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念願の旅路で

神子

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    「……お嬢様、流石にそれ以上お召し上がりになるとお腹を壊されますよ」
    案の定倒れるように寝入った私が目を覚ましたのはそれから丸二日後だった。
    頭が重いのは果たしてスキルのせいか寝すぎたせいか……。
    けれどそれを忘れるほどに強烈な空腹に、私は先にレイフレッドの用意してくれていた料理に追加で、各街のテイクアウト可能な料理や巡りをレイフレッドに命じ、半日近くひたすら口をもぐもぐする事だけに励み続けた。
    ――レイフレッドがドン引きしたのは言うまでもない。
   「でも、少しだけあれの正体に予測が立ったわ」
    ――あれは、おそらく神子だ。
   「神子、とは?    教会の神官や巫女とは関係なさそうですが」
    「ええ。ヒトが運営する組織に属するものとは関係ないけど、神様との関係は大アリよ。だから全くの無関係でもないわね」
    この世界に神は居ても精霊は居ない。
    妖精族は居るけど、あれも神眼石を持つヒトで、人間とはチワワとドーベルマン程度の違いしかない種族だから、その気になれば子も出来る。
   この世界の魔法は自分の魔力を神眼石を通して放出し、スキルや知識と技術で制御し使うもので、所謂精霊魔法は存在しないとされている。
    けれど、私が認識する精霊と言うものにごく近い存在なら居たらしい。
    それがおそらく彼女。
   「神子とはある意味文字通り神の子だけど、男神と女神との間に産まれた新しい神様じゃなくて、神様が普段無意識に放っている神気がより濃く集い固まった場所から生ずる、力の固まりが薄弱な自我を持った存在――らしいわ」
    比喩でなしに神レベルの力を持つ、しかし新しい神様と違ってそれをコントロールしきれない存在。……決して魔物では無いから安易に退治しようとすれば相応の報いがある。
   「神子……。その名称だけならば確かに聞いたことはあるが――」
    それをエルフ達に伝えると困惑された。
    「しかし、対処法など伝わってはおらぬぞ」
    「……おそらく彼女の力の源となったこの神聖な森から離し別の地に移し封印するのが良いかと」
    「――そうか。ならばそなたには早々に立ち去ってもらおうか」
    「なっ、別に長居するつもりは無いが、陛下の勅命を賜る事となったそもそもの原因はあなた方ではないですか!    その解決に尽力したお嬢様への報酬もなくその対応はあんまりではありませんか!?」
    「報酬だと?    本来他者を受け入れぬ我らの森に数日滞在を許し、我らの叡智までも開いたのだ、十分ではないか!」
    「お嬢様が居なければ未曾有の大災害もありえたのにか?」
    あー、既得権益をもつ爺というのは世界や種族が違っても皆こうなんだろうか?
    まあいい。
   「いいよ。報酬は多分皇帝陛下がくれるでしょ」
    エルフの叡智は確かに希少価値が高いから。……彼らは私がその全てを得たなんて知らないはずだしね。でなければむしろこちらが支払いをしなければならないかもしれないんだし。だから――
    「いいよ、レイフレッド。行こう」
    私達はすぐにその集落を離れ、その晩はルクスドの宿屋で一晩を過ごしたのだった。
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