142 / 370
目指せ勝ち組!~君と歩む花道~
入学式
しおりを挟む
満開の桜が風に舞い、辺りの地面を薄紅色に染めていく。
日本の入学式だと、以外と桜のシーズンに間に合わなくて葉桜だったりもするのに、そこは流石乙女ゲームのご都合主義の象徴とでも言うように、校庭を彩るのは全てが満開になった桜並木。
一緒に下宿先を出たレイフレッドは上級学校の入学式に出る為にすぐ隣の学校へ行くため校門で別れた。
彼の為に、今日はシリカさんが来てくれている。
彼の事は彼女にお願いし、私は初等学校の講堂へ歩を進める。
自分の足でこうして歩くのは初めての場所だけど、物凄い既視感がある光景だ。
何度も画面の向こうから見ていた景色。
お目当ての攻略キャラを探して散々走り回った場所だから、初めて歩いている気が全くしない。
だから、案内等無くとも講堂へ行くのに迷うはずもない。
そして、ルートを繰り返す度に流れるプロローグの背景となる建物、講堂が見えてくる。
時間に余裕をもって来て、此処まで迷う事なく最短距離で来たのだ。他の生徒はまだまばらな内に会場へ到着した私は早々に会場入りして、指定の番号を照会して貰い、伝えられた席に着く。
お父様とお母様も同じく後ろの保護者席へ案内されていく。
……ここでのそのそしてたら、ヒロインのイベントに巻き込まれかねないからね。入学早々の面倒事はごめんだもの。
とはいえ。
指定された席はクラス順、成績順らしく私は一番端のクラスの、二番目の席に座らされていた。
それから待たされる事しばらく。
続々とやってくる新入生達を眺めていると、綺羅綺羅しい王子様が現れた。
――残念ながら比喩なんかじゃない。正真正銘このシレイドの国の国王の息子、すなわち王子様。――二番目の息子だから王太子ではないのだけれど、上級生にはその彼の兄である王太子殿下も在学中である。そして勿論当然のごとく彼ら二人は乙女ゲームの攻略対象であり、その意味でも正真正銘の王子様なのである。
そんな男が腰を落ち着けたのは、何と私の隣の席。
そして彼に付き従う魔法省長官の息子と外務省の息子が私の右隣に並ぶ。――因みに宰相の息子と騎士団長の息子は王太子と同学年に居る。勿論、彼らも攻略対象だ。
でも、第二王子と同じクラスになるはずのヒロインがいつまで経っても現れない。
ついでに今の私の婚約者様はと言えば……。
あ、居た。二つ隣のクラスに居たよ。……あの席順からしてあのクラスでも下の成績の様だけど、ついでにヒロイン様も見つけてしまったよ……。
あれ、ヒロイン頭悪かったの?
いや六クラスあるうちの中程なら悪いと言うほどじゃないのだろうけどね?
式自体は特にトラブルもなく粛々と進み、第二王子が新入生代表として挨拶をし、在校生代表として王太子殿下がお言葉を述べ、校長以下偉い人のお話が延々続いて、お昼過ぎにようやく終わり解散となった。
辻馬車で帰る家族を見送り、レイフレッドと一緒に下宿へ戻る。
「……何にもなかったのに、何でだろう。何か精神的にすごく疲れた」
「まあ、お嬢様にしてみれば今日からが〝本番〟なんでしょう? ここで頑張って下さらないと私も困りますからね」
レイフレッドに血をあげながら彼に絡めば、先に成人を済ませ爵位を貰ってお貴族様になって随分と大人びた彼があちこち悪戯じみた口付けと一緒に噛みつかれた。
痛くはないし、むしろ気持ちいいのは相変わらず。それを知っているレイフレッドの攻撃に早々に白旗を挙げている私はそのまま彼に甘える。
「むしろ私の方が心配ですよ。この国の王子は見目も良いですし、評判も悪くありませんからね。お嬢様は同じクラスになったのでしょう?」
「あら、レイフレッドが居るのに浮気なんかしないわよ」
そう。あの婚約者様の例があるから戦々恐々していたけど、幸いにも他の攻略対象は一応まともそうでほっとはしたけどね。
それでもあんなのレイフレッドとは比べるべくもない。
「私、頑張るから」
日本の入学式だと、以外と桜のシーズンに間に合わなくて葉桜だったりもするのに、そこは流石乙女ゲームのご都合主義の象徴とでも言うように、校庭を彩るのは全てが満開になった桜並木。
一緒に下宿先を出たレイフレッドは上級学校の入学式に出る為にすぐ隣の学校へ行くため校門で別れた。
彼の為に、今日はシリカさんが来てくれている。
彼の事は彼女にお願いし、私は初等学校の講堂へ歩を進める。
自分の足でこうして歩くのは初めての場所だけど、物凄い既視感がある光景だ。
何度も画面の向こうから見ていた景色。
お目当ての攻略キャラを探して散々走り回った場所だから、初めて歩いている気が全くしない。
だから、案内等無くとも講堂へ行くのに迷うはずもない。
そして、ルートを繰り返す度に流れるプロローグの背景となる建物、講堂が見えてくる。
時間に余裕をもって来て、此処まで迷う事なく最短距離で来たのだ。他の生徒はまだまばらな内に会場へ到着した私は早々に会場入りして、指定の番号を照会して貰い、伝えられた席に着く。
お父様とお母様も同じく後ろの保護者席へ案内されていく。
……ここでのそのそしてたら、ヒロインのイベントに巻き込まれかねないからね。入学早々の面倒事はごめんだもの。
とはいえ。
指定された席はクラス順、成績順らしく私は一番端のクラスの、二番目の席に座らされていた。
それから待たされる事しばらく。
続々とやってくる新入生達を眺めていると、綺羅綺羅しい王子様が現れた。
――残念ながら比喩なんかじゃない。正真正銘このシレイドの国の国王の息子、すなわち王子様。――二番目の息子だから王太子ではないのだけれど、上級生にはその彼の兄である王太子殿下も在学中である。そして勿論当然のごとく彼ら二人は乙女ゲームの攻略対象であり、その意味でも正真正銘の王子様なのである。
そんな男が腰を落ち着けたのは、何と私の隣の席。
そして彼に付き従う魔法省長官の息子と外務省の息子が私の右隣に並ぶ。――因みに宰相の息子と騎士団長の息子は王太子と同学年に居る。勿論、彼らも攻略対象だ。
でも、第二王子と同じクラスになるはずのヒロインがいつまで経っても現れない。
ついでに今の私の婚約者様はと言えば……。
あ、居た。二つ隣のクラスに居たよ。……あの席順からしてあのクラスでも下の成績の様だけど、ついでにヒロイン様も見つけてしまったよ……。
