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念願の旅路で
虎の威を借りましょう
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皇帝陛下からの勅命を受けた以上、私が選べる選択肢は亡命だけ。
幸い私とレイフレッドだけなら、既に今後の展望もある事だし、どちらの国でも受け入れて貰えると思うけど。
でも、それはあくまで私とレイフレッド個人の話。
いつか懸念していたカーライル家の問題がここでこんな形で、より悪化した状況での現実が実現してしまうとは。
「……お嬢様、私共では手に余る事態です。ここは両陛下にお知恵をお借りするのが良いかと」
うん。いくら冒険者や技術者として有名になっても、政治方面では素人同然の私がどんなに頭を捻った所でバカの考え休むに似たり、だ。
私達は哀れなギルマスに頭を下げ、お詫びで追加納品してからすぐさま両国に連絡を取った。
「――まあそうしたくなる気持ちは分からんでもないがな」
「そうよのぅ。もしそなたらが我が庇護下にあれば、対価の支払いについてはともかくも、是非ともお抱えにしたいと思うは必然よ」
「しかし、これは良い機会ではないか。これまで袖にされてきた件、改めて主張してやろうではないか」
そう言って。
私達に示された納品日を狙って、彼らは同日にそれぞれ親書を送り付けた。
それも高位の外交官を使者に仕立て、事前に私から買い上げた最新の魔道具、テレビ電話を贈り、機械越しながら直に対談出来るようにしてまで。
……あのマルクニアとシュミエルを同時に敵に回せばヒューリアは大変な事になる。
それを知る皇帝は、結果、三食苦虫しか食べさせて貰えなくなったような顔で、お抱えの話の代わりに金銭での報酬と、ヒューリア帝国傘下の国で有効な通行証を貰い、各国にて功績を上げよと命じられた。
うん。結果的に良く纏まったと思う。
両陛下も例の件の交渉の席に着かせる事に成功したと喜んでいたし。
これでようやく、直接的に婚約破棄の実現に着手できるから。
取り敢えず早速各国王都に回転寿司屋を展開した所、大盛況で。
けど、これまでと違って人間の国々には、シレイド国内程でなくともカーライルの名を知る者が居る。
だから、私はルクスドの商業ギルドの狐目ギルマスと相談の上、改めて新しい商会を設立した。名前は勿論疾風の牙。
この瞬間、私はカーライル商会から正式に独立する事になる。
まだ成人前だから、家族としては今もカーライル家の一員として数えられるけれど、カーライル商会という一企業のお嬢様という立場は失くし、代わりに疾風の牙商会の会頭の立場を手に入れた。
……こうなると、流石にお父様にお話ししないといけないね。
今も奴からの金の無心に対応してくれているのはお父様で。
今のところの仮定の未来で奴と結婚しても、もうカーライル家の富は奴の手には渡らない。
でも、ここで奴に焦って無理に婚姻を決められては困るから、当分は必要経費と割り切ってお金は払う。
それをカーライル商会の財布からはもう出せないから、その辺の手続きと交渉は必要だから。
――私は一年半ぶり、予定より半年早い帰省を決めたのだった。
幸い私とレイフレッドだけなら、既に今後の展望もある事だし、どちらの国でも受け入れて貰えると思うけど。
でも、それはあくまで私とレイフレッド個人の話。
いつか懸念していたカーライル家の問題がここでこんな形で、より悪化した状況での現実が実現してしまうとは。
「……お嬢様、私共では手に余る事態です。ここは両陛下にお知恵をお借りするのが良いかと」
うん。いくら冒険者や技術者として有名になっても、政治方面では素人同然の私がどんなに頭を捻った所でバカの考え休むに似たり、だ。
私達は哀れなギルマスに頭を下げ、お詫びで追加納品してからすぐさま両国に連絡を取った。
「――まあそうしたくなる気持ちは分からんでもないがな」
「そうよのぅ。もしそなたらが我が庇護下にあれば、対価の支払いについてはともかくも、是非ともお抱えにしたいと思うは必然よ」
「しかし、これは良い機会ではないか。これまで袖にされてきた件、改めて主張してやろうではないか」
そう言って。
私達に示された納品日を狙って、彼らは同日にそれぞれ親書を送り付けた。
それも高位の外交官を使者に仕立て、事前に私から買い上げた最新の魔道具、テレビ電話を贈り、機械越しながら直に対談出来るようにしてまで。
……あのマルクニアとシュミエルを同時に敵に回せばヒューリアは大変な事になる。
それを知る皇帝は、結果、三食苦虫しか食べさせて貰えなくなったような顔で、お抱えの話の代わりに金銭での報酬と、ヒューリア帝国傘下の国で有効な通行証を貰い、各国にて功績を上げよと命じられた。
うん。結果的に良く纏まったと思う。
両陛下も例の件の交渉の席に着かせる事に成功したと喜んでいたし。
これでようやく、直接的に婚約破棄の実現に着手できるから。
取り敢えず早速各国王都に回転寿司屋を展開した所、大盛況で。
けど、これまでと違って人間の国々には、シレイド国内程でなくともカーライルの名を知る者が居る。
だから、私はルクスドの商業ギルドの狐目ギルマスと相談の上、改めて新しい商会を設立した。名前は勿論疾風の牙。
この瞬間、私はカーライル商会から正式に独立する事になる。
まだ成人前だから、家族としては今もカーライル家の一員として数えられるけれど、カーライル商会という一企業のお嬢様という立場は失くし、代わりに疾風の牙商会の会頭の立場を手に入れた。
……こうなると、流石にお父様にお話ししないといけないね。
今も奴からの金の無心に対応してくれているのはお父様で。
今のところの仮定の未来で奴と結婚しても、もうカーライル家の富は奴の手には渡らない。
でも、ここで奴に焦って無理に婚姻を決められては困るから、当分は必要経費と割り切ってお金は払う。
それをカーライル商会の財布からはもう出せないから、その辺の手続きと交渉は必要だから。
――私は一年半ぶり、予定より半年早い帰省を決めたのだった。
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