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念願の旅路で
スラムの子供たち
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それは、低所得な人々が暮らす貧民街より更に格下の、ほぼ無収入に近いチンピラや孤児が暮らす場所。
税金など払っていない彼らの住居は粗末なテントで、違法な居住な為にいつ強制撤去されても文句なんか言えない。
――シレイドにも貧民街はあったけれど、スラムまではなかった。
やはりこれはカジノの街という特殊な、カネで全てが決まるような場所ゆえなんだろう。
スラムの中でさえ、暴力に訴える腕力のあるチンピラが良い場所に大きなテントを持ち、幼い子供達はより集まって狭いテントで怯えながら暮らしていた。
子供達は薄汚れていて、毛づやも良くない。具合の悪そうな子もいるし、やせっぽちだし。
「それで? ここが目的地? じゃあいい加減聞かせてくれる? 用件は何?」
私は矢継ぎ早に尋ねる。
……この子達を可哀想とは思うけど。
「はん、こんなとこまでのこのこついてきてバカじゃねーの?」
膝が笑うのを叱咤しながらワンコが吠える。
「お前ら、金持ちだろ? 有り金全部置いてけよ!」
「あら、こんなとこでお金を出したら全部チンピラに持ってかれるんじゃない?」
「お前、強いんだろ、さっきあいつら蹴散らしてたじゃねーか!」
「ええ、そうね。だから尚更あなたたちなんか相手にもならないんだけど、どうやって私からお金を脅し取るつもり?」
「俺達は何もしないよ」
……所詮スラムだ、端から端までそう広くないから、こんな風に騒いでいたらあっという間に注目を浴びる。
すると当然――
「おい、てめぇら何騒いでやがる!」
チンピラ達に目をつけられる。
その声を合図にぴゃっと子供達が蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「……成る程、なすりつけですか。チンピラの中に冒険者崩れでも居たんですかね」
「狙いは漁夫の利? ……まさかね。この程度私じゃやり過ぎちゃいそうだし、レイフレッドよろしくね」
「はい、お嬢様。――久しぶりにらしい仕事が出来ますね」
にこっと微笑んだ彼がその場の全員を叩きのめすのに五分もかからなかった。
さて、子供達はどこへ……
「ああ! またあんた達か!」
――ガチャガチャと駆けてきたのは先程石を投げられ悪ガキを追いかけていった兵士の皆さん。
「こいつら、スラムの……。すぐに街を出るっつってたあんたらがこんなとこで何してんのか、ちょーっと詰所でお話聞かせて貰えるかい?」
……あのガキども。
「――はい」
ここで更なる騒ぎを起こしても良いことないだろうと判断し、大人しく従う事にしたけれど。
あのガキんちょ共は本当に何がしたかったんだか……。
税金など払っていない彼らの住居は粗末なテントで、違法な居住な為にいつ強制撤去されても文句なんか言えない。
――シレイドにも貧民街はあったけれど、スラムまではなかった。
やはりこれはカジノの街という特殊な、カネで全てが決まるような場所ゆえなんだろう。
スラムの中でさえ、暴力に訴える腕力のあるチンピラが良い場所に大きなテントを持ち、幼い子供達はより集まって狭いテントで怯えながら暮らしていた。
子供達は薄汚れていて、毛づやも良くない。具合の悪そうな子もいるし、やせっぽちだし。
「それで? ここが目的地? じゃあいい加減聞かせてくれる? 用件は何?」
私は矢継ぎ早に尋ねる。
……この子達を可哀想とは思うけど。
「はん、こんなとこまでのこのこついてきてバカじゃねーの?」
膝が笑うのを叱咤しながらワンコが吠える。
「お前ら、金持ちだろ? 有り金全部置いてけよ!」
「あら、こんなとこでお金を出したら全部チンピラに持ってかれるんじゃない?」
「お前、強いんだろ、さっきあいつら蹴散らしてたじゃねーか!」
「ええ、そうね。だから尚更あなたたちなんか相手にもならないんだけど、どうやって私からお金を脅し取るつもり?」
「俺達は何もしないよ」
……所詮スラムだ、端から端までそう広くないから、こんな風に騒いでいたらあっという間に注目を浴びる。
すると当然――
「おい、てめぇら何騒いでやがる!」
チンピラ達に目をつけられる。
その声を合図にぴゃっと子供達が蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「……成る程、なすりつけですか。チンピラの中に冒険者崩れでも居たんですかね」
「狙いは漁夫の利? ……まさかね。この程度私じゃやり過ぎちゃいそうだし、レイフレッドよろしくね」
「はい、お嬢様。――久しぶりにらしい仕事が出来ますね」
にこっと微笑んだ彼がその場の全員を叩きのめすのに五分もかからなかった。
さて、子供達はどこへ……
「ああ! またあんた達か!」
――ガチャガチャと駆けてきたのは先程石を投げられ悪ガキを追いかけていった兵士の皆さん。
「こいつら、スラムの……。すぐに街を出るっつってたあんたらがこんなとこで何してんのか、ちょーっと詰所でお話聞かせて貰えるかい?」
……あのガキども。
「――はい」
ここで更なる騒ぎを起こしても良いことないだろうと判断し、大人しく従う事にしたけれど。
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