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念願の旅路で

凍てつく森

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    しつこいようだけど、この世界は乙女ゲームの世界だ。
    故に、乙女ゲームとして外せないイベントの為、この世界にはしっかり四季がある。
    クリスマスもどき、バレンタイン&ホワイトデー、初詣……クリスマスや初詣は教会主催のイベントだけど。
    だから、国によって沖縄と北海道位の気候の違いはあるけど、春夏秋冬はどの国にも訪れる。
    「我が国にも冬には雪も降ります」
    日本の豪雪地帯の様な量は降らないし積もらないけど、一番寒い時期に森が白銀に覆われるそう。
    「しかし、あれはそういうのとは違うのです」
    それは、歌で船乗りを惑わすセイレーンのように天上の歌とも聞こえる素晴らしい歌を歌うのだそうだ。
    けれど、その歌が聞こえた翌日には必ず、この周辺の何処かの森の木々数本が芯から凍てつきその命を枯らして居るのが見つかるのだと。
    「今はまだ、被害はごく一部。……樹木の病が流行った年にはもっと多くの森が死んだと長老方は仰られる。しかし、あれが止まずに続けばいずれはそれすら越え、森に依り生きるエルフも暮らしに困ってしまう」
    そう考え、弓や魔法で退治を試みたらしいけれど。
    「退治はできず、歌により一度に死滅する範囲が増えただけだった」
    だから。あれを何とかしてくれと泣きついてきた、と。
    「あのー、私、人間なんですけど」
    人間より魔族のが魔法の扱いが上手いのは常識で。その魔族の中でも魔法に長けた一族がエルフと言うのもまた常識で。
    私みたいな小娘と、長命のエルフが得意の弓の腕を磨いた兵士と、弓術の腕前を競った結果は明らかで。
    明らかに戦力で挑んでどうにかなる相手とは思えない。
    「――お嬢様、これはお断りするべきでは?」
    「ええ、間にギルドも入らない危険な依頼は受けられません」
    だからこその判断だったんだけど。
    「いいえ、受けていただく。確かにギルドは噛んでいないが、始めに言ったはずだ。これは我らが王が皇帝陛下より伺った話だと」
    そう言って。この集落の長と名乗った壮年の男がテーブルに乗せたのは。
    「――っ、勅命書……!」
    「流石に我らも今日明日にも倒せとは言わぬ。滞在中の寝床と食事は提供しよう」
    長命の狸に小娘が口で勝てるはずもなく。
    「爵位をいただくデメリットですね……。申し訳ありません」
    「爵位を貰わなくても勅命には逆らえないわよ。どちらかと言えばむしろ私のせいだろうし」
    竜、倒したばかりだからね。
    黄金級になっちゃったしね。
    さぁて、どうするかなぁ……。
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