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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~
異変の原因
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「ここが夜営研修用のコテージですか」
「……私じゃ人の事言えない気はするけど、夜営と言いつつコテージ付き……かぁ」
「まあ、普段は使用人付きの生活が当たり前の貴族からすれば、使用人なしに自炊での一泊でも大事でしょうから」
ここまで、少し開けた場所に出る度に大型の魔物と戦ってきたけど、今のところそれ以上の異常は見つからなかったんだけど。
ここまで来て初めてその異変の片鱗を明確に感じ取った。
「ああ、これは……何か居るわね確実に」
「ええ。やはり普段はもっと奥に棲むはずの魔物達は皆あれから逃げてきた。……理由としてはとても単純明快なものでしたね」
けど……。
「厄介ね」
「ええ。こういう事態は当然想定していましたが、ちょっと予想を越えて敵が強い。……倒す事は容易でも、彼らを連れて完璧に守りながらとなると難易度が跳ね上がります」
「一番楽なのはここに結界張って彼らに待機して貰ってる内に片付けてくる、ってのなんだけど……」
「説得、大変そうですね」
「でなければ……頑丈に作った馬車にメンバーを乗せていくか。一纏まりになって動かずいてくれるなら、あるいは……」
「一応、提案してみますか」
……結果。多少不満は出たけど、ここまでの戦闘である程度自分の実力の程を体感できたからだろうか、思ったほど説得は面倒ではなく、装甲馬車の中で見学という事でご納得いただけた。
「こんなこともあろうかと……思って作った訳じゃないけど、これ、使うときが来るとはね……」
それは商会の商品とは別に私が冗談半分で作った代物で、空間の肥やしになりつつあった物。……日の目を見る機会があった事は嬉しいけどこの状況……素直に喜べないわね……。
まあいい。とにかくメンバーを馬車に詰め込んで、早速気配の元へと急ぐ。
……車を引かせるためにグリフィン召還してもう一騒動あったりもしたけど、まあ無事(?)に目的地に到着した。
そこは、幾つも連なる山脈の一番手前の低い山の山頂にあるコテージから少し先に下った谷間の近く。
「――居たわ」
ちょっとした沢の、一つ張り出した岩の上。せっせと草木を運んで作ったらしい巣の中、丸まって寝ているらしい魔物の姿。その身を包むのは――羽毛、だ。
「大鴉の魔物……だけどオークやオーガを補食出来るとなるとユニーク個体ね」
「空中戦ですか」
「これはリルフィに頑張って貰わないとね!」
馬車からリルフィを外してやると、やる気に満ち満ちた顔で敵を睨み据えた。
「――頼むぞ」
リルフィに乗るのは遠距離担当の私でなく前衛役のレイフレッドだ。
「ぎゅい!」
リルフィは自分だけで充分だと不満そうだけど。
「リルフィ、今日は初心者の見学者が居るの。これからパーティーで力を合わせて戦う事の意味と重要性を学ばなきゃいけない人達の前で私達が個人プレイで独走する様を見せる訳にはいかないのよ」
「だから、リルフィ。背に乗るのがお前の主人じゃなくて済まないけど、彼女のためにも頼むよ」
――さあ、狩りの始まりだ!
「……私じゃ人の事言えない気はするけど、夜営と言いつつコテージ付き……かぁ」
「まあ、普段は使用人付きの生活が当たり前の貴族からすれば、使用人なしに自炊での一泊でも大事でしょうから」
ここまで、少し開けた場所に出る度に大型の魔物と戦ってきたけど、今のところそれ以上の異常は見つからなかったんだけど。
ここまで来て初めてその異変の片鱗を明確に感じ取った。
「ああ、これは……何か居るわね確実に」
「ええ。やはり普段はもっと奥に棲むはずの魔物達は皆あれから逃げてきた。……理由としてはとても単純明快なものでしたね」
けど……。
「厄介ね」
「ええ。こういう事態は当然想定していましたが、ちょっと予想を越えて敵が強い。……倒す事は容易でも、彼らを連れて完璧に守りながらとなると難易度が跳ね上がります」
「一番楽なのはここに結界張って彼らに待機して貰ってる内に片付けてくる、ってのなんだけど……」
「説得、大変そうですね」
「でなければ……頑丈に作った馬車にメンバーを乗せていくか。一纏まりになって動かずいてくれるなら、あるいは……」
「一応、提案してみますか」
……結果。多少不満は出たけど、ここまでの戦闘である程度自分の実力の程を体感できたからだろうか、思ったほど説得は面倒ではなく、装甲馬車の中で見学という事でご納得いただけた。
「こんなこともあろうかと……思って作った訳じゃないけど、これ、使うときが来るとはね……」
それは商会の商品とは別に私が冗談半分で作った代物で、空間の肥やしになりつつあった物。……日の目を見る機会があった事は嬉しいけどこの状況……素直に喜べないわね……。
まあいい。とにかくメンバーを馬車に詰め込んで、早速気配の元へと急ぐ。
……車を引かせるためにグリフィン召還してもう一騒動あったりもしたけど、まあ無事(?)に目的地に到着した。
そこは、幾つも連なる山脈の一番手前の低い山の山頂にあるコテージから少し先に下った谷間の近く。
「――居たわ」
ちょっとした沢の、一つ張り出した岩の上。せっせと草木を運んで作ったらしい巣の中、丸まって寝ているらしい魔物の姿。その身を包むのは――羽毛、だ。
「大鴉の魔物……だけどオークやオーガを補食出来るとなるとユニーク個体ね」
「空中戦ですか」
「これはリルフィに頑張って貰わないとね!」
馬車からリルフィを外してやると、やる気に満ち満ちた顔で敵を睨み据えた。
「――頼むぞ」
リルフィに乗るのは遠距離担当の私でなく前衛役のレイフレッドだ。
「ぎゅい!」
リルフィは自分だけで充分だと不満そうだけど。
「リルフィ、今日は初心者の見学者が居るの。これからパーティーで力を合わせて戦う事の意味と重要性を学ばなきゃいけない人達の前で私達が個人プレイで独走する様を見せる訳にはいかないのよ」
「だから、リルフィ。背に乗るのがお前の主人じゃなくて済まないけど、彼女のためにも頼むよ」
――さあ、狩りの始まりだ!
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