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乙女ゲームの舞台で
旅立ち
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お母様とのショッピング&ランチ&ティータイムを経て、ルカとの関係もまあ一応改善し、お母様に買って貰った材料でアレコレ作り、頼んだアクセサリーを受け取り……。
そうこうしている内に三ヶ月なんてあっという間に過ぎ去ってしまう。
「では、明日にはもう出発してしまうのね」
「はい。……移動には私のグリフィン車を使うので、これでも馬車で行くよりかは日数かからずに済んでいるんですよ」
なーんて。行くだけなら空間伝いに数分で行けるんですけどね。これはやっぱりまだまだ内緒。
入学式に出るために、両親ごと運ばなければならないため、今回は何度か町の宿に泊まりつつの旅になる。
それでも私は自分のグリフィン車で片道のみで済む旅だけど、両親は入学式の後は普通の馬車で行きの数倍の日数をかけて帰らなくてはいけない。
お父様はその分の仕事を前倒ししているせいで忙しく、しばらく顔も見ていなかった。
――下宿先へ行ってしまえば、私もまた当分実家へは帰って来ない。
しばらくぶりにレイフレッドと同じ屋根の下で暮らせるのは嬉しいけど、せっかく改善したルカと離れるのはちょっと複雑な気分にはなる。
「僕も行きたいです!」
「……ついてきても入学式には連れて行ってあげられないわよ?」
何と言ってもまだ五歳。そんな子供を貴族も大勢居るような場所には連れていけないから。
「それでも! 行きたいです!」
「良いんじゃないですか、家族旅行みたいで。行きは私が居るから特に護衛を雇う必要もないし」
「え? 傭兵や冒険者は雇わないの? 賊が出たら……」
「私が処理しますよ。私は黄金級の冒険者ですから、勿論賊退治の経験もありますから」
今回の旅に使う車は、今回の為だけに自作した物だ。今後私やレイフレッド以外を連れて泊まり掛けの旅をするならまた日の目を見ることもあるだろうけど――。
「え、凄いです。いつもの馬車より広いし……何で馬車の中に冷蔵庫がやベッドがあるのですか!」
それは、空間拡張魔法を遠慮なく施した馬車。
車の中にリビングと寝室が詰まっている。
「アンリ……これ……私達、宿に泊まる必要が無いのではないかしら……」
「ええ。夜間の見張りは私の獣魔に任せれば、今予定してるより3日は早く着けますね」
「まあ、今でさえ普通の馬車で行くより早いのに……殆ど半分以下で着いてしまうわ」
でも、お父様には朗報だったようで。
私は最短日数で着けるようルートを選定し、そして。
「では、行きますよ」
「――旦那様、奥さま、坊っちゃま、行ってらっしゃいませ」
使用人が頭を下げる。
……お母様や弟とは関係修復できたけど、使用人との距離感を縮めるまでには至らず。
――お父様ともまだ少しギクシャクしている。
これからこそが本番なのに、ね。
私はため息をつきながら、リルフィの手綱を握ったのだった。
そうこうしている内に三ヶ月なんてあっという間に過ぎ去ってしまう。
「では、明日にはもう出発してしまうのね」
「はい。……移動には私のグリフィン車を使うので、これでも馬車で行くよりかは日数かからずに済んでいるんですよ」
なーんて。行くだけなら空間伝いに数分で行けるんですけどね。これはやっぱりまだまだ内緒。
入学式に出るために、両親ごと運ばなければならないため、今回は何度か町の宿に泊まりつつの旅になる。
それでも私は自分のグリフィン車で片道のみで済む旅だけど、両親は入学式の後は普通の馬車で行きの数倍の日数をかけて帰らなくてはいけない。
お父様はその分の仕事を前倒ししているせいで忙しく、しばらく顔も見ていなかった。
――下宿先へ行ってしまえば、私もまた当分実家へは帰って来ない。
しばらくぶりにレイフレッドと同じ屋根の下で暮らせるのは嬉しいけど、せっかく改善したルカと離れるのはちょっと複雑な気分にはなる。
「僕も行きたいです!」
「……ついてきても入学式には連れて行ってあげられないわよ?」
何と言ってもまだ五歳。そんな子供を貴族も大勢居るような場所には連れていけないから。
「それでも! 行きたいです!」
「良いんじゃないですか、家族旅行みたいで。行きは私が居るから特に護衛を雇う必要もないし」
「え? 傭兵や冒険者は雇わないの? 賊が出たら……」
「私が処理しますよ。私は黄金級の冒険者ですから、勿論賊退治の経験もありますから」
今回の旅に使う車は、今回の為だけに自作した物だ。今後私やレイフレッド以外を連れて泊まり掛けの旅をするならまた日の目を見ることもあるだろうけど――。
「え、凄いです。いつもの馬車より広いし……何で馬車の中に冷蔵庫がやベッドがあるのですか!」
それは、空間拡張魔法を遠慮なく施した馬車。
車の中にリビングと寝室が詰まっている。
「アンリ……これ……私達、宿に泊まる必要が無いのではないかしら……」
「ええ。夜間の見張りは私の獣魔に任せれば、今予定してるより3日は早く着けますね」
「まあ、今でさえ普通の馬車で行くより早いのに……殆ど半分以下で着いてしまうわ」
でも、お父様には朗報だったようで。
私は最短日数で着けるようルートを選定し、そして。
「では、行きますよ」
「――旦那様、奥さま、坊っちゃま、行ってらっしゃいませ」
使用人が頭を下げる。
……お母様や弟とは関係修復できたけど、使用人との距離感を縮めるまでには至らず。
――お父様ともまだ少しギクシャクしている。
これからこそが本番なのに、ね。
私はため息をつきながら、リルフィの手綱を握ったのだった。
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