あれ、ヒロイン頭悪かったの?
いや六クラスあるうちの中程なら悪いと言うほどじゃないのだろうけどね?
式自体は特にトラブルもなく粛々と進み、第二王子が新入生代表として挨拶をし、在校生代表として王太子殿下がお言葉を述べ、校長以下偉い人のお話が延々続いて、お昼過ぎにようやく終わり解散となった。
辻馬車で帰る家族を見送り、レイフレッドと一緒に下宿へ戻る。
「……何にもなかったのに、何でだろう。何か精神的にすごく疲れた」
「まあ、お嬢様にしてみれば今日からが〝本番〟なんでしょう? ここで頑張って下さらないと私も困りますからね」
レイフレッドに血をあげながら彼に絡めば、先に成人を済ませ爵位を貰ってお貴族様になって随分と大人びた彼があちこち悪戯じみた口付けと一緒に噛みつかれた。
痛くはないし、むしろ気持ちいいのは相変わらず。それを知っているレイフレッドの攻撃に早々に白旗を挙げている私はそのまま彼に甘える。
「むしろ私の方が心配ですよ。この国の王子は見目も良いですし、評判も悪くありませんからね。お嬢様は同じクラスになったのでしょう?」
「あら、レイフレッドが居るのに浮気なんかしないわよ」
そう。あの婚約者様の例があるから戦々恐々していたけど、幸いにも他の攻略対象は一応まともそうでほっとはしたけどね。
それでもあんなのレイフレッドとは比べるべくもない。
「私、頑張るから」
0
お気に入りに追加
1,084
あなたにおすすめの小説
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話
嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。
【あらすじ】
イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。
しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。
ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。
そんな一家はむしろ互いに愛情過多。
あてられた周りだけ食傷気味。
「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」
なんて養女は言う。
今の所、魔法を使った事ないんですけどね。
ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。
僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。
一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。
生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。
でもスローなライフは無理っぽい。
__そんなお話。
※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。
※他サイトでも掲載中。
※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。
※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。
※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑
つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。
とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。
そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。
魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。
もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。
召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。
しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。
一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜
Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・
神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する?
月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc...
新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・
とにかくやりたい放題の転生者。
何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」
「俺は静かに暮らしたいのに・・・」
「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」
「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」
そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。
そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。
もういい加減にしてくれ!!!
小説家になろうでも掲載しております
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる