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念願の旅路で

決勝戦

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    今日、ここまで六試合を消化し、決勝戦を残して本日の試合は終了した。
    準々決勝の前に昼食休憩を挟んで、今はもう日が沈みかける時間だ。
    観客達は今日の素晴らしい試合の感想で盛上がりながら、それぞれ酒場や家路へと向かう。
    私とレイフレッドも、久し振りにジャンキーな屋台の香りに誘われて、二人でホットドッグにかぶりついた。
    「凄いわね、ソーセージのボリューム感が半端ないわ」
    「ええ、とてもジューシーでスパイスも絶妙で……美味しいです」
    こんな町だけに、屋台で売られるのは肉主体のジャンクフードばかりだ。
    「この肉串も……。肉そのものが嘘みたいに美味しいわ」
    味なんか頓着しませんと言わんばかりの豪快で大ぶりな肉に大して期待せずに口に放り込んでびっくり。柔らかくて脂の旨味がたまらない。塩と胡椒だけで十分美味しい肉にかかるタレがまた美味い。
   「牛、豚、鳥……どれも美味しいわ」
   「後で精肉屋へ行きますか?」
   「ええ、絶対よ」
    流石にタレは企業秘密だと教えて貰えなかったけど、肉については比較的簡単に情報が入った。
    この辺りの集落は作物を作るより酪農や畜産が盛んな地域らしい。
    別に土地が痩せて野菜が作れない訳じゃない。むしろ穀物は大量に栽培されていたのをここに来るまでにさんざん見てきた。
    つまり、肉ばかり求めて野菜をあまり食べない輩が多いから、売れない野菜は家畜の餌にして、美味い肉の生産に尽力した結果らしい。
    私は後で直接生産者に定期購入契約をお願いすると決め、翌日再び貴賓席から試合を観戦した。
    ロウエンとヒダカの戦い。
    空を飛べるヒダカとではヒダカが断然有利だろう。だからこそ前の試合でヒダカとヴァンの試合になったんだろうから。
    ……そう、思ってたんだけどね。
    武器ありきの戦いなら空から飛び道具を使えば良かったんだろうけど、肉弾戦オンリーの試合ではそうもいかない。
    殴るにしろ蹴るにしろ投げ飛ばすにしろ、攻撃するなら相手に触れなければならない以上、空へと逃げ続けては試合が成立せず、試合放棄と見なされヒダカの方が負けになる。
    ヒダカもそうと分かって、相手の攻撃をかわす際や素早く相手の死角を突くのに利用する程度で、昨日の空中戦の様に飛ぶ事はなく。
    そうなるとロウエンのバランスの良い身体能力が物を言い、最初は互角に見えた戦いも、鋼板になるに従い徐々にロウエンがヒダカを圧倒し始めた。
    最後は飛んでよけようとしたヒダカのさらに上へと跳躍したロウエンの飛び膝蹴りがヒダカの背にクリーンヒットし、地面に叩きつけられたヒダカがノックアウトされ、試合はロウエンの勝利で幕を閉じたのだった。
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