唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

目指せ勝ち組！～君と歩む花道～

部活動

    領地経営研究部。
    その部室には多くの資料が詰め込まれた本棚と、四人で囲んで座るタイプのテーブルセットが幾つか置かれていた。
    「それで。読んで来たかい？」
    「はい」
    「では早速お手並み拝見といこうか」
    部員への紹介が終わると、私とレイフレッドは二人組にさせられて、一人分の席に二つ椅子を並べて座らさせた。
    「それでは始めよう。今日の設定は……」
    そしてそのテーブル上にはボードと駒が幾つか置かれている。
    これから始まるのは「ＴRPG」と呼ばれるゲーム。
    ゲーム機無しに遊ぶRPGゲームだ。
    ただし、これはゲーム形式をとっているだけで単なる遊びではない。
    設定として、過去にあった事例を元にした舞台設定や人物設定で物語を進め、知識量やその活用や応用のシュミレーションをすることでその技術を磨く。
    この部室の資料は過去の実際の資料も、こうしてプレイされた中でも優秀な例を記した物。
    日本史で例えるなら戦国時代。プレイヤーはいずれかの家の長として、実在した人物を駒とし、その時代背景をルールにゲームを進めていくような。
    例えば本能寺の変から明智光秀の三日天下に秀吉の大返し。或いは関ヶ原の戦いはその前哨戦も含めて改めて自分ならどうするか、駒を動かしてみてその推移や結果を見る。
    そして感想戦を行い、疑問点などを徹底的に議論して詰めていく。
    ……先に戦争の例ばかりあげてしまったけれど、ここはあくまで領地経営研究部。
    実際に使われる事例はもっと地味な、お役所仕事な日常の事例だ。
    それこそ作物の不作の対策とか、災害が起きたときの対処やその予防策。徴税方法とか補助金の種類や額面とか。
    でも、攻略の為に多くの知識を学び、人と競いあいながらその知識を上手く活用し、結果が出るのは楽しい。
    それに。ここの人達は努力もせず結果も出せない者には厳しいけど、頑張った上で私がいくら勝っても悔しそうにはするけど、嫌な顔をする人は居ない。
    部長も副部長も、感想戦では的確なアドバイスをくれるし、逆に鋭い質問を向けてきたりもする。
    ……この手法を参考に、レイフレッドと将来の自領を舞台にシュミレーションをするようになった。
    その記録を元に先輩とディスカッションすると、とてもアイディアが出てきたりして、とても良い刺激を貰える。
    それは、私にとってとても有意義な時間の使い方となり、私は暇な時間は部室に入り浸るようになった。
    ……勿論それで授業を疎かにする事はない。
    華道などの一部の例外を除き、Sクラスに恥じない好成績を保っている。
    けど、虐めのような嫌がらせは度々起こっていた。
    特室棟への教室移動の間に、教室に置いてあった教科書が破かれたり(持ち物には徹底的に形状維持の魔法をかけていたからすぐに元通り)。
    持ち物を盗まれ隠されたり(位置把握の魔法を以下略)。
    更衣室に置いた服を汚されたり破かれたり(魔法で対策済み)
    全て想定範囲内の、お約束なものばかりで既に対策済みだったから大事にはならなかったけど。
    犯人は既に割れてたけど、あまり騒いで良いこともなさそうな相手だったから、証拠だけ保存して泳がせていたのに。
    あまりに頻繁なものだから、ある日ついに王子がそのやらかされた現場の第一発見者になってしまった。
    あーあ。