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念願の旅路で

ドラゴン討伐②

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    怒りに鼻息荒く炎を吹くも、口が開かず、牙と牙の隙間からぷすぷすしゅうしゅうと白い煙が噴出する。
    それが、強靭な蜘蛛の糸をジリジリと焦がしていく。
    ――長くは持たない。
    私はすぐに魔法矢を放った。
    それが竜の頭上へ届く瞬間、フロスの糸が切れ、盛大にマグマのような不穏な赤の輝きを宿す火の玉を吐き――ゴウと竜巻がそれを上空へと巻き上げた。
    高熱の炎は風に勢いを増して周囲の空気を熱し、更なる上昇気流を生む。
    それはむくむくと遥か高々度の空へ向かう積乱雲を生み規模を増していく。
    その風圧に翼を煽られバランスを崩した竜はふわりと足が地面から離れ――
    すかさず山頂をつるんつるんの氷で覆ってやる。
    積乱雲がゲリラ豪雨を降らせ、火竜の炎の勢いを僅かに弱め、その体表近くでしゅわしゅわと白くけぶる。
    「リルフィ!」
    私はもう一度力一杯の竜巻で火竜の体を吹き飛ばし、リルフィに直接騎乗しての空中戦に持ち込んだ。
   あそこで暴れられたら、あといくつ有用な坑道が塞がっちゃうか分かんないからね!
    さー、こっからどんどん行くよ!
    ほら、炎を吐こうと大きく開いたお口にね。
    番えた魔法矢を飲み込ませてやるのよ。
    ……火の竜相手に火魔法もないでしょ?
    だから仕込んだ魔法は勿論土魔法だ。
    「ロックショット!」
     拳大の岩を無数に打ち出す魔術で炎を打ち消し、腹に岩を詰められたお伽噺の狼みたく体を重くして飛び難くしてやる。
    咳き込み岩を吐き出そうとする竜の口目掛けてすかさず今度は氷の粒を食らわせる。
    己の炎の熱で溶ける氷が腹の中で水蒸気になって腹を膨らませる。
    そこへ三度目の竜巻をぶつけてやると、今度は明確にふらついた。
    バランスを崩し落ちるその下に、巨大な氷の杭を立てて迎え――

    「……ま、マジか」
    「俺……まだ酔ってんのか?」
    「いや、俺こないだからずっと幻覚と幻聴に悩まされててな?」
     「皆さん、往生際が悪いですよ」
    「ああ、分かってんよ!    賭けはお前さんの大勝だ!」
    「こんな娘っ子がドラゴンスレイヤー……。何かスゲェもん見たな」
    「あの、解体手伝って貰っても?」
    「おうよ!    俺らドワーフ、竜素材を扱えるなんざご褒美だ、一声かければ皆我も我もで集まんぞ」
    腹に大穴開けて串刺しにしちゃったけど、大半の素材は無傷のまま。
    「……でも、あれってさー」
    「ああ、アレが原因か……」
    「卵、あれ絶対火竜のだよな?」
    そこにはとっても見覚えのある、でも色違いの卵が鎮座している。
    人間の赤ん坊一人入るくらいのサイズの卵の迷彩柄の色は赤。
    ……じゃあ、あの卵は――?
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