    宝箱はもう箱ごと回収して後で確認しよう。
    「……リルフィはお使いに出しちゃったし、仕方ないからアリスは私が背負うわ」
    「――ビル殿はご自分で歩けますか?」
    「はん、これ以上歩くなどごめんだ!」
    「……困りましたね。モンスターが出たときに備えて手は空けておきたかったのですが」
    「仕方ないわね。フロス!」
    「あい、ご主人様!」
    「私達二人とも手が塞がるから、弱い魔物ばかりで悪いけど、出てくる魔物全部狩ってちょうだい」
    「あーい!」
     フロスは機嫌よく返事をし、私達の前を歩き始めた。
   「なっ、それは何だ!」
   「お嬢様の従魔です。あなたを背負うので魔物が出ても俺はろくに戦えません。出てくるのは雑魚ばかりとはいえここはダンジョンです。数は際限なく出てきますから、適当に間引かないと大変なことになります」
    ……レイフレッドが怖い笑顔で説明するけど。
   「……っ、それが僅かにでもアリスや私を害したなら、後で父上に言って処分させるからな!」
   は?    ウチの可愛いフロスちゃんに何て事言いやがる、コイツめ……!
    「お嬢様の助けがなければ貴方は今頃ボスにやられて死んでいたというのに。謝罪や礼の言葉もなく、口から出るのは暴言ばかり……ですか」
    レイフレッドの顔から笑顔が消え、表情が無になった。
    「お嬢様、やっぱりこの人達はダンジョンに殺られたみたいですって事にして置いて帰りませんか?    ボスは倒しちゃいましたけど、またいくらか経てば復活するでしょうし、ボスでなくともトロールかゴブリンパーティーあたりが始末してくれるでしょ?」
    「私もそうしたいけど……」
    それを聞いても尚「ふざけるな!」等と喚けるビルにはある意味感心するけど。
    「それは後が面倒だし。――落としましょう」
